全日本選手権を振り返る
b0038294_22405075.jpg
フィギュアスケート全日本選手権が終了。男子は織田選手・小塚選手の一騎打ち、女子はショートプログラム(SP)、フリーともに波乱含みの大会になりました。

b0038294_2242259.jpg
女子は浅田真央選手が優勝、2位が村主章枝選手、3位が安藤美姫選手。
男子は織田信成選手が優勝、小塚崇彦選手が2位、3位は無良崇人選手。

全日本選手権 得点詳細
日本スケート連盟の公式サイト内のページです。




男子は2連覇中の高橋大輔選手が怪我で欠場したのは残念でしたが、今年から復帰した織田信成選手と今年急成長の小塚崇彦選手はどちらも今季調子がとてもよく、どちらが勝つかというのがすごく楽しみだった。そこにジュニアで好成績を挙げていた無良崇人選手が今年からシニア参戦ということで、かなり男子も見応えがありました。

b0038294_234783.jpg織田信成選手は本当にジャンプが今年安定しましたね。
元からスケーティングが美しく、スピンも男子の中で屈指の柔軟性とスピードを誇り、ジャンプのランディングの柔らかさは素晴らしかったのですが、いかんせんここぞという時に転倒することが多く高橋大輔選手の後塵を拝してきた。ですが謹慎中にしっかり体を作り、またコーチもニコライ・モロゾフ氏に代えて、かなりレベルアップした感があります。
モロゾフコーチは元アイスダンスの選手だった人だけれど、ジャンプの指導は上手なのかもしれないですね。高橋大輔選手、安藤美姫選手、そして同じく今年から師事した村主章枝選手もですが、彼についた選手はジャンプが安定するような気がします。

織田信成 2008 全日本選手権SP「仮面舞踏会」

ステップの中盤でジャンプするところが印象的で好きです。


b0038294_23205495.jpg小塚崇彦選手は2位。
今季絶好調だっただけに今回の演技はSP、フリーともに満足とはいかなかったかもしれませんが、ジャンプで失敗があっても彼の素晴らしいスケーティングは充分観客を魅了したと思います。「スケーティングの質の良さ」ということについて説明するのは結構難しいけれど、彼の演技を見せれば一発で感覚的に理解できる気がします。基本に忠実な滑りは引き込まれますね。派手さはないけど(むしろ衣装とかは他選手に比べるとかなり地味目)、なんかすごく品がありますね。









小塚崇彦 2008全日本選手権 フリー「Romeo」


彼のフリー「ロミオ」の衣装(写真参照)は海外の新聞で「ナス色」と表現されたり、ユニクロの服に似ているということで「ユニクロミオ」などという名前まで付いてしまっていますが(あくまで愛情をこめて、ですよ)確かに彼にキラッキラの衣装、というのもなんか想像できない気がします。
この衣装をデザインしたのは、振付を担当した佐藤有香さん。「彼の美しいスケーティングが一番引き立つように、敢えて主張の少ないものにした」とのことですが、確かにそういう意味で装飾や鮮やかな色彩に目を奪われることなく(笑)彼のポジションの美しさ、体の自然な動きが良く分かる感じがします。

ユニクロミオCM (Youtubeより)

ファンの方が作った動画ですが、これは名作ですね。細かいところまでかなり凝っています。「地味度100%衣装」というのはウケます(笑)。
映像はスケートアメリカのフリーだと思いますが、彼のイーグルは素晴らしいですね。45度くらい傾いています。美しいですね。


b0038294_23382339.jpg無良崇人選手が3位に食い込みました。シニアデビューの年に素晴らしい成績を残しましたね!
彼はすごく小さい頃の印象しかなかったのですが、今年こんなに大きくなっていて(当たり前ですが)びっくりしました。そして割と色白で華奢、繊細なイメージがあったので、力強く高い3Aを跳ぶのにびっくり。男の子は劇的に成長しますね。
彼も今大会で課題をいろいろと見つけたようですが、繊細な部分も残しながらダイナミックな滑りは成長が凄く楽しみに思います。これからシニアの国際試合での経験をどんどん積んで、スケールの大きい選手になってほしいと思います。




無良崇人 2008膳日本選手権 SP 映画「パッション」より「奇跡の始まり」

すごく緊張したと思いますが、スピードのある素晴らしい演技でした。3-3などのジャンプも綺麗に決っていましたね。



女子はかなり心臓に悪い(笑)大会でした。

b0038294_12425100.jpg浅田真央選手はSPで3-3のコンビネーションがタイミングが合わずミスをしてしまいました。今季3-3は回転不足のダウングレード(DG)を取られて認定が一度もないので、緊張してしまったのかもしれません。彼女は「回りきってるのに認定されない」ということが余りにも多く、ちょっと気の毒ですね。そして前回グランプリファイナルで女子最高得点をたたき出したスパイラルもSPではレベル1の認定でした(フリーはレベル4)。何ででしょうね?姿勢保持の秒数が足りなかったのでしょうか?でもそれだけでいきなりレベル4からレベル1まで落ちてしまうものなのでしょうか?

今季ジャッジはジャンプの回転不足をかなり厳しく取る傾向があり、3回転を着地しても、回転不足認定になると「2回転の回りすぎ」とされて2回転の基礎点から更に減点、という2重に減点されるシステムになっています。
ジャッジは(というか国際スケート連盟は)フィギュアスケートの技術の発展を望んでいないのか、とすら思えてしまうひどいルールです。これでは難しい技に挑戦する人は減ってしまう。
3-3を頑張って跳ぶより、難易度を落として3-2をきれいに跳んだ方が(または3-3が飛べないので3-2を入れるしかないという人の方が)コンビネーションジャンプにおいては点が高くなることになります。
また3回転を飛んでも、着氷に失敗して転んだほうが、回転不足でスムーズな着氷をするよりも点が高くなるのです。こんなのルールとしておかしいとしか思えません。
b0038294_23441187.jpg
キム・ヨナ選手はこのルールをうまく利用しています。勝ちに行く時は3回転の苦手な飛びかた(ループやサルコウなど)を減らしてダブルアクセルをそこに入れてきれいに跳ぶことで高い加点を得ている。
これは美しく見せることだけが目的の「ショー」では正しいかもしれませんが、「スポーツ」として考えた場合どうなんでしょうね。

今号のスポーツ雑誌「Number」で宇都宮直子氏の以下ような主旨の文章が強く印象に残りました。

「(今のフィギュアスケートのルールでは)難易度を下げたほうが結果的に勝ちにつながる場合がある。
しかし、それを「競技」と呼べるだろうか」


全くその通りだと思います。しかも毎年毎年細かいルール改正があり、毎日生活の全てを賭けてスケートに取り組んでいる選手はそれに振り回される。
ルールや判定を決める人は選手が想像を絶する努力の末に試合に出ている、ということを本当に理解しているのか疑問に思うことがあります。


b0038294_054212.jpg浅田選手はフリーで回転不足ながらもトリプルアクセルを2度着氷し、3サルコウは抜けて1回転になってしまいましたが今までの試合で入らなかった終盤の3-3をついに跳ぶ事ができました。この3-3も含めて計3つのジャンプで回転不足を取られ、例年全員に比較的高い点がつく全日本選手権ながら優勝者の得点が180点台という見たことのないものになりました。
ですが演技終了の瞬間、浅田選手は3-3が入ったことがよほど嬉しかったのか今までで一番力強いガッツポーズをしていました。判定や得点はどうあれ、年の終わりに納得のいく演技が出来たことはよかったですね。

演技は全体的にはやはり疲れている感じがしました。
SP前のインタビューで、いつもツルツルの顔に吹き出物ができていたのを見た時、「体調悪いのかな」とちょっと思ったのですが、やはり連戦の疲れは出ているようですね。食事の管理もかなりストイックに行う選手なので不摂生で吹き出物がでるのは考えられないですし。
フリー終了後、「少し体を休めてから四大陸選手権の準備に入る」と言っていました。疲労は怪我の原因にもなりますから、お正月は是非ゆっくりとして欲しいですね。

それでも演技はやはり他選手と比べて「別格」という感じがしました。全日本3連覇おめでとうございます!


浅田真央 2008全日本選手権 フリー「仮面舞踏会」

最後のスピンはバトンキャメルに代えてドーナツスピンを入れてきました。
去年はシットスピンの後にドーナツスピンを持って来ていたので、このシット-ドーナツというポジションチェンジは難易度が高くどうしてもスピードが落ちてしまっていました。
今年は立ったままのポジションチェンジということもありますが、ドーナツスピンが見違えるほど姿勢が美しくなり、スピードも上がりましたね。中野選手のドーナツスピンは本当に素晴らしいですが、彼女に迫る勢いで向上させてきました。ホント勤勉な選手ですね~。

浅田真央 メダリスト・オン・アイス2008 「Por Una Cabeza」

全日本のエキシビジョンを兼ねたアイスショー。
シーズン入って初めて綺麗なトリプルループが入りましたね。アンコールの「仮面舞踏会」の最後のスピンでのドーナツスピンの姿勢の美しさとスピードの速さは中野選手に匹敵するものがありました。



b0038294_029846.jpg2位は村主章枝選手。SP5位からジャンプアップして準優勝を勝ち取りました。

正直、これはかなり驚きました。今季からモロゾフコーチに師事して大分プログラムの印象も変わったしジャンプも安定していたけれど、大変失礼ながら今の採点方式からは少々取り残された感じがしていたので・・・
27歳という彼女の年齢は今の女子において最年長。にもかかわらず今年持ち直してきたことは素晴らしいことですが、3-3のコンビネーション、柔軟性やスピード、体のキレなど、今のトップ選手たちに必須のものが彼女からはあまり見ることができないからです。
彼女は3-3を跳ぶ事はできませんがフリーはノーミスで滑りきりました。前述のルールが今回彼女にはうまくはまったのかもしれません。ですがSP5位からいきなり2位、というほどの演技にも思えなかったので(本当にすみません)、ちょっと腑に落ちないものがありました。
2位を勝ち取ったことで彼女は来年の世界選手権の出場権を得ました。来年のワールドはオリンピックの枠取りに直接影響する、例年以上に非常に重要な大会になります。今季村主選手はかなり調子よさそうだけれど全日本と国際試合のジャッジの点の出方は違うし、大丈夫かな、という不安は正直あります。なんとしても奮起してもらって表彰台に少しでも近づく結果を残して欲しいと思います。

村主章枝 2008全日本選手権 フリー 「秋によせて」



今回フリーの6分間練習で、安藤選手と村主選手がぶつかり転倒するというアクシデントがありました。

全日本選手権 2008 FS 6分間練習


安藤選手はかなり膝を痛そうにしており、裏で順番を待つ間も氷で冷やしたりしていたようです。
その後モロゾフコーチは安藤選手につきっきりになり、その結果村主選手の演技が始まる時にリンク脇に行くことができず、村主選手は結局他の日本人のコーチかマネージャーかの方と会話を交わして試合に臨むことになりました。演技終了後、キス&クライにもモロゾフコーチの姿はありませんでした。
怪我の具合がわからないのでなんともいえませんが、すぐに病院に直行せねばならないほどの状態ではなかったのですから、モロゾフコーチは村主選手の演技から得点発表までの10分~15分の間くらい村主選手のそばにいてあげられなかったのかなあ、と村主選手がちょっと気の毒になりました。
彼女はベテランだし大人なので何も言いませんでしたが、やはり一番緊張する試合直前にコーチに勇気付けてもらうのは、いくらキャリアを積んでも大事な瞬間なはずです。
モロゾフコーチは村主選手がスケートカナダで2位になった時も試合に立ち会っていませんでしたね。どういう契約なのかわかりませんが、ちょっとかわいそう過ぎるように思います。


b0038294_055424.jpg安藤美姫選手は3位。
6分間練習のアクシデントで精神的に動揺がみられましたし、身体的には練習の最後に跳んだサルコウジャンプで転んだことが一番ダメージが大きそうに見えました。しかしリンクに立ち、一度転倒がありましたが最後まで滑りきりました。
終了後のインタビューでは涙を流しておりホッとしたんだろうなとは思いましたが、
あまり自分のダメージや辛い心境などをあらゆる場所で饒舌に語らないほうが
彼女自身のためにも良いような気がします。
フリーの「オルガン」は前の「ジゼル」よりは彼女に合っている気がしますが、やはり音楽と動きがあまりマッチしていないような気がします。今季は「ジゼル」でいくつもりだったのに前のプログラムに戻すわけではなく全く新しい曲を持ってきたのも驚きました。
「オルガン」はいつ頃作られたプログラムなのでしょうか?それとも実は構成は「ジゼル」と同じままなのでしょうか?ちゃんと見比べてないのでわからないのですが、そのあまりのスムーズな転換がちょっと気になっています。

安藤美姫 2008全日本選手権 フリー 交響曲第3番「オルガン」



b0038294_17195696.jpg鈴木明子選手は今回4位。
表彰台は逃しましたが、3位の安藤美姫選手との点差はわずか0.11、ほぼ同率3位というものでした。
NHK杯のときと同じくらいの演技だったら3位に入れたなあーと残念な気もしますが、全日本は特別な雰囲気だし疲れも溜まる時なので、素晴らしい健闘ぶりだと思います。
今季の彼女の演技は喜びに溢れていてしっとりとした女性らしさもあって、本当に惹きつけられますね。ショートもフリーも伸びやかでステキな演技でした。
彼女は四大陸選手権の出場権を獲得。おめでとうございます!今年の四大陸の会場はバンクーバー、オリンピックが行われるリンクで開催されます。是非いい経験をして、オリンピックに向けて頑張って欲しいと思います。



鈴木明子 2008全日本選手権 フリー 「黒い瞳」

彼女は大きな瞳が印象的なので、すごく合っていますね。ステップ前にとってもいい笑顔を見せてくれました。



b0038294_112372.jpg中野友加里選手はSPで自己初となる1位を獲得しましたが、フリーで崩れて5位に終わりました。
これは個人的にはすごく、すごーく残念でした。SPではオーラがあるような美しさがありましたし(彼女は色が白いですねえ)、「無心で滑った」という言葉通り魂のこもった素晴らしいものでした。
SP1位、というのは彼女自身もとてもびっくりしたようですが、実はそれが却って彼女を緊張させてしまったのかもしれませんね。浅田選手も追いかける立場の方がいいと以前どこかで話していたのを聞いたことがありますが、全日本のショートで1位、というのは想像を絶するプレッシャーのようです。

フリーではジャンプに複数ミスがあり、シングルジャンプになってしまいました。世界選手権の出場がかかっていたので本当に残念です。
今季は怪我のおかげで調子があまりよくありませんが、今の日本女子の中で一番演技が安定してるのは彼女だと私は思っているので、オリンピックの枠取りとなる来年の世界選手権では是非彼女に出場して欲しい、そして前回のトリノにあと一歩で出られなかった分バンクーバーは是非出場して欲しいなあと思っているからです。
今回5位となったことで世界選手権も、四大陸選手権の出場選手からも彼女は漏れてしまいました。彼女は国際試合において、今シーズンは終わったことになります。あのジゼルをもう見られないのはとてもとても残念。
彼女には怪我をしっかり治してもらって、是非来季大きく飛躍して欲しい、そしてオリンピックの枠に滑り込んで欲しいと思いますね。

中野友加里 2008全日本選手権 SP 「ロマンス」

今季一番の素晴らしい演技でした。フリーが本当に悔やまれます。


世界選手権出場は
男子:織田信成選手、小塚崇彦選手、無良崇人選手
女子:浅田真央選手、村主章枝選手、安藤美姫選手

四大陸選手権出場は
男子:織田信成選手、小塚崇彦選手、南里康晴選手
女子:浅田真央選手、村主章枝選手、鈴木明子選手

と決まりました。おめでとうございます!
今かつてないほどに男女ともに素晴らしいスケーターが揃っている日本なので、是非最大の3枠をゲットして欲しいと思います。

明日のアイスショー「メダリスト・オン・アイス」で今年は滑り収め。みなさん、お疲れ様でした。
また来年も素晴らしい演技を楽しみにしています。怪我に気をつけて、頑張ってください!

b0038294_123877.jpg

 
by toramomo0926 | 2008-12-27 22:47 | フィギュアスケート


<< スポーツとは「向上」を目指すもの 高橋大輔選手が退院 >>