エキシビジョンの意味-浅田真央とキムヨナの違い
すごい動画を見つけました。
今季の浅田真央選手とキムヨナ選手のエキシビジョン(EX)ナンバーを画面2分割で同時再生したものなのですが、キム選手の演技時間が真央選手よりずっと短いのです。
この動画は2人が同時に演技を終えるようになっているのですが、真央選手が2回目のジャンプを跳んだ頃にキム選手はやっと動き出すくらい。真央選手が演技を始めたとき、キム選手はリンクの上にすらいません。


EX 両者比較(音楽:カプリース)

音楽の長さも当然違うので、この動画では真央選手の「カプリース」を流しています。
ちなみにキム選手の使用曲は「Don't Stop the Music」。
演技終了時、真央選手のほうが運動量はずっと多いと思われるのですが、息が切れてないように見えるのはすごい。
また、真央選手はスパイラルの時、足を持とうとした手が外れるというアクシデントがありましたが、手の補助なしでも足のポジションの高さは変わりませんでした。すごい筋力ですね。




「カプリース」はやはりこうやって見るとものすごいプログラムですね。一瞬も目が離せないくらい見どころが沢山あります。表情も華やかだし、最後まで躍動感やスピードが落ちない。彼女は本当にここ1年でものすごい体力をつけたと思います。間延びするところが全くないし、足元だけ見ていても多彩な動きが楽しめます。真央選手が楽しそうに滑っているこのプログラムがどれだけぎっしりといろんなものを私たちに見せてくれているかということもよくわかります。

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一方キム選手の演技は、残念ながら今季世界女王の演技としてはあまりにシンプルに思えます。
彼女のEXは毎年あまり印象に残るものがないのですが、それにしても今回時間もかなり短いですよね。「カプリース」がSP(2分50秒)として使用することも想定して作られたということなので、約2分ということになるのでしょうか。

キム選手のEXの演技については、常々不思議に思っていました。
去年のSP「死の舞踏」などを見ていても、視線ひとつで、一瞬で場の空気を変える力がある。「雰囲気作りうまいなあ」と感じさせるものがあるので、彼女のEXはどれだけすごいものが見られるかと思うと、これは私の個人的な印象ですが、実際は割と淡白なものが多い気がします。
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去年のSP、「死の舞踏」。演技冒頭、視線をぐるっと動かすところは印象的でした。

勿論EXですから時間や演技内容についての制約はないので、演技時間が短くても、要素が少なくてもいいとは思います。ですが今季のキム選手のEXは体をセクシーに波打たせてはいますが、ステップもスパイラルもないのです。スケーティング自体にもあまり工夫や見どころがないように見え、上半身、特に腕を動かしていることしか印象に残らずあまり見栄えがしないというか、全体的にメリハリがありません。彼女が氷の上にいてくれさえすればいい、という彼女のファン以外にはあまり面白みのあるものではないように思います。
フィギュアならではの動きが入ってないと、ものすごく淡泊で退屈なものになってしまいます。振付けに曲との調和もあまり感じられない。今季世界女王としては、「さすが」と唸らせるものを出してきてほしかったな、と思います。

まあオリンピックイヤーなので試合用プログラムに力を注ぎたかったのかもしれませんが、EXはEXの役割がある。得点にはならないEXをないがしろにせず、むしろ凝ったものを作ってくる選手が多いのは理由がある、と私は思っています。

それは、試合では堅くなりがちなスケーター達もEXでは伸び伸びと滑れる、制約なしに自分のアピールポイントを見せられる。規定がある試合用プログラムとは違い、EXはそのスケーターの本当の実力、引き出しの多さをファンにアピールできる、スケーターにとっては非常に大事な場だからです。それが通常より注目が多く集まるオリンピックのEXで演技できるプログラムならなおさらのことです。
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あとは自分も楽しみたいのでしょうが、何より「お客さんやファンを楽しませたい」という気概でしょうね。技術的にか、または小道具などを使ったりしてエンタテインメントの面か、はたまた両面でという選手もいるでしょうが、アプローチ方法はそれぞれ違うにしろ、根底にはフィギュアスケートの魅力を知ってもらいたい、見た人に楽しんでもらいたいという気持ちが強いからこそ、EXはずっと力を入れられてきたのでしょう。トップスケーターほどそういう意識は高いように思うし、また見る側からもそのような演技を求められるものだと思います。

まあ試合で上位に上がれなければEXにも出られませんので、それがキム選手の方針ならば彼女を責めることはできませんが、うーん、フィギュアファンとしては、というか私個人的には残念、と思わざるを得ません。
まあ、真央選手のプログラムが逆にEXとは思えない充実振りなので、比べてしまうと気の毒ということもありますが・・・。
でもEXでスパイラルもステップも入れない選手なんて最近いたでしょうか?私の記憶力はあまりアテになりませんが、すぐには思いつきません。

ちなみに、キム選手の使用曲「Don't Stop the Music」は、今年サーシャ・コーエン選手もショーなどで使用していました。今後もしかして、どこかの試合でEXで曲がかぶる、ということもあるかもしれません。

サーシャのとキム選手のとを見比べてみると、どちらもダンス要素が強いのは同じです。ですがサーシャの方が音楽に乗れている。キム選手は音楽に乗っているようでノリ切れてないように(私には)見えます。
それはなぜかを自分なりに考えてみたのですが、サーシャは上半身と下半身が連動して全身で動いているのに対し、キム選手は上半身(特に腕)だけで踊っている感じだからですね、きっと。
また、その腕もあまり指先までしなやかに動くというよりは、腕の力は基本的に抜けた状態で動かしているように見えるので、手足の長さに助けられてはいますが美しいかといえば・・・という感じに見えます。

更に言えば、音楽はずっと同じリズムを刻む躍動感のある曲調なのですが、キム選手は演技途中で結構動きを止めてポーズを取ったりする事が多くそこで流れが止まってしまうのと、足元が「ただ滑っている」部分が多く感じられること、それからやはりスパイラル等メリハリとなるものがないので、全体的にサラーっと終わってしまう、というのがあるように思います。


サーシャ・コーエン選手バージョン

今年のアイスショー、SOI(Stars On Ice)の演技。

キムヨナ選手バージョン

今年のスケートアメリカのEXでの演技。


おまけで・・・
浅田真央選手のロシア杯でのEX。

上半身もさることながら、足元もすごい凝ったプログラムです。

こうやって比べてみると、結構いろいろとはっきり見えるものがありますね。

いよいよ今日からスケートカナダ、グランプリシリーズ最終戦です。日本からは高橋大輔選手と鈴木明子選手が出場。
SPは既に結果が出ているようですね。鈴木明子選手総合4位以上でファイナルに出場できるとのことなので、頑張ってください!
そして高橋大輔選手には、贅沢を言えばここで優勝を狙ってほしい。でも五輪が一番大事なので、無理はせずに、今のベストを尽くしてほしいですね。
by toramomo0926 | 2009-11-21 11:30 | フィギュアスケート


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