浅田真央選手の魅力 -美しいポジション
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浅田真央選手の魅力について述べようとしても、私は一言ではとても言い表せません。
思い切りざっくりと言えば、海外の解説者が彼女について述べる時によく使う「Complete Package」(またはWhole Package)という言葉(必要な全てが揃っている、という意味)が一番しっくりきます。この言葉はイチローを表現する時にもよく使われていますね。
フィギュアスケートの歴史の中でも、ここまで全てが水準以上のレベルにある選手はかなり珍しいといってもいいのではないでしょうか。
女子では歴史の中でも数人しか飛べていないトリプルアクセルを跳ぶことができ、手の支持なしでも足を高々と上げてスパイラルを伸びやかに滑り、高い柔軟性を必要とする姿勢で、軸のぶれないスピンができる。また男子並みに激しいステップをこなす技術と体力もあり、かつ柔らかく優雅な身のこなしは、エレガントなスケーターという評価を既に世界で確立しています。
今回のグランプリファイナルを見て、真央選手の存在というか彼女のスケーターとしてのスケールの大きさというものを改めて実感し、その不在感をかみしめた方は多いのではないでしょうか。

今回特に取り上げたいのは、彼女のポジション(姿勢・ポーズ)の美しさについてです。



彼女は3歳からバレエを習っていたこともあるためか、普段からリンクの外でも姿勢がとてもよく、背筋がしゃんと伸びています。今はロシアで本格的なバレエレッスンを受けたりしているので更に美しくなりましたが、その前から、ジュニアの頃から滑りが前傾姿勢にならず、つねに姿勢がよかった。そこに柔軟性も加わり、美しいポジションを保つことができています。

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特に私が彼女のポジションの素晴らしさを実感するのはスパイラルです。
得点はどうあれ、彼女が今の世界一だと思います。伸びやかさ、柔軟性、ポジションの美しさは他の追随を許しません。

今回「アラベスク」と「ケリガンスパイラル」いうポジションを例にとって写真をあげてみます。

前半はアラベスクのポジションで。

2004-2005年。この年に世界ジュニア選手権、ジュニアグランプリファイナルで優勝。
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                 ちっちゃい!

2005-2006年。15歳という最年少でグランプリファイナル優勝。日本中、また世界中に浅田真央の名前を轟かせた年になりました。
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この年だけ同じポジションの写真がなかったので、別なポジション(ビールマンポジション)ですが・・・。

2006-2007年。シニア本格デビュー。初めて勝つ難しさを感じたシーズンとなりました。
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初めて外国人のコーチにつき、アメリカでのトレーニングを始めました。

2007-2008年。17歳で世界選手権優勝。
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これはシーズン前半。後半になるとまた顔が大人っぽくなった。この頃の女の子はどんどん変わりますね~。

*ここからはアラベスクでの良い写真が殆どないので、アラベスクに手の支持をつけて更に足を高く上げるポジションのケリガンスパイラルを例にします。

2008-2009年、タラソワのもとで高い芸術性と高い技術の両立を世界にアピール。
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すっかり女性らしくなりました。
しかし2004年と比べると、足だけがどんどん長くなってる気がする・・・。

そして今年、2009-2010年。
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初戦フランス杯のSP。「仮面舞踏会」のあの激しいステップで、微笑んでいたのにびっくり。SPはフリーより時間が短いとはいえ、あんなに激しいステップを踏みながら微笑む彼女の底知れぬポテンシャルを感じました。

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★彼女のこのポジションでの素晴らしさのひとつは、脚を後ろに高く上げていながらも上体(特に頭)が腰より下に下がっていないところです。
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後ろに脚を高く上げようとして上半身が下がり、頭が斜め45度に下がった状態になってしまったり(シャーロットスパイラルとは別)、腰の位置で頭を保とうとして脚が腰から上に上がりきらない選手は多くいますが、真央選手はきちんと腰から先、脚だけが上に上がっている。彼女のポジションが特に美しく見える理由はそこにもあると思います。

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現在も支持なしでここまで上がります。
これは今年のフランス杯のエキシビジョンで脚を持とうとした手が外れてしまったのですが、脚の高さはそのままでバランスを保っていたときのものです。すごいですね。

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それから、彼女は海外の解説者から、ジャンプの時の姿勢の美しさを評価されているのを時々耳にします。
ジャンプの際の姿勢は手を結んで脇をしめ、腕を胸の前において両足を巻きつけるようにして(つまりなるべく空気抵抗を少なくし1本の棒になるような感じで)回転するのがよいとされています。
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こんな感じ。

しかし選手の中にはなるべく高く飛ぼうとして飛び上がる瞬間に跳ぶ側の肘が上がってしまったり、両脚がぴったりくっついておらず、軸足でない足の膝から下がブラブラして見えてしまういわゆる「巻き足」になってしまう選手もいます。「巻き足」は私はそれほどは気にならないんですが、ジャッジにはあまり良い印象を与えないようです。
真央選手はそのようなクセがなく、ジャンプ時に(足が)とてもタイトだと褒められているのを何度か聞きました。

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また、スパイラルのポジションでなくとも、頭が小さく長い手足という体型も手伝い、あらゆる動きがとても決まっています。
幼少時より音楽の細かい音に動きや振付をぴったり合わせられる、「音を拾う」能力には定評のあった彼女ですから、踊り自体のセンス、リズム感ももともとあるのでしょう。

2005-2006年のシーズン、15歳。
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2006-2007年。
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チャルダッシュです。彼女の使用曲がCMに必ず使われるようになったのはこの年からですね。
彼女の曲が毎年必ずどこかのCMに使われるのは、演技のインパクトが曲を聴くことで蘇り、CMに必要な訴求力となりうるということなのかな、と個人的には推測しています。それだけ印象が鮮烈だということですね。特にこの年の世界選手権でのフリー、チャルダッシュが終わった瞬間の爆発的な歓声は忘れられません。

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2007-2008年。かわいらしさだけでないフォトジェニックな雰囲気がこの頃から出てきました。
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2008-2009年。タラソワについてから、所作が劇的に美しくなりました。
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また、特にここ2年くらいは演技中のどの瞬間を切り取っても美しいと思えるようになってきました。タラソワにかなりシゴかれていると見えます(笑)。身のこなしが格段に優雅になり、体力がついたことで躍動感も同時にみなぎるようになって来ました。指の先まで神経の行き届いた、四肢がまっすぐに伸びた姿はとても美しいです。

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最後にこちらの動画をご紹介します。

Mao Asada ☆・*。・゜ beautiful positions

真央選手のポジションの美しさに注目している方の動画です。ノービス時代から今に至るまでの映像がたっぷり。美しい歌声と、彼女の美しいポジションがぴったりと融合しています。
モンタージュ作る方って本当にすごい。私は動画編集能力はないので、尊敬します。

文字通り女子フィギュアスケートの歴史を作り、レベルを引き上げ続けてきた彼女。まだまだ底知れないと言うか、限界は見えない感じがあります。彼女自身も限界を決めるつもりはさらさらないでしょう。
これからも怪我に気をつけて、なるべく長く私たちの前でその素晴らしい演技を見せていてほしいなと思います。

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