四大陸選手権-「ベストを出し切る」ことの難しさ
b0038294_14174844.jpgフィギュアスケートの四大陸選手権、連覇を目指した浅田真央選手だったがSPでのジャンプ失敗が響き6位スタートとなった。しかしフリーでは1位を獲得、3位となった。

ISU Four Continents Figure Skating Championships
四大陸選手権の順位、得点の詳細。





「四大陸」とはヨーロッパを除く国と地域のこと。アフリカ、アジア、アメリカ、オセアニアの4つの大陸の選手が出場資格を持っています。なので国際大会ではありますが世界大会ではない、という感じの微妙な(笑)ポジションにある大会です。
Wikipediaによると、「この大会は国際スケート連盟が主催するISUチャンピオンシップスの1つであり、国際スケート連盟のランキング算出用ポイントにおいてはヨーロッパフィギュアスケート選手権と同等の国際大会とされているが、大会の格としては大きく譲る」とあります。
大会表記は「Four Continents Figure Skating Championships」なので、「4CC」と略されることが多い。
以前はフィギュアスケートは圧倒的に欧州勢が強くタイトルを総なめにしており、他国の選手が国際試合でのタイトルが取れないために作られた、という話も聞いたことがありますが、真偽は不明です。

b0038294_1439379.jpg以前は大会のポジション(格)の微妙さと世界選手権直前という開催時期ゆえに、四大陸は(日本では)世界選手権に出場しない2番手、3番手の選手が経験を積む場所、という認識があったのですが、去年くらいから様相が変わってきましたね。
理由はわかりませんが、去年から日本はトップチームを派遣するようになりました。ISUにおける大会の位置づけ=ポイント基準も特に変化があるという話も聞かないし、ひょっとしたら12月のGPFから3月の世界選手権まで間があいてしまうので、試合勘を取り戻すとか、調整含みの試合として出場する方針に変わったのかも知れません。
特に今年の会場は来シーズンに迫ったオリンピックの会場となるリンクで行われるということで他国の選手も五輪候補が集まり、かなり盛り上がりました。



b0038294_15104796.jpg浅田選手のSP順位を聞いてびっくりしました。6位とは。
でもコンビネーションとルッツ、2つもジャンプを失敗してしまったのではどうしようもないですね。
それでも今季の厳格(時に不公平)な回転不足認定の中SP、フリーともにコンビネーションのセカンドジャンプをループにし続ける根性はすごいです。
タチアナ・タラソワコーチはトウループにする練習をするように彼女に伝えたそうですが、世界選手権ではどうなるでしょうか。

*説明すると、コンビネーションジャンプでセカンドジャンプを「トウループ」にした場合、セカンドジャンプを跳ぶ時にもう一方の足で氷を蹴って踏み切ることができるが、セカンドジャンプを「ループ」にする場合、最初の3回転を跳んで着地したその足で再び跳びあがる必要があるため難易度が高く、体力も必要とされます。現在コンビネーションでセカンドジャンプに3回転ループを入れられるのは、女子では浅田真央選手と安藤美姫選手、レイチェル・フラット選手(アメリカ)のみ。

回転不足判定を防いで点を取るためには難易度を落としたトウループの方が普通はやりやすいかもしれないけれど、真央選手はループの方が感覚的には跳びやすいらしいですね。
また、その時の調子に合わせて、というのではなく完全に技の難易度を落とすというのを彼女が自分に許せるかどうか、という問題もあります。
それにしても(ここで何度も書いていますが)このように選手に「退化」を強いる今年改定されたルールというのは本当に悪法としか言いようがないです。

b0038294_15452981.jpgフリーも全体的にスピードやキレが全くなくハラハラさせられました。
今回のリンクの広さが通常の試合リンクと比べて幅が4m狭かったことが気になってスピードが出せないのかと思っていましたが、実際は1月に膝を痛めて練習がしっかりできていなかったということです。彼女自身はそのことには全く触れず、関係者の話で明らかになりました。
今回、試合終了後とはいえこんなに早く怪我の情報が漏れたのは異例で、彼女にとっては本意でないことだったと思います。
通常彼女は怪我してもそれ明かすことはなく、むしろ隠し通します。昨年3月の世界選手権直前の怪我も公表されず、明かされたのはシーズンが終了後かなり経った後でした。
彼女は今日の報道によると怪我を否定していましたが、そういう理由で信用はできませんね(笑)。多分これ以上怪我を取りざたされたくないんじゃないか、というのが私の読みです。
真相はどうあれ、調子が上向くことを願っています。あまりネガティブなことをシーズン中に話したくないようなので、マスコミはそっとしておいて欲しい。

フリーの演技を見ていて、最初のトリプルアクセル(3A)が1回転半になったとき「ああ・・」と思ったのですが、2度目のアクセルできっちり3Aを決めてきたのは素晴らしいと思いました。コンビネーションこそなりませんでしたが、調子が悪くても心は強く持てている、と感じられた瞬間でした。
トウループにちょっとミスがありましたが、後半のコンビネーションも3-2にしたとはいえしっかり入りましたし、怪我を(しているのなら)きちんと治して、世界選手権にピークを持ってきて欲しいと思います。

Mao Asada 2009 4CC FS


b0038294_16593341.jpg優勝したキム・ヨナ選手は、今回SPとフリーで、ジャンプのダウングレードとエッジエラー(『!』のアテンション判定止まりだけど)を取られましたね。フリップの不正エッジはこの私でも肉眼で「ん?」と思えるほど悪化している中でのアテンション(減点なし)というのは腑に落ちませんが、グランプリシリーズではお目こぼし三昧だったので、まだいい方ということでしょうか。
でも、アテンションがついてるのに加点されるって、すごいパラドキシカルな気がするのは私だけでしょうか・・・
「あなたのジャンプはエッジが不正です。減点まではしませんが、気をつけてください。でも余計に点をあげます」ってすごい自己矛盾です。
しかも「!」判定で加点されているのは彼女だけです。他選手は全員アテンション認定されれば多少の差はあれども減点されています。
どうにも彼女の点数のつけられ方は別ルールの存在を感じるというか、不可解です。

ヨナ選手は大体において他選手より加点・減点ともに甘くつけられているように思いますが、特に毎年グランプリシリーズでの加点が突出している気がしますね。それもちょっとおかしいなあと思うところです。ですが今回のSPは素晴らしい出来だったと思います。ただ、72点はちょっと高すぎだけど・・・
ヨナ選手に限っては、点数や順位で語るのにはちょっと抵抗がある私です。素晴らしい選手ですが、点数とのバランスは真っ当とは思えない感じなので。

彼女は点数的に過大に評価されすぎることによって、却ってスケーターとしての正当な評価がされにくいというのはある意味ちょっと気の毒にも思えます。
しかし彼女の勝ちに行く演技構成の作戦(技の難易度をジュニアの頃と同じに下げて、出来栄えでの加点を狙う)を考えると、彼女が欲しいのはスケーターとしての向上や達成感ではなく、優勝などの「名誉、ステイタス」なんだと自分では認識しているので、彼女的には納得しているのかな、と思ったりします。


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ジョアニー・ロシェット選手が2位。
彼女はSP、フリーともに2位で安定した実力を見せました。彼女の磐石ぶりは結構気になっています。今年の世界選手権、来シーズンのオリンピックで日本勢にはかなり手ごわい相手になりそうです。特に五輪は彼女のホームですしね。
だいたい最近の女子シングルは浅田選手、キム選手、ロシェット選手、そしてコストナー選手で表彰台を競い合う感じになってきていますが、順位がどうなるのか、世界選手権が楽しみです。


b0038294_17332435.jpg浅田選手は最近のインタビューでは常に「自分のベストを出し切る」ことを目標と語りますが、その難しさを今大会では考えさせられました。
彼女が毎回判を押したように「自分のベストを出しきれるようにしたい」と同じコメントを繰り返す姿はともすれば機械的に見えることもあるのでしょうが、自分で口にすることによってメンタルトレーニング的な自己暗示をかけているようにも見えるし、言葉にすると簡単な「試合でベストを尽くす」ということがいかに難しいかを私達に教えてくれているようでもあります。

SPの失敗について「体と心が同じ状態でないと難しい」と彼女は述べていましたが、ずっと練習していても、そして練習でうまくいっていても、本番で出来なければ何の意味もなくなってしまう。それがスポーツの残酷さでもあるけれど、だからこそ自分のベストを出しきったときの喜びも大きいのでしょうね。

それにしても、彼女は3Aを認定レベルにまでしっかり上げてきていますね。欧州選手権で男子も3Aをことごとく失敗しているのを目の当たりにしたので、そのすごさが改めて身にしみた大会でもありました。

選手の皆様、お疲れ様でした。3月の世界選手権もリンクがアイスホッケー仕様らしくそこはちょっと不満ですが(笑)選手の皆さんがそれぞれ納得できる演技で、採点も公平に(笑)行われる素晴らしい大会になるように期待したいと思います。


Mao Asada 4CC EX



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by toramomo0926 | 2009-02-11 14:31 | フィギュアスケート


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