キムヨナ選手の「妨害」発言について
b0038294_15202510.jpg韓国のキムヨナ選手が韓国SBSのインタビューで、先月の四大陸選手権の公式練習において「ジャンプを跳ぼうとする度に邪魔が入った。いつも日本選手だった」などと述べたことに対しての波紋が広がっている。





この発言は韓国国内で大きく取り上げられたことから早速Youtubeなどの動画サイトにも載り、騒ぎは日本や他国へも広がっているようだ。
日本スケート連盟は当初キム選手サイドやISU(国際スケート連盟)からオフィシャルな抗議や警告等が今までになかったため静観する構えだったが、日本のファンより「選手を守れ」「抗議すべき」との多数の声が寄せられたのを受け、韓国スケート連盟に経緯調査やキム選手本人への事情聴取などを求める文書を送ることを決め、20日に韓国に届けられた。
日本連盟は「日本選手が意図的に妨害行為をした事実はない」としており、同様趣旨の声明を日本連盟のホームページに掲載。ISUへの経緯報告も決定したということで、「日本選手の名誉にかかわる」と毅然とした対応をすることに決めた。

この報道を聞いた時正直びっくりしました。キム選手、そんなに調子が悪いんでしょうか?
このインタビューがいつ行われたものかは知りませんが、四大陸からはもう一ヶ月近くも経過している&世界選手権が2週間後に迫っている(最初の報道は3月16日頃、世界選手権は3月25日から)中でこのような発言をするというのは、日本での報道にあるように「日本選手への牽制」とも取れます。私には、焦りの裏返しで攻撃的な面が出てしまったようにも見えました。
それに本当に日本選手の「妨害」に迷惑しているのならそれこそISUや日本のスケ連に抗議するべきで、韓国内のテレビ局にだけ話すというのも妙な話です。
また、SBSの報道の仕方も映像編集に大きな間違いや、(意図的かどうかは不明ですが、結果的に)印象操作につながる映像も見受けられました。単に取材した記者がルールやマナーを知らなかったからかもしれませんが、報道するのならきちんとするべきで、誤報ともいえるものでした。

フィギュアスケートの試合や公式練習におけるマナーについて少し説明すると、
公式練習の際は複数の選手(5~6名?)が同じ時間にリンクを共有し、その間リンクにいる全選手の使用曲が順番に流されます。それぞれお互いの選手の合間を縫ってジャンプやステップ、スピンなどの要素の練習をしますが、流れている曲を使用している選手にその時のリンクの優先権があり、他選手はその選手の邪魔をしてはいけないのが暗黙のルールでありマナーです。音楽がかかっている選手が他選手に接近してきた場合も、他選手の方に回避義務(とまではいいませんが、他選手の方が避けるべき、という慣習)があります。

要するに割り振られた練習時間の中で通し稽古ができるのは、その曲が流れている1度だけということになります。あとの時間は要素ごとに練習したり、氷の感触を確かめたり(場所によって氷の硬さ等が微妙に違うらしい)をやっていくことになる。なのでみなさん「お互い様」の精神でやっているわけです。

しかし今回韓国の報道で「妨害」とされている映像を見ると、流れているのは安藤美姫選手や中野友加里の選手の使用曲でした。ということはその時のリンクの優先権は安藤選手や中野選手にあるわけで、もしこれを「妨害」とするなら、妨害者は他ならぬキム選手自身ということになります。

報道の様子

上記のルール(マナー)を理解したうえでご覧頂ければ、どちらが「妨害」しているかは一目瞭然と思います。しかし韓国内では全く逆に報道されてしまっています。

浅田選手についてはキム選手に近い場所にいる映像も同時に流されていましたが、モザイク処理されていました。が、暗に誰を指しているかはすぐわかる状態でした。

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何より、四大陸選手権には安藤選手も中野選手も出場していません。四大陸の出場者は浅田選手、村主選手、鈴木選手です。このように全く違う試合の映像を持ち出し、また「曲がけ」の時のルールも認識しないまま(知っていたとすれば更に罪深いが)キム選手が嫌がらせされているかのような印象を与える映像をつなげ、韓国中に流したということになります。
まさに日本選手の名誉にかかわる誤報であり、日本スケ連も抗議がなければ動かないつもりだったというのも怠慢ですね。先日のグランプリファイナルのリンクが狭いことについて事前調査が不足していたこともあるし、これだけフィギュアブームで興行的にも隆盛している競技でありながら余りに対応がお粗末過ぎるように思います。


また、「妨害」はありえるか、という話でいうと、私はそうは思いません。私は関係者や経験者ではありませんが、リスクを考えると割に合いません。
公式練習はジャッジも各選手の要素の確認のためにチェックしているので、選手は練習とはいえジャッジへのアピールにも気を遣うことになります。選手にとって絶対的な存在であるジャッジの目が光っている中で、限られた自分の練習時間を犠牲にして、また自分が怪我をするリスクを負ってまで、わざと相手の邪魔をしようとしたりする選手が存在するでしょうか?

確かに練習中に選手同士がぶつかってしまうことはあります。昨年末の全日本選手権でも安藤選手と村主選手が6分間練習で衝突するアクシデントがありました。ですがこれを意図的に、かつ相手にのみダメージを与えて自分が無傷でいることは不可能に近い。以前あったアメリカのトーニャ・ハーディング選手がナンシー・ケリガン選手に怪我を負わせた事件ですらリンクでは行わず、オフアイスで人を雇い彼女を襲わせるというものでした。
ものすごいスピードで、ものすごく切れる刃のついた重たいスケート靴を履いて、薄いレオタード1枚で滑っている選手が「妨害」なんてことを考えるでしょうか?それぞれ選手は試合直前は、自分の調子をできるだけ上げることだけで精一杯なのではないでしょうか?

更に、大体公式練習や6分間練習の際は選手は全員ほぼ同じ方向に滑ります。しかしキム選手のみ逆走することが多いのです。
これは高速道路を逆走するのを想像頂ければわかると思いますが、かなり危険だと思います。滑走方向について決まりがあるわけではないと思いますが、何故全員同じ方向に滑るのかといえばやはり危険防止のためでしょう。彼女自身が衝突のリスクを高めているように思えます。
キャリアは長いのですからどのように動けば危険かということは彼女自身よく分かっているはずだと思うのですが。

彼女の他選手に逆らって動く様子を指摘した動画もありました。



多分彼女は練習がうまくいっていないか、体調があまりよくない等で苛立ち、弱気になっているのかもしれません。彼女は結構大きな試合前になると体調不良(去年までは腰の故障)をアピールしたり、先日のグランプリファイナルで2位になった時も「実は風邪を引いていた」とか言ってましたけど、今回のように原因を他に求めたのは初めてです。
恐らく世界選手権で負けたときのエクスキューズの為に今回の話を持ち出したのではないでしょうか。もし優勝すれば「逆境に打ち勝った」と賞賛され、優勝を逃しても「日本選手に邪魔されて練習が思うようにできなかった」と話せば、韓国国民は彼女に同情し、慰めてくれるでしょう。彼女の国内でのステイタスやプライドは傷つくことなく、たとえ順位を落としても実力について疑問を持たれることもないはずです。

また彼女は国内のインタビューで話したことが国外に知れることはないと高をくくっていたようにも見えます。
ここまで大きく取りざたされ、日本から公式に抗議を受けることになるとは思ってもいなかったのではないかと想像します。

今季の中国大会でジャンプのエッジエラーを取られた時、ジャッジに(何故か)安藤選手の映像を持ち出して抗議していた彼女について「もっと競技と他選手に敬意を」というコラムを書きましたが、彼女のスケートに対する姿勢には疑問を持たざるを得ません。
恐らく彼女はアスリートとして、フィギュアスケーターとして頂点を極めたいという意識よりも、「××大会優勝」的なステイタスを望んでいるのでしょう。以前からそうなのではないかと思っていましたが今回のことで私の中で確信しました。
多分彼女は本当の意味でアスリートではない。本当に欲しいのは名誉や多分金銭的なもので、フィギュアスケートはその「手段」に過ぎないのでしょう。
だからこそジュニアから全く変わらない構成を続けて技術的な向上を望まず、オリンピックまでまだ1年もあるのに苦手のループを捨てるという発言ができる。また、このように平気で同じ競技に臨む選手に対して敬意のない発言ができるのではないでしょうか。
今回の件が大騒ぎになると「日本選手とは言っていない」などと韓国側がフォローに入っているようですが(となると他国の選手にもイチャモンをつけていることになる訳で、更に問題を大きくしそうな気もします)、しっかり映像や音声が残っています。日本スケ連には一歩も譲ることなく、SBSとキム選手から謝罪を引き出して欲しいと思います。


キム選手も国内の大きな期待が寄せられているプレッシャーは勿論あるでしょうが、それは優勝して当然、銀メダルでも「まさか」「不調」と書かれまくる浅田選手も同じことです。どんな場合であれ、どんなにすばらしい演技ができても言い訳じみたことを言う選手は誰からも尊敬されません。
世界トップクラスの選手なのですから、発言には責任を持って欲しい。世界で戦う以上、自分の発言に対する影響について、またリンク使用のルールやマナーについて、キム選手や韓国のメディア、そして韓国のスケートファンには学んで欲しいと切に願います。それが出来ないのなら、国際大会に出る資格はないと思います。

今回は結構激しい内容になってしまいました。でもこれは「まあまあ」と日本的に水に流して良い問題ではないと感じたので正直に書きました。
今回日本としてきちんとオフィシャルに抗議等の厳しい対応を取らなければ、恐らく彼女は必要な時にまた同じようなことを口にするだろうと思われるからです。
そして単にダシに使われるというだけでなく、日本選手の現在の素晴らしい成績がそのような卑怯な手段で得たものだという印象を世界に与えてはならないと考えるからです。それは選手個人の人格を誹謗するのとなんら変わりない、暴力に等しい行為だと私は思います。

キム選手が自身の不調や試合で勝利できなかった時にその原因を体調不良のためと公言するのは本人の自由ですが、彼女の自尊心を守るために他の選手(日本人に限らず)の名誉がどのような形でも貶められるということには我慢ができません。
体調不良だって管理不足=結局自分の責任と考えるので、一流のアスリートはあまり自分の怪我や体調の悪さについて語りたがらない場合が殆どですが。


キム選手には、ネットでみつけたこの言葉を贈りたい。
「人は自分の心を映す鏡」
「キム選手はいろんな意味で、浅田真央選手に負けた。」

キム選手は今回改めて私達に教えてくれたように思います。
スポーツは勝てばいいわけではなく、競技を通してフェアプレイの精神や、その人自身の人格も問われるものだということを。

ちなみに、今日(3月23日)世界選手権が行われるロスへの出発前、浅田選手が空港でインタビューに応じ、
今回の騒動については下記の通りコメントしていました。
(以下、Yahoo!スポーツ 3月23日20時33分配信 産経新聞より)

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金ヨナが日本選手に妨害されたとの韓国の報道については、「このジャンプをしないと、とかで頭がいっぱいになる。自分のことで必死」と練習中の配慮の難しさを説明。ただ、故意にほかの選手の邪魔をしたことはないと断言し、
「人がジャンプしようとしているときはよけている。それはみんな、ちゃんと分かっている」と話した。
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ジョアニー・ロシェット選手のコメント
「わざとそんなことをする選手はいません。(練習時は)全員が自分自身に集中しており、その集中は激しく高まっていきます。
リンクには同時に6人の選手がいて、ジャンプ、スピン、フットワークなどのウォームアップの為の時間は6分しかありません。皆で場所(リンク)をシェアする必要があるのです。誰一人として1分でも場所を独占することはできません。やりたいことをすべてやるには持ち時間は多くありません。
時にそれぞれが集中しすぎて衝突が起きることはあります。しかしそれは決して意図的なものではありません。もちろんそれは腹立たしいことですが、それも試合の一部なのです。」

*自分で訳したので、ニュアンス等が違っていたらお許し下さい。念のため下に原文を載せておきます。

原文:
"No one does it on purpose. Everyone is very focused on themselves. It gets very intense. There are six of you on the ice and we only have six minutes to warm up all of our jumps, spins and footwork. You have to share the ice. You each can’t warm-up for one minute. It’s not very long to get everything you want done. Sometimes we are so focused on what we are doing, that sometimes such incidents happen. But it’s never deliberate. Of course, that is frustrating. But it’s part of the competition."


***追伸***

なかにし礼さんありがとう!


<関連リンク>
日本スケート連盟 フィギュアスケートに関する一部報道について
*今回の件を受けての公式声明。


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by toramomo0926 | 2009-03-23 15:16 | フィギュアスケート


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