NHK杯!-男子フリー
b0038294_1018291.jpgNHK杯が終了しました。
男子はただ一人4回転をショートプログラム(SP)、フリーともに成功させたブライアン・ジュベール選手(フランス)が優勝。2位はジョニー・ウィアー選手(アメリカ)、3位にチェコの新星、ミカル・ブレジナ選手(19歳!)がフリーで2位となり総合3位に飛び込みました。
高橋大輔選手は4位、小塚崇彦選手は7位となりました。


ISU Grand Prix 2009 NHK Trophy
順位と得点詳細。
それぞれの種目の「Result」で総合順位と総合得点が、ショートプログラム(SP)とフリーの「Entries/Result Details」では得点詳細が、
「Judges Scores」では各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。

2009 NHK杯フィギュア
NHKの公式サイト。内容充実してます。選手インタビューや期間限定の試合の動画が見られます。




フィギュアスケート男子シングルの流れとして「トップグループに入るには4回転は必須」と言われながらも、回転不足認定や転倒のリスクが高いため、ここ2年ほどは4回転を回避した選手が世界選手権で優勝していました。
今までは「4回転をプログラムに入れられることがトップスケーターの証」というムードはありつつも、確実に試合で成功させられるだけの正確性を持って4回転を跳べる男子は少なく、ハイリスクハイリターンのギャンブル性は否めませんでした。一番安定して4回転を入れられるブライアン・ジュベールさえも、最近は一時ほどの勢いはない。
そこで敢えて4回転を回避し、減点をなるべく防いでプログラム全体の完成度を上げ、技の出来栄え(GOE)の加点を増やすことが順位を上げるには現実的、というムードが男子にもあったのは事実です。世界選手権などのビッグゲームにおいては、「4回転を入れるか、入れないか」というギリギリの選択が優勝を決める重要な決断となっていたのです。
しかし今年、「皇帝」エフゲニー・プルシェンコ選手がトリノ五輪以来の現役復帰をし、復帰初戦となったロシア杯であっさりと、かつ鮮やかに4回転を決めまくった(エキシビジョンでまで跳んでた)ことは、今年の男子の戦況に大きな影響を与えたと思います。

友人は「プルシェンコショック」と命名していましたが、彼が文句のつけようのない4回転を跳んでブランクを感じさせず軽々と優勝してみせたことで、「勝つために4回転回避」に傾いていた流れが再び「やはり4回転を跳ばないとヤバい」という方向にぐっと引き戻された感があります。
今までの「跳ぶか回避か」の逡巡は4回転の安定性が全員かなり少なかったから起こっていたもので、プルシェンコのように普通にバンバン跳ぶような選手が出てきてしまえばこの微妙なパワーバランスは崩壊します。
4回転は男子でも最高難度のジャンプなので、基礎点は勿論ずっと高い。それを1つの演技で複数決めたり、4回転-3回転のコンビネーションジャンプなどを安定して決める選手が出てくれば、「やるかやらないか」で悩んでいる場合ではなくなります。跳ばなければ勝負にならなくなる。
今までの男子のジャンプ事情の停滞しかけた流れを、トリノ以来3年間競技を離れていた彼が圧倒的な力で破壊したのです。男子の生ぬるい状況に喝を入れたともいえるこの流れを私は歓迎します。やはり選手達には守りには入って欲しくない。各選手が限界に挑戦した上でのガチンコ勝負が見たいんです。スポーツですもの。


今回トップ選手は全員4回転に挑戦しました。成功させたのはジュベール選手だけでしたが、それでいいんだと思います。練習だけでなく、試合で跳ぶ経験を積まなければ跳べるものも跳べなくなりますよね。


優勝はブライアン・ジュベール選手。彼は最初に4回転トウループ(4T)をきれいに決めました。
彼のプログラムは最大3回4回転を入れることが可能らしいのですが、今回は「勝つために」1回しか入れませんでした。普通は4回転をいれるかどうか、という戦略を考えますが、彼の場合「4回転を何回入れるか」という選択になるわけですね。プルシェンコ選手との4回転対決が五輪で見られそうなので、楽しみです。

Brian Joubert 2009 NHK Trophy LP-Ancient Land

私は彼の演技スタイルは必ずしも好きではないのだけれど、これでもかと押してくるパワフルな滑りは彼ならではの個性ですよね。衣装はやっぱり・・・・・・な感じだったけど(笑)
そして「Judges Scores」を見ると、彼のフリップには全て立派な「e」(エッジエラー)の文字が(笑)
最近は選手もエッジエラー矯正が進み、判定も「e」よりも緩い注意喚起となる「!」で済む選手が多くなってきていると思いますが、彼は「オレのフリップはルッツだ」発言から信念を曲げず(笑)矯正は全くしてなさそうですね(笑)。
フランス杯が4位という意外な結果だったので、優勝できてホッとしているでしょうね。おめでとうございます!


ジョニー・ウィアー選手が2位。完全復活ですね!

Johnny Weir 2009 NHK Trophy LP-City of Angels/Nocturne from "The Lady Caliph"

彼はここ2年くらい、ちょっと今後のキャリアがどうなるか(レベルアップするか、後退するか)危ういところだなと個人的には感じていたのですが、しっかり一段踏み出したという感じがします。
そして今季のエキシビジョンのプログラムは「これこそジョニーの真骨頂!」という感じですごく好きです。


ミカル・ブレジナ選手は3位に入る快挙でした!

Michal Brezina 2009 NHK Trophy LP-An American in Paris

彼の演技は初めて見たと思いますが、軽やかですね!
ジャンプの高さと幅にびっくり。特にトリプルアクセル(3A)は鮮やかでした。演技終了後ガッツポーズをしていたので、彼自身会心の演技だったんでしょうね。
彼は4回転を跳べるのかは分かりませんが今回は跳ばなかったので、周りが4回転に挑戦し、失敗して減点される中、そういう意味で今回得をして上位に上がった、ということはあったと思います。全ての要素で減点がなかったのは彼だけでした。

表現的にはまだサラッとしていて、彼自身の個性というのはまだ表に出てきていないけど、これからですよね。
とにかくジャンプの高さ、軸のまっすぐさ、そして幅の大きさは素晴らしいですね。今回の表彰台で自信をつけたら、かなり伸びてくるかもしれません。
顔立ちも王子様っぽいので、人気が出るかも?


高橋大輔選手はあと一歩で表彰台を逃しました。

Daisuke Takahashi 2009 NHK Trophy LP-La Strada

「緊張した。4回転(ジャンプ)以外は調子がよかったので、二つのジャンプでこけたことが悔しい。1年のブランクを埋めるのは簡単ではなかった」と話していたそうです。リハビリ等のために滑り込みが足りておらず体力がまだ充分戻ってないようでジャンプのミスが重なりましたが、それでもステップは魅せられました。ジャッジにも観客にも既に充分アピールできています。
彼が腕を動かしただけでその周りの空気も動くというか、体を動かすことで雰囲気を作ったり変えたりすることができるのは素晴らしい。
また前回のフィンランディア杯よりも更に動きがよくなっていましたね。彼は昨季1年試合に出ていないためグランプリシリーズはこのNHK杯しか出ることができないので、最初からファイナル出場は考えておらず、全日本一本に絞ってきているはずです。これから来月までじっくり体を作って練習を重ねて、ジャンプが全て決まったら、この「道」は涙モノの名プログラムになるという確信があります。
もう既に、五輪では最後のストレートステップで号泣する自分が想像できています(笑)彼自身も冷静に今の状況を考えられているようですし、全日本を楽しみに待ちたいと思います。


SP2位のジェレミー・アボット選手は3度の転倒などミスが続き、5位になりました。

Jeremy Abbott 2009 NHK Trophy LP-Symphony No. 3

最初にジャンプでミスをしてから、集中力が途切れてしまった感じなのが非常にもったいないです。SPはあんなに素晴らしかったのに!!ああいう演技が出来る人なのにー!!という感じでした。転倒の減点3は痛い。
でも回転不足認定は最初の4Tだけでした。PCSも割と高め。スピンとステップが1つずつレベル2になってしまったのも大きかったと思います。うーん残念!


小塚崇彦選手は残念でした・・・フリーの順位はまさかの10位、総合で7位に後退です。

Takahiko Kozuka 2009 NHK Trophy LP-Guitar Concerto

転倒してしまいましたが、4回転に挑戦してきたのはよかったと思います。3Aが抜けてしまったのは残念でしたね。ステップは丁寧に滑れていたと思いますが、点が伸びませんでしたね。3Aが一つシングルになり、全部で4つのジャンプで回転不足を取られてしまいました。
去年ファイナル銀メダリストの彼ですが、今年は出場への道はほぼ断たれてしまいましたね。残念です・・・。
「今までにないほど調子は良かったが、気持ちをコントロールできなかった。緊張で体力も奪われた」とのこと。この経験を次の全日本に生かして、是非五輪出場を果たしてほしいと思います。

バンクーバーの出場枠争いは、今年は男女ともにファイナルよりも全日本に集中しそうな気がします。うーん、やきもきしますね。


女子も誰が勝つか分からないものすごく拮抗した戦いとなりました。女子については次に書きます。


<関連コラム>
世界フィギュア男子-4回転至上主義の流れが変わるかも 2008年3月23日
by toramomo0926 | 2009-11-07 19:05 | フィギュアスケート


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