代理戦争反対-ニコライ・モロゾフ氏の発言に思う
b0038294_18381688.jpg今日、安藤美姫選手や織田信成選手のコーチ兼振付師をしているニコライ・モロゾフ氏が、他の日本人選手陣営について批判と言っていいコメントをしたことが報じられました。俎上に上がったのは安藤選手とメダルを争うことが予想される浅田真央選手陣営や、一昨年まで自分の教え子だった高橋大輔選手陣営など。
私は浅田真央選手のファンだけれど、それを抜きにしても彼のコメントを読んですごく残念に思いました。
男女ともに教え子が五輪内定して有頂天なのかもしれないし、酔っ払ってるのかもしれないけど(笑)ちょっと品のない発言だし、大人気ないなあという感じです。

(以下記事抜粋)
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美姫のコーチ自信満々!真央&高橋陣営をバッサリ

愛弟子の快進撃で名コーチが言いたい放題だ。フィギュアスケートのGPファイナルから一夜明けた6日、ともに2位で10年バンクーバー五輪代表に内定した安藤美姫(21=トヨタ自動車)、織田信成(22=関大)を指導するニコライ・モロゾフ・コーチ(33)がメディアに対応。2人のライバル・浅田真央(19=中京大)と高橋大輔(23=関大大学院)の陣営をあからさまに挑発した。

 安藤を指導して4シーズン目になる同コーチは「長い時間をかけてスケーターを理解しないと、ベストを引き出すプログラムはつくれない」と力説し、浅田と長い時間を共有していないタラソワ・コーチをけん制。「際立ついいものができた」と語る安藤のフリー「クレオパトラ」と比較して、「他の選手は100年以上も前に死んだ作曲家の曲ばかりでどうなんだろう」とまで言った。

 また、SPで首位に立ちながらフリーで4回転を失敗して5位に転落した高橋についても「今回のフリーはまともに滑れなかった。彼ら(高橋陣営)が何をしたいのか理解できない」とバッサリ。「他のコーチよりもいい結果を出してきた自負がある」と最後まで自信満々だった。

12月7日7時1分配信 スポニチアネックス
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教え子五輪内定の喜びについ口が滑ったのかもしれませんが、ちょっとこれは、という発言に思います。

きっと彼は今回のグランプリファイナルで自分の読み、計画がことごとくうまくいったのでしょう。安藤選手がキムヨナ選手に肉薄する成績を収め、織田選手が高橋選手より先に五輪内定を手にした。なのですごく気が大きくなって、一種夢見心地の状態での発言だと思います。
五輪に向けてもう心理戦をはじめたつもりなのかもしれませんが、ちょっと勇み足というか、他を見下すような発言をしている彼自身が却ってみっともないことになっている気がします。

まず、彼の「100年以上前の~」という発言は、真央選手自身というより(安藤選手と事実上メダルを争う相手になるとはいえ)、むしろ彼女のコーチであるタチアナ・タラソワへの皮肉に思えます。
モロゾフはタラソワの弟子だったとはいえ、今の関係はあまりよくないんだろうなというのは何となく察していました。
今現在真央選手は試合の成績的には決してうまくいっているとはいえないので、タラソワに勝ったというような気持ちを持っているのかもしれません。

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また高橋選手にしても、織田選手の「チーム・モロゾフ」加入にあたりひと悶着あり、結果蜜月関係にあった高橋選手が師弟関係を突如解消しているという経緯があります。この件についてモロゾフと高橋選手は、最後まで気持ちがお互いに理解できないでいたように見えました。
織田選手を指導することになったとしても高橋選手を手放すつもりのなかったモロゾフと、同じ国のトップ選手2人を同時に見ることは現実的に無理があるとして彼のもとを去った高橋選手とは最後まで気持ちの行き違いがあったように見えました。高橋とモロゾフは、当時お互いに「裏切られた」と思っていたのではないかと推察されます。
なので高橋に対しても「それ見たことか、勝つにはオレのもとにいなきゃダメなんだ」とでも言いたいのかな、と見受けられます。


b0038294_19124261.jpgまた12月1日付の読売新聞では、キムヨナ選手のコーチ、ブライアン・オーサー氏が下記のようなコメントをしています。
「新採点基準下では、個々の技術要素の出来栄えを示す評価点(GOE)でプラスを得ることがポイントになる。12ある要素のGOEのプラス分を合算し、(芸術性を評価する)プログラム構成点の合算分を加えると、大きな得点源になることが分かるだろう。トリプルアクセル(3A:3回転半ジャンプ)などの大技を入れても、他の部分にGOE等の取りこぼしが出てくれば、それは得策とは言えない」

ですが、私は高橋選手の4回転や、浅田真央選手の3A挑戦は決してムダではないと思います。
スポーツ選手なら少しでも自分を向上させたい、少しでも高い技術を身に付けてそれを試合で成功させたいと望むのは自然な、そして持っていなければならない欲求です。試合で成功させて初めて実績、持ち技となるのですから。
また4回転にしろ3Aにしろ、それ自身が選手を選ぶような難易度の高いジャンプは練習で出来ているから試合で決められるかというと、そういうものではないですよね。試合で跳び続けてこそ安定して跳べるようになる。真央選手が失敗しても3Aを跳び続けるわけについて、「一度逃げれば次の試合への負担が大きくなる」と話していました。
たとえそれが勝つための前向きな戦略的判断であっても、跳ばない選択をすることは逃げることとある意味同義となり、回避すればするほど、選手自身もその技に対しての自信は失われ、ますますやりにくくなっていくのではないでしょうか。そうなると再度試合で跳ぶには、回避した数だけ倍増したプレッシャーと戦う必要があります。ずっと回避してきた技を「今こそやろう」と思っても、大抵はうまくいきません。そういう例はフィギュアを見てきている方ならすぐにいくつか思い浮かぶでしょう。

高橋選手がファイナルで4回転を跳んだのは、また浅田選手が3A3回にこだわるのは、間違いなく五輪で跳ぶため、金メダルを狙うためです。
今季プルシェンコ選手が復帰して質の高い4回転を当たり前に決めてきている以上、これまでのように「4回転を回避し全体の質を高めた選手が勝つ」、という状況は五輪では望めないと思います。高橋選手は勿論、全ての男子選手にとって五輪で金メダルを獲るには4回転は必須になるでしょう。
高橋選手にはそれがわかっているからこそ先を見据えて、このまま無難に滑れば五輪の切符を手に出来る状況にも拘らず、今季一度も成功していない4回転を跳ぶことを選んだのです。ひょっとしたら今回順位を獲りに行くためとはいえ4回転を回避した織田選手は、今後高橋選手よりも精神的にアドバンテージを得られるかといえばわからないのです。
真央選手にしても、キムヨナ選手があのような不条理ともいえる大量の加点を毎回得ていて、かつ自身が毎年ルール変更で狙い撃ちされている状況なら、誰もできないような高い技術を完成させることが勝利への道だと考えていても不思議ではないでしょう。

モロゾフ、オーサー両氏の言いたいことはわかります。ある意味正しいのでしょう。ですが挑戦し続ける選手を、その選択を批判する権利はないし、彼らの選択が間違いかどうかは五輪が終わってみるまでは誰にもわかりません。カメがウサギを負かすこともあるのですから。
それにもし大技でミスをし負けたとしても、それを「間違い」と言えるかどうか。
大技を封じ、難易度を下げて勝ったとして本当に選手は納得できるか、また後年まで人々の心に残り語り継がれる演技となり得るか。ファンから惜しみない賞賛や尊敬を得るフィギュアスケーターとして名を残せるか、また他のスケーターから目標とされる選手となれるのか、という問題もあります。
小さくまとまった演技で勝っても意味がない、というアスリート魂を、元選手であるモロゾフ・オーサー両コーチが理解できないように見えるのは悲しいことです。コーチは選手を勝たせるのが仕事ですから仕方ない面もありますし、勝利を一番のプライオリティとすれば愚かな、ハイリスクなことかもしれませんが、これはアスリートとしての信条、プライドの問題で、誰にも否定することはできないはずです。

モロゾフコーチやオーサーコーチのこのような発言は、世界的に実績を残した選手、コーチである彼らにしては品格に欠けるように思え、私自身が真央選手のファンだという事を抜きにしても、フィギュアファンとして個人的にあまりいい気持ちはしませんでした。
自分の教え子に無理をさせない戦略ならそれも結構。ですがわざわざ他選手を引っ張り出してきてこき下ろす必要はないでしょう。
まあ、このようなコメントは却って彼らが引き合いに出した選手達をいかに意識しているか、いかに脅威と感じているかという心理の裏返しにも思えるんですけどね。

人間なので、勿論全ての人と仲良くというわけにはいかないでしょう。これだけ長く同じ世界に生きていれば、いろいろあるだろうことはわかります。
ですが自分のエゴや個人的感情のはけ口として、選手を使った代理戦争みたいなことはしてほしくない。
by toramomo0926 | 2009-12-07 18:36 | フィギュアスケート


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