ショートプログラムの選択:「仮面」か「カプリース」か
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フランス杯の結果を受け、浅田真央選手がショートプログラム(SP)の使用プログラムを変更する可能性が出てきたと今日(10/21)の新聞が報じている。現在の「仮面舞踏会」に代わる新たな候補となっているのは、オフシーズンのアイスショーや、先日終わったフランス杯のエキシビジョン(EX)で好評を博したパガニーニ作曲の「カプリース」である。




当初、今季のSPの使用曲は昨シーズンのフリープログラムで強烈な印象を残した「仮面舞踏会」を引き続き使うと発表があり、フランス杯で初披露されました。
ただ、前日の練習等が報道された時に「あれっ?」と思ったのは、曲のアレンジが昨年と同じだったから。

昨年のフリーではストーリーそのままに夫に毒殺される悲劇の若妻ニーナを演じたが、今回はニーナが初めて舞踏会デビューを果たした時の高揚感を表現するということで、演奏も昨年の重厚なオーケストラアレンジではなく、フルートをフューチャーした軽やかなものになるという話を聞いていました。現に彼女達のプログラム使用曲を集めたCDである「浅田舞・真央 スケーティングミュージック2009-2010」では、フルートバージョンが収録されていました。

Mao Asada -2009 Eric Bompard SP-Waltz Masquerade Flute Ver.

フランス杯のSPの映像に、フルートバージョンの音を合わせたもの。


ただ、私としては、フルートバージョンを初めてCDで聴いたとき、ちょっと「うーん」でした。
「初めて舞踏会にやってきた時の高揚感、華やかさを出す」と言っていましたが、フルートではちょっと響きが寂しい感じで、でも伴奏は重厚なところもあって、去年との差が出しにくい。
また振付も想像していた以上に去年と同じ部分が多かったので、演技内容は要素の難易度や表現を客観的に測るとはいえ、去年の「仮面」の大ファンの私も、ちょっと新鮮味・アピール力に欠けるというか、要素についてはレベルの高さは折り紙つきだけど、音楽と振付が殆ど同じということで印象が薄くならないといいなと思っていました。

Mao Asada 2009 World Team Trophy-Waltz Masquerade

今年4月の国別対抗戦での演技。今年のSPと同じ振付が随所にあります。


同じ曲を2年使うならもっと思い切って曲調をガラッと変えてスローなテンポにするとか、(よくわかりませんが、例えば)ハープみたいな全く違う繊細な音で構成するとか(タラソワではそれはないかな・・・)、はっきり「差」を出したほうがよかったんじゃないかなあ、とか考えたりしていました。
でも、聞いているうちに「フルートバージョンも悪くないかな」と思い始めていたところに公式練習で音源が去年のものに戻っていたので、えええー???結局どっち?という感じで戸惑っていました。
SPが軽やかに楽しげな振付で(笑顔が出れば最高)、フリーが「鐘」、EXが躍動感ある「カプリース」ならば、真央選手の素晴らしさがトータルで表現できるな、と考えていたので、SPの音源が去年と同じだったのはいろんな意味で驚きでした。


「カプリース」については、夏に行われたアイスショー「2009 The ICE」で一足早く初披露されていましたが、最初から魅了されました。

Mao Asada THE ICE 2009 EX - Caprice



解説の佐野稔さんが話していたようにEXにしてはかなり凝ったプログラムで、「扇子を持たなければ試合でもいける」というコメント通りの内容の濃い、素晴らしいものでした。
また最後まで体に躍動感があり笑顔も満開で、ものすごい体力つけてきたな、身体能力を上げてきているな、というのが素人目にもありありと分かりました。
彼女が更にスケーターとして成長しているという驚きと、これこそ浅田真央!という元気な姿を見ることができて嬉しかった。実際、フランス杯のEXでも好評だったみたいですね。

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そもそもカプリースはSPに使用することも想定して作られたプログラムだということなので、扇子を持たないので手の振付を多少変えてジャンプ構成等を調整すれば、SPで使うことは充分可能でしょう。

ただ、このまま「仮面」でいくべきなのか、「カプリース」に変えたほうがいいのか、ということについては、いまだに自分の中では迷いがあるというか(私が迷っても仕方ないのですが)、自分の意見を決めかねているところがあります。
しかし、SP、フリーという違いはあれど、やはり2年連続同じ曲を使用するというのは私個人的には、素人考えながらあまり良い戦略とは思っていなかったことと、カプリースは真央選手の持つ明るさと、鍛え上げられたしなやかな肉体を遺憾なくアピールできるという意味でEXではもったいないと思えるほど素晴らしいプログラムだと思っていたので、基本的にはカプリースへの変更には賛成です。
この変更が真央選手に余計な精神的負担や動揺を与えなければOKと思っています。
「鐘」という曲の選択ひとつとっても真央選手は本当にものすごい決断をしたなあと尊敬しつつも、真央選手のスケーターとしての実力は世界トップだと確信しているからこそ、選曲をはじめ戦略面で間違いをして欲しくない、というのが正直な気持ちです。


「鐘」を聞いてしまうと、当時あれほど重厚だと思った「仮面舞踏会」ですらも軽やかに思えてしまうものがありますが、去年その「仮面」がお目見えした時も「重厚で浅田には合わない。曲を変えるべき」などと言われていたのに(試合を重ねて評価を真逆にひっくり返し、名実ともに名プロに昇華させたのは凄いと思う)、今年の「鐘」は更に荘厳さもプラスされて重厚さ2倍増しという曲なので、「仮面」と「鐘」でロシア+ロシアとくるよりも、SPをイタリアのパガニーニにすることで、更に「鐘」のよい意味で圧倒的な雰囲気を際立たせられるとは思います。

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ですが、1回試合をしてみて手ごたえやお客さんの反応など、自分の実感として変える必要性を感じての変更ならよいのですが、最初に真央選手自身が判断して決めたものを、たった1試合の結果だけで周りからやいのやいの言われ、それに押される形での変更だったらやめてほしいと思うんですよね。

ただ一方で、裏返しの危惧もあります。
タラソワだってプロなんだし、真央陣営も死ぬほど今年のことは考えてきているはずなので、プロが集まって考え抜いた末の結論は尊重したいけれど、あまりに「芸術」を追い求めすぎると、いくら真央陣営が「これはとても芸術性が高いものです」とアピールしたとしても、ジャッジや観客が取り残される可能性もある。
五輪は「盛り上がったモン勝ち、雰囲気を作れたものが有利」的なところもなきにしもあらずなので、カプリースの方がフリーとのコントラストが強烈になり、違った表情をより際立たせられる=表現力アピールにつながる可能性はあります。


どちらの曲に決まったとしても、真央選手は素晴らしい演技を私たちに見せてくれるでしょう。
私が唯一願っているのは、真央選手が周囲の雑音や訳の分からない採点の結果などに惑わされることなく、どちらの曲を使うことになるにしろ、また今後の試合運びがどのようなものになろうとも、自分の決断を信じて、コーチやスタッフや、世界中で応援している沢山のファンを信じて、前を向いて歩いていってほしいということ。

ロシア杯(Cup of Russia)はもうすぐ。連戦は大変ですが、頑張ってほしい。

Mao Asada Gala TEB 2009

フランス杯(Trophee Eric Bompard)のEX(Galaとも言います)。
ちょっとThe ICEの時と振りを変えていますね。ジャンプも2Aが2回。やっぱりジャンプの調子が悪かったのかなとも思いますが、それを補ってありあまる躍動感!
ステップはThe ICEの時とアングルが違うので、更に動きのキレのよさがわかります。SPで見るのが楽しみです。


<関連コラム>
浅田真央選手のプログラム使用曲について 2009年8月23日

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by toramomo0926 | 2009-10-21 20:26 | フィギュアスケート


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