「月の光」になった浅田真央選手-ISU国別対抗戦 SP
b0038294_14252144.jpg今年より始まったフィギュアスケートの国別対抗戦(ISU World Team Trophy)において、浅田真央選手がショートプログラム(SP)で自己最高点となる75.84点を獲得し女子シングル首位に立った。

ISU 2009 World Team Trophy
国際スケート連盟公式ページの今大会SP得点の詳細。

今回彼女は苦手意識のあったジャンプ構成を大幅に変更、SPでのトリプルアクセルとダブルトウループ(3A-2T)のコンビネーションジャンプを成功させました。
ISU公式試合のシニア女子SPでの3Aを含むコンビネーションジャンプの認定は史上初の快挙。ジュニアで初めて成功させているのも浅田選手です。
また未確認情報ではありますが、これも女子で史上初めて、サーキュラーステップシークエンス(円形に移動しながら踏むステップ)でのレベル4(最高難度認定)を獲得したとのことです。
*4/18追記: 確認しました。サーキュラーステップでレベル4を獲得しています。詳細は上記ISU公式サイトのリンクをご覧ください。
また、浅田選手は全ての要素で全てプラスの得点(減点なし)という素晴らしい成績でした。


Mao Asada 2009 ISU World Team Trophy SP

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*3Aを決めた瞬間、アメリカチームが笑顔で拍手しているのが見えるのがいいですね。
エヴァン・ライサチェク選手などは浅田選手の演技終了後、キス・アンド・クライ(得点発表を待つ場所)まで降りてきて彼女にハグしています。これがアスリート、スポーツマンシップというものです。見ていて気持ちがいいですね。
また、演技終了後に日本チームのメンバーやモロゾフコーチまでが満面の笑みでスタンディングオベーションをしている姿も新鮮です(笑)。




4位に終わった世界選手権後初めての公式戦となる今大会は、
フィギュアスケートでは類を見ない「国別団体戦で、シングル・ペア・アイスダンスの総合点で争う」という新しいスタイルの試合です。
時期的に世界選手権終了後で、オフシーズンのお祭り的な色合いがまだ濃い大会ではありますが、
ISUは将来五輪正式種目にすることも視野に入れているということで、あまりおそろかにはできない感じですね。
さらに見る側としては、「その年のISU主催試合で獲得したポイント合計で上位6カ国のみに出場資格がある」というハードルもあり、選手のレベルも高いので見てて楽しいですね。
また、普段殆どオンエアのないペアやアイスダンスの楽しさも、シングルしか見ない方々にも伝わったのではないかと思います。

b0038294_1533271.jpg今回私が何より嬉しかったのは、演技中の浅田選手に笑顔が出ていたことと、ジャンプを不安なく跳べたことによって、彼女の身体的表現の素晴らしさが遺憾なく日本と世界のファン、出場しているスケーター、さらにジャッジにまでアピールできたのではないかということです。
今回の飛びぬけた得点の高さ、評価でもマイナスはなく全てプラス評価だった(とインタビュアーが話していました)ということがジャッジの心を動かしたということを表していると思います。

私はここ数年の浅田選手の身体的表現の向上とその素晴らしさに感嘆しているのですが、
世間一般的に(特に日本。欧米では評価が高いのですが・・・)それがあまり評価されておらず、わかりやすい「表情での演技」のみが「表現力」ともてはやされることについて、ずっと歯がゆさを感じていました。
今回の浅田選手の月の光になりきったような完璧な演技は、そんな中でもかなりアピールできたのではないかと思います。むしろ3A成功よりも私はそれを喜んでいます(笑)。
明日のフリーもこの調子で、浅田選手が満足して終われるような演技になってくれればと思っています。


浅田真央選手は今大会、今後のSPでのジャンプ構成において新しい道が拓け、来季以降への明るい材料ができたということだけでもかなりの収穫だったと思います。
今季3Aの基礎点が上がったことと、彼女の3Aの精度がかなり高まっているということで、1~2年前にはリスクが大きかった「ショートで3A」という大技を決断できるように、また確実に決められるようになったことは素晴らしい進歩です。

彼女はルッツジャンプの修正は出来ているものの本人の心理的不安は大きかったようで(昨年あれだけ減点されればね、とは思いますが)、ルッツを跳ぶより3Aの方が気がラク、という常人には理解しがたい理由から今回の大幅な変更に踏み切ったようです。

今までは
・3フリップー3ループ(3F-3Lo:今季は回転不足認定が厳しく、セカンドジャンプのループが認定されたのは1回のみ)
・3ルッツ(3Lz:今季エッジエラーを取られたのは世界選手権の1度だけだが、本人の精神的負担が大きかった)
・2アクセル(2A:規定でダブルアクセルは必ず入れなければならない)

の構成でしたが、今回は

・3A-2トウループ(3A-2T:SPは規定で3-3または3-2のコンビネーションジャンプが必須のため、2Tをつけた)
・3フリップ(3F:高得点かつ彼女の得意とするジャンプ)
・2A

としてきた。

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新構成は基礎点的には3-3を入れるより1.5点くらい低くなるらしいですが、セカンドループの回転不足を取られるリスクが高く(そうすると3-2の基礎点から更に出来栄えで減点されるので旨みが少ない)、逆に3Aや3Fは彼女にとっては加点を狙えるジャンプであり、そもそも3A自体基礎点が他のジャンプに比べて飛びぬけて高い。

結局基礎点にプラスマイナスされるGOE(出来栄え評価)を含めれば今回の方が高得点を得られる計算になり、実際昨日のSPでは、今までの自己ベストを6・34点も更新しました。
またジャンプの構成が彼女にとっても得意なジャンプばかりなので(彼女は2Aなら目をつぶっても跳べるような気がする)、精神的負担もかなり軽減されたようです。
この変更はタラソワコーチの進言らしいですが、これは本当に功を奏したというか、今年の課題を一気に打ち破るほどの強力なアイデアだと思います。素晴らしいです。

今回のインタビューで、彼女は「今まで苦手な要素のことで頭が一杯になっていたが、今日はワクワクした気持ちで出来た」と話していました。
彼女は女子で3-3のセカンドジャンプをループにすることができる数少ない選手です。それを得意としていると回転不足認定が厳しくなり、ルッツで加点を稼いでいればエッジ判定が厳格化された。他のスポーツ同様日本選手を狙い撃ちするかのような1年ごとの細かいルール変更に苦しみながらも、やっと打開策が出てきたことが嬉しかったですね。

b0038294_15304697.jpgですが今回の試合を受けて、ISUが今オフに「SPでの3A禁止」とか言い出さなきゃいいんですけどね・・・。まさかとは思いますが。
でも去年のオフに「1つのプログラムでアクセル以外の5種類のジャンプを跳んだ選手にボーナス案」という、サルコウを苦手&得点が低いためにプログラムにいれておらず、アクセルを得意している浅田選手を狙い撃ちと評判になったルールがまかり通ろうとしたくらいですから。
しかも、その噂が出たために彼女がオフに行われた「ジャパンスーパーチャレンジ」という試合でサルコウに挑戦、きれいに成功させた途端にこのルール案は立ち消えになった、という経緯もあります。注意深く見守っていきたいですね。
というか、今季の4CCでのリンク問題キム・ヨナ選手の舌禍事件の時みたいに日本スケート連盟が暢気にしてるんじゃないかと、そっちも心配です・・・。
これだけ選手は頑張っていて、実際結果も出している。興行的にも日本選手とそのファンは日本スケ連にもISUにも莫大な貢献をしているのですから、もっと緻密に、強く選手を守る姿勢を望みます。


最後は小難しい技術的な話ばかりになってしまいましたが、
今日がアイスダンスと男子のフリー、明日に女子シングルとペアがあるようですね。これも楽しみです。




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by toramomo0926 | 2009-04-17 14:13 | フィギュアスケート


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