「悔いのない演技」への選択
b0038294_20542420.jpgバンクーバー五輪が始まった。私が一番注目しているのは勿論フィギュアスケートだけれど、全ての競技で結果はどうあれ、思い切り挑戦している選手達を見ていると、こちらもすごく感情移入して見てしまう。そして結果によって国に関係なく一喜一憂するので疲れるけれど(笑)、とても見ていて楽しい。

フィギュアスケートで最初の種目は、ペアだった。ロシアから川口悠子選手とアレキサンドル・スミルノフ選手が出場、ショートプログラム(SP)で自己最高得点で3位につけたが、フリーでは精彩を欠き4位に。メダル獲得はなりませんでした。彼女がロシアで過ごした7年を思うと本当に残念です。
川口・スミルノフのペアの大きな持ち技のひとつは4回転のスロージャンプ。本人達は挑戦するつもりでいたけれど、直前にコーチに3回転にするように指示され、「切り替えができなかった」と話していました。そのつもりでいたのに技のレベルを下げるよう指示され、モチベーションや集中力が乱されてしまったようでした。そして少なからず動揺もしたのだと思います。




2010 Vancouver Olympics Pairs Result
順位と得点の詳細。



この「大技回避」というのは回転不足認定が導入されてから更に増えた気がします。「安全策」と言われていますが、私はこれを選手に命じることは、長期的視点で考えると結構リスキーなのではないかと考えています。
大事な試合で繰り出すべく練習を重ねてきた高得点を狙える技を回避するということは、その技に対して選手本人が自信をなくす可能性がある。それに回避すればするだけ、次やる時には何倍ものプレッシャーがかかることになります。回避が繰り返されれば選手にとっての精神的負担も大きくなり、余計に失敗する可能性が高まるという悪循環に陥り、最悪の場合、出来ていた技が試合でできなくなる、せっかく体得した技を手放すことにもなりかねないのではないでしょうか。

また、大舞台で「やるぞ!」と思っているところに回避の指示を出されることによって、自分(の力)をコーチは信じ切れてないと考える選手がいても不思議ではありません。コーチと選手の間の信頼関係にも影響が出る危険もあるのではないでしょうか。

モロゾフコーチなどもよく安藤選手に3-3のコンビネーションジャンプの回避、織田選手にもここぞという試合の時は4回転回避などを指示しているのを目にします。彼らの信頼関係が危ういものだとは決して思いませんが、ある時友人がこの2選手のことを「(大技を回避して)勝ってもこの2人はあまり「心底嬉しい」という感じじゃないね」と話していて、ハッとしました。確かにそうかもしれません。
勝ちたいからこそ技の完成度を高めるために大技を回避した。その方針に選手が納得してやったかということもありますが、やはり「やりきった、できることは全て出し切った」という気持ちにはなれないジレンマというか不完全燃焼な感じが残っていることもあるのかもしれません。これはあくまで推測ですが。

五輪にあたって、「悔いの残らない演技を」とよく言います。私も是非選手たちにはそういう試合をして欲しいと思っています。ですが選手が何をもって満足とするかというのも難しいですよね。
結果敗れ去っても、たとえ表彰台を逃したとしても、自分の持ち技全てをかけてリスクを承知で挑めば「悔いはない」と思う選手もいるでしょうし、なぜ大技にこだわったのか、と悔やむ選手もいるかもしれない。モロゾフコーチのような人はスポーツをビジネスライクに捕らえて「勝ち」を一番の優先順位にしていると思うのですが、高橋大輔選手やブライアン・ジュベール選手のように「試合では限界に挑戦するべきだ」と考える選手、また浅田真央選手のように、そこまで信念めいてなくても「挑戦するのが当然」と自然に考えている選手もいます。
どうすれば「悔いのない演技」ができるかというのには明確な答えはないですね。選手にはそれぞれの考え方があるし、目標をどこに置くかということでかなり変わってきます。
川口・スミルノフペアはそこをしっかり見極める時間のないまま演技に入ってしまうことになったのは非常に残念だと思いました。

これからどんどんいろんな種目が更にはじまっていくことになりますが、選手はコーチに何を言われても、最終的には自分自身が何を一番求めているかということに正直に、思い切りぶつかっていって欲しいと思います。
川口選手、スミルノフ選手、お疲れ様でした。

そして優勝した復活組の申雪、趙宏博ペア、本当におめでとうございます!素晴らしい演技でした。
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***おまけ***
ところで、バンクーバー五輪のスケートリンクの柵は緑の草原?や自然が描かれています。
それだけで見るとすごく彩りよくて可愛いんですが・・・・コレ、選手の衣装を殺しませんか?
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なんかゴチャゴチャして見える気がする・・・。
トリノも赤やオレンジで鮮やかだったけど、大きな模様はなくてグラデーションだったのでそれほど気にならなかったけど、柵自体に模様があるのってどうなんだろうなあ・・・。
と、ちょっと思いました。
写真のペアはフランスのヴァネッサ・ジェームズ選手とヤニク・ボンヌール選手です。


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