2009世界選手権(男子シングル)
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アメリカ・ロサンゼルスで行われているフィギュアスケート2009年世界選手権の男子シングルが終了。優勝は地元出身のエヴァン・ライサチェク。ここ数年怪我や不調に苦しんできた彼がついに世界王者になりました。おめでとうございます!
2位は18歳ながらもトータルパッケージに質の高い演技をするカナダのパトリック・チャン、
3位は一昨年の世界王者フランスのブライアン・ジュベール。
日本勢も小塚崇彦選手が6位、織田信成選手が7位、初出場の無良崇人選手が15位。
来年のオリンピックの出場選手枠のかかった大事な大会でしたが、見事日本男子は初の3枠を獲得しました。

ISU World Figure Skating Championships 2009
2009年世界選手権の順位、得点の詳細。
「Men」の行の「Results」をクリックすると順位が、右端の「Judges Scores(PDF)」をクリックするとショートプログラム(SP)、フリー(LP)それぞれの得点詳細がわかります。




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エヴァン・ライサチェク選手(以下ライサ)は悲願の世界王者の座につきました。全米選手権の時はどうも元気がない感じでしたが、今大会は神がかっていましたね。SPから体がキレキレで、本人も会心の演技だったようです。

*動画の再生ボタンを押した後、枠の右下に「HQ」という文字が出る場合は高画質で見ることが可能です。「HQ」をクリックしてください。

Evan LYSACEK 09 world SP

ライサはシットスピンのポジションが深くて、足も氷と平行にまっすぐ伸びていて美しいですね。男子は体が硬いせいもあってなかなかシットのポジションがきれいな選手がいませんが(女子なら確実に点がもらえないレベル)、彼と小塚崇彦選手のシットスピンは本当にキレイです。
観客の歓声もいいところで入ってきて、いい感じに盛り上がっています。アメリカの観客はどんなスポーツやエンターテインメントでもリアクションがすばらしいですね。自然に場内が一体化するような盛り上がりをする。
「観る」ということについてすごく高い文化を持っているように思います。

フリーは4回転を回避したものの全ての要素を伸びやかにスピードを保って滑りきり、圧巻でした。フリーでは全ての要素において、9人いるジャッジが誰も減点をつけていませんでした。0点はあってもマイナスをつけたジャッジはゼロ。これはすごいですね。

2009 World Evan Lysacek FS

スピードもジャンプもスピンも素晴らしいものでした。特に全米選手権とはスピードと体のキレが比べ物にならないくらい上がっていました。スピードがないとライサの良さは出ないと私は思っているので、そういう意味でもよかったと思います。彼の長身が思い切りリンクを駆け回り、のびのびと演技していました。

最後のスピンの直前、充実感というか一種恍惚としたような、感極まったような表情を見せたのが印象的でした。その後スピンしながらガッツポーズ(笑)あんなことできるんですね~。

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本当に自分でも会心の演技だったのでしょう。シットスピンをしながら足から手を離してガッツポーズするという、冷静に見るとかなりすごいことをやっています(笑)。

フィギュアスケートで一番権威のある(オリンピックは別ですが)世界選手権という大きなプレッシャーのかかる大会で、自分でも最高と思える演技ができるというのはどんなに素晴らしいことかと思います。彼の心境を思っただけでちょっとウルッときてしまうほどでした。
特に彼はここ数年怪我等で思ったような成績が残せておらず、今季から練習方法を変えたりしていろいろと試行錯誤していたようです。また、彼の今までの選手生活を調べると、すごく健康そうなのに実は病気をしたりして結構苦労していたようなので、今回の彼の勝利は本当に嬉しかったです。おめでとうございます!

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優勝が決まった瞬間の表情。


b0038294_2239895.jpg2位はカナダの18歳、パトリック・チャン選手。
目がくりっとしてて、ちょっとびっくり人形みたいな(すみません)顔がかわいい彼。昨年くらいから急激に名前が売れましたね。彼はジャンプ、スピン、ステップ、スケーティングと全ての面で本当に高いスキルを持っています。男子の若手はうまい選手が増えてきましたね。そして彼は安定感もあります。

彼の滑りはジャンプが失敗しても、スピンやステップは毎回すばらしいなあと思わせるものがありますが、今回特にステップが素晴らしいと感じました。
今回の世界選手権に向けて、フリーの振付を担当したローリー・ニコルとステップをレベル4を取れる内容に変えて臨んだとインタビューで話していました。私はエッジワークなどの細かい要素は分かりませんが、特に上半身の動きが伸びやかになり、体全体を思い切り使っていたのが印象に残りました。
ジャンプが2つ乱れてしまったのが残念でしたが、以前の試合でことごとく失敗してしまっていたトリプルアクセル(3A)もきれいに成功し、彼にとって初めての世界選手権の表彰台を獲得。
優勝すれば男子では史上最年少になるはずだったようなのですが、銀メダルは堂々の成績です。来年は確実に優勝を狙えると思います。

2009 World Patrick Chan FS



b0038294_22545635.jpgフランスのブライアン・ジュベール選手は3位。
SPでは1位だった彼。去年あと一歩で逃した世界王者の座を、今年は何としても取りたいという気持ちで臨んでいたはずです。今年の彼の世界選手権への気持ちは強かったと思います。グランプリファイナルをSPを終えた段階で腰を痛めると、迷わず棄権したのも世界選手権にベストを持っていきたいという気持ちがあったからだと思います。

彼は種類の違う4回転ジャンプを確実に入れられる唯一の選手ですが、去年は余裕で勝利できると見て4回転を1回にし、4回転を跳ばなかったジェフリー・バトルに優勝をさらわれた。
なので今年は絶対跳んでくるのかな、と思ったのですが最初の4T(4回転トウループ)をキレイにきめた後、次の4S(サルコウ)を3A-3Tにしました。これはちょっと意外でした。直前にライサがものすごいパフォーマンスを見せていたので、無理をしない選択をしたのでしょうか。
途中3Aでお手つきはあったもののほぼミスなくまとめ、これはどうなるかな・・・と思っていたら、なんと最後の2Aで転倒、リンクに腹ばいになってしまうというショッキングな出来事が。


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まさかダブルアクセルで転倒するとは。彼もショックだったと思います。解説の荒川静香さんは「勝利を確信したときの一瞬の気の緩みでは」と推測していましたが、それほど点差があったわけではない。何があったのかはわかりませんが(彼にもわからないかもしれません)、昨年の浅田選手の3A大転倒も今までにこんな転倒の仕方はないというものでしたし、これがスポーツの怖さですね。

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演技が終了してからもショックから立ち直れず、ずっとこんな風に頭を抱え、何があったのかをずっと考え続けているように見えました。彼にとっても思いがけず足元をすくわれたような思いだったのでしょう。

ここ1年ほどは若手も台頭してきているし、彼の演技に以前のような絶対的な迫力というのが失われつつあるように感じられるのが少しさびしいところ。来年のオリンピックや世界選手権でもう一度世界一に返り咲けるのか正念場ですね。まだまだ見ていたい選手なので、頑張って欲しいと思います。

2009 World Brian Joubert FS


チェコのトマシュ・ヴェルネル選手が4位に入りました。
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彼の演技は私結構好きです。ジャンプもきれいだし、エキシビジョンなどで見せるコミカルなサービス精神たっぷりな滑りも魅力です。
彼は昨年の世界選手権で大きな失敗をし、それ以来調子を崩していたようです。欧州選手権でも全く元気がなく心配していましたが、今回ベストではないにせよかなり復調した姿を見られて本当に嬉しかったです。
フリーは前半は完璧。後半は少しジャンプに乱れがありましたが、調子が上向いてきているようで嬉しい限り。彼はジャンプが決まると演技全体に締まりが出て、ものすごく見応えのあるプログラムになるのがいいですね。

2009 World Tomas Verner FS

来年、もっと元気になった彼を見るのを楽しみに待ちたいと思います。アイスショーで来日してくれないかな~。


b0038294_23202036.jpg欧州選手権銀メダルのサミュエル・コンテスティ選手が5位入賞です!

私は彼を欧州選手権で初めて見たのですが、今季のフリーは本当に面白いですね。
また、欧州のときよりも更に「芝居」が充実(笑)表情も豊かに、振付も更にコミカルに「カウボーイ」をアピールするものになっていました。
フリーなのにEX(エキシビジョン)みたいな内容にお客さんも大喜び、ノリノリで手拍子や歓声を送り、大盛り上がりでした。

彼はもともとフランス国籍だったのですが、イタリア人の奥様と結婚、今季はイタリア代表として出場していました。結婚や生活拠点の変化が理由と思っていましたが、トリノ五輪の選手選考でフランスのスケート連盟とモメたのが原因だったようです。結構大変だったんですね。
でも今年はその苦労や努力が報われ、世界中のフィギュアファンに名前を売りました。実力も充分なので、今年自信をつけた彼は来年のオリンピックの台風の目になるかもしれませんね。

2009 World Samuel Contesti FS

このプログラム大好きです。是非EXのプログラムとしてこれからもやり続けて欲しい!


ここで日本選手が登場。小塚崇彦選手が昨年の8位から2つ順位を上げ、6位に食い込みました。
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正直、彼は表彰台争いにもう少しかかわれるかなと思ったのですが、SPが思ったより点が伸びませんでしたね。確かにジャンプが少し不安定な気がしたので仕方ないかもしれませんが・・・
それでも彼は北米・カナダで人気が急激に上がっており、声援も多かったようです。今季のスケートアメリカでの優勝がかなりインパクトがあったのかもしれません。あの時も素晴らしい演技でしたものね。
また、彼の品の良い質の高いスケーティングが目の肥えた(本当に目が肥えていると思う)アメリカの観客にウケたようです。今季のSP「Take5」はかっこいいですものね。

2009 world Takahiko KOZUKA sp

キス&クライ(演技後得点を待つ場所)での表情を見ると昨年よりも頬がこけて精悍になりましたね。「顔つきが変わった」とTVでも言われていましたが、20歳になったということと、今季これまでの試合全て表彰台乗り
(1度優勝)を果たしたことで世界トップスケーターの一員という自信が付いたのかもしれません。佐藤信夫コーチの癒し系っぷりもいいですね。指導は厳しいらしいですが、選手達への愛情が感じられます。


2009 World Takahiko Kozuka FS

「ユニクロミオ」といわれた彼のナス色衣装もこれで見納め。五輪3枠を重要視し、今季一度も成功していない4回転を回避し2Aに変えてきました。
このプログラムもジュリエットに恋するロミオの初々しさが彼自身の魅力と重なってすごく好きでした。最後のイーグルがすごい見せ場なのだけどちょっと時間が少ないのが残念。彼のイーグルは45度くらい傾くので見応えがありますね。


織田信成選手は7位でした。
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今大会のリンクは四大陸と同様少し通常の国際試合のリンクよりもサイズが小さかったこともあるのか、SPでスピードを出しすぎてジャンプした際に壁にぶつかるというアクシデントがあり、順位を上げられませんでした。

2009 world Nobunari ODA sp

コンビネーションジャンプでミスしたのは痛かった・・・他が素晴らしかっただけに惜しいですね~。
彼の柔軟性とものすごく伸びるスケーティング、ジャンプの着地の軽さは男子の中でも群を抜いています。ぶつかってもすぐに立ち上がり、痛かったと思うんですがケロッとして演じたのは立派でした。

また、フリーでは4回転-3回転のコンビネーションジャンプをきれいに成功!!これは素晴らしかったです。
ただ、これで舞い上がってしまったのかまたもジャンプのカウントを間違え、ザヤック・ルール(ひとつのプログラムに入れられるジャンプの回数、また同じ種類のジャンプを複数跳ぶ場合の回数等の制限についてのルール。この制限より多く跳んでしまうと最後のジャンプの得点がゼロになる)にひっかかり、せっかく成功させた3F-2T-2Loの連続ジャンプが無得点になってしまいました。

Nobunari Oda 2009 World FS

彼がいわゆる「ザヤった」のはもう3~4回目です。一度はこれでトリノ五輪出場を逃しています。かなり痛い失敗のはずです。さすがにこれだけ繰り返すとちょっと残念、というより「いい加減にしろ」と言いたくなりました(笑)。特に今回はオリンピックの3枠がかかっているのでかなりヤキモキしました。
しかし演技自体は4回転抜きにしても今季一番だったのではないでしょうか。それだけに、こういうことで点を失うのは痛すぎる。もったいないんですよ!!!!オリンピックではこれは許されません。彼はこれについてもう一度真剣に考え直す必要があると思います。


初出場の無良崇人選手は15位でした。
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SPでもフリーでも、持ち味の3Aをきちんと決められたのはよかったですね。
ただ、フリーでは3F(フリップ)にe判定(不正エッジ)がついて減点がありました。また、PCSと呼ばれるスケーティングスキルや技と技のつなぎ、音楽との調和などの得点が6点台や5点台が多い。そこが順位を上げられなかった理由かもしれません。
ですが初出場ですし、小塚選手も昨年世界選手権を経験してからの伸びというのはすごかったですから、来年ちょうどオリンピックの年に彼の才能が花開くかもしれませんね。
彼のダイナミックな3Aはすごく世界にアピールできるものだと思いますし、これからが本当に楽しみです。

昨年に続き今年も、4回転を飛ばなかった選手が王者になりましたね・・・オリンピックはいったいどうなるんでしょうね?
でもあと1年あるので、皆さん4回転の精度を上げてくると思います。オリンピックこそ4回転を飛べるかどうかがキーポイントになるような気もしまが、どうなるでしょうか?

いよいよ女子もはじまりますね。もう胃が痛くなりそうですけど(笑)日本選手、頑張ってくれるといいですね!
男子のみなさま、1年本当にお疲れ様でした。


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by toramomo0926 | 2009-03-27 22:31 | フィギュアスケート


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