エルヴィス・ストイコ氏、4回転論争に吠える
b0038294_10462932.jpg「Mr.Quad」(ミスター4回転)と呼ばれたエルヴィス・ストイコ氏が、この度のバンクーバー五輪男子シングルで4回転ジャンプとその挑戦への評価が低くされたこと、そして4回転を跳ばない選手が世界選手権や、今回の五輪でも優勝するという現在のフィギュアスケートの流れ、はっきり言えばISU(国際スケート連盟)の方針について、ついに吠えました。

すごく長い、思いの丈を存分にぶちまけたコメントで、訳するのが大変だなーと思っていたら「やっちのブログ『just like an Amaranth』」様にて素晴らしい訳が披露されていたので、申し訳ないと思いつつも引用させて頂きたいと思います。
そして彼の言っていることは、私は100%賛成です。4回転が出来れば優勝という流れはどうかと思いますが、やはり4回転は3回転までのジャンプとは違い、全く別物の未知の領域だという話もありますし、跳べる選手も限られている。そして実践には大きなリスクを伴います。
難しい技へのチャレンジと、その成功に関しては(女子のトリプルアクセルも同様に)高く評価されるべきです。今ISUがやろうとしている演技構成点の高騰と同様に、評価を高くつけるべきです。


彼のコメントの

In what other sports do you have to hold back in order to win?
全力を出し切らないで勝てるスポーツなんて他にあるか?


という言葉に深く頷きました。
むしろ「全力を出し切らない方が勝てるスポーツなんて他にあるか?」
と言いたい心境だったと推察されます。少なくとも私はそうです。

ストイコ氏のコメントは以下の通り。
(2011年7月28日、訳者であるやっち様よりご連絡を頂き一部修正したものを掲載しなおしています。やっち様、ありがとうございました。)




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The night they killed figure skating
By Elvis Stojko, Yahoo! Sports
2010 Feb 19


Sorry, Evan Lysacek.You’re a great skater and all.But that wasn’t Olympic champion material.
ごめんよ、ライサチェク。君は本当に偉大なスケーターそのものだよ。でもあれはオリンピックチャンピオンの演技内容じゃなかったよね。


In Thursday night’s men’s free skate, Lysacek skated slow and his jumps weren’t close to the technical ability of defending Olympic champion Evgeni Plushenko.
木曜日の夜に行われた男子FS、ライサチェクのスケートはのろかったし、彼のジャンプはディフェンディングチャンピオンのエフゲニー・プルシェンコのジャンプ技術に近付いてもいなかった。


How can you be Olympic champion when you don’t even try the quad? If you’re going to take the quad out, why not take out another triple axel and just have more of the other stuff so the International Skating Union can make it more into an “art” recital.
4回転ジャンプに挑戦すらしないのに、どうしてオリンピックチャンピオンだと言える?
4回転を外すなら、なぜトリプルアクセルを外さないのか。ISUがフィギュアを競技ではなく“リサイタル”作りかえられるように、その他のジャンプだけあればいいだろ。


Plushenko had a great performance. His footwork was great and maybe his spins weren’t quite as good as Lysacek’s, but it wasn’t that big of a difference. He also had a quad toe triple toe that wasn’t even attempted by anyone else. He did both triple axels, so all the jumps were there.
プルシェンコは素晴らしい演技をした。彼のフットワークは素晴らしかったが、スピンはライサチェクほど良くはなかった。でもそんなに大きな違いではなかったさ。それに彼は他の誰も挑まなかった4回転トゥ+3回転トゥを成功させたんだ。そして彼はトリプルアクセルを2回跳んだから、全てのジャンプが揃っていたということになる。


But the judges’ scoring was ridiculous.
しかし、ジャッジが下した採点はばかばかしいものだったよ。

Because of it, the sport took a step backward. Brian Boitano did the same thing, technically, in 1988. There are junior skaters who can skate that same program.
そのバカらしい採点のためフィギュアは一歩後退してしまった。 ブライアン・ボイタノは1988年の時点でライサチェクと同じ技術内容で滑ってたんだよ。 ジュニアだってそのプログラムが出来るさ。

And the judges’ scoring probably killed figure skating because kids now are going to see this and say, “Oh, I don’t need a quad. I can just do great footwork for presentation marks and do a couple of nice spins and make it to Olympic champion.” With that type of scoring, you don’t have to risk it. You can play it safe and win gold.
今、子供達はこれを見て、『そうか、4回転は必要じゃないんだ。プレゼンテーションスコアのためにフットワークを良くしてスピンも上手に出来るようになればオリンピックチャンピオンになれるんだ。』と思うだろう。
今の採点方法では、それほどリスクを犯す必要もない。安全策でゴールドメダルを獲得することができるからね。


In what other sports do you have to hold back in order to win?
全力を出し切らないで勝てるスポーツなんて他にあるか?



The International Skating Union has taken the risk out of figure skating and it makes me sick.
ISUはフィギュアからリスクを取り除いた。俺はそれに心底うんざりだ。


If Plushenko had made some mistakes, then sure, maybe Lysacek deserves gold. But when you take the risk out of skaters’ programs, it doesn’t compute to me.
もしプルシェンコがいくつかのミスを犯したというのなら、多分確実にライサチェクが金メダルなんだろう。でもリスクを冒さないプログラムなんてものは俺の計算には入ってないんでね。


And it’s not a personal thing. I like Evan. But when you compare performances and have an outcome like this, the sport is going backward. And it hurts me to say it because I love this sport. But the judges made a mockery of it by giving Lysacek the gold.
個人的な感情ではないんだよ。俺はエヴァンが好きだから。でもプログラムを比較して今回のような結果が出てしまうと、フィギュアは退化してると言わざる得ない。俺はフィギュアがとても好きだから、このようなことを言うのは本当にキツイんだ。でもジャッジはゴールドをライサチェクに与えることによってフィギュアスケートを嘲ったんだ。


I don’t want to rain on anybody’s parade because it’s not the skaters’ fault. It’s the system. And the figure skating community wants to control who wins and who loses. And what it does is it makes the component score more valid than the jumps so it can control whatever it wants. And that’s exactly what happened Thursday night at Pacific Coliseum.
スケーターのせいでこんなことになっているんじゃないから、誰のお祝いにも水を注したくはない。これはシステムだからね。
そしてISUは誰が勝つか、誰を負けにするかコントロールしたがっている。思う通りにコントロール出来るように、コンポーネントスコアをジャンプのスコアより高く出せば良いだけだ。
そして、それはまさに木曜日の夜、パシフィック・コロシアムで起こった。


How can the sport be put back on the right path? I have no idea. I haven’t even thought about it. It’s not up to me. Because people at the ISU obviously seem to know what they’re doing. Well, they think they know what they’re doing.
どうやったらフィギュアを正しい道に戻すことができる?俺には分からない。俺はそれについて考えたことすらなかった。それは俺次第でどうこうできることではないからね。
それにISUは自分たちが何をしているかを良く解ってるように思えるのでね。いや、ISUは自分らがやっていることを解ったつもりでいるんだな。


For me, the outcome on Thursday night was disappointing.
俺としては男子シングルの結果にはガッカリされられたよ。


A few more thoughts on the men’s free skate:
男子FSについてもう少し・・・


• I thought Daisuke Takahashi was awesome. He tried the quad and he had the guts to go for it, and he should’ve been ahead of Lysacek in that aspect.
俺は高橋大輔がすごいと思ったよ。 彼は4回転に挑戦した。そして4回転に挑戦しようとするガッツもあった。そういう視点で見ると、大輔はライサチェクの上にいるべきだったね。


• Johnny Weir was great. He should’ve been higher than sixth – above Patrick Chan, who was fifth. Weir outskated Chan. He might’ve skated a little bit slow but he went out there and did his stuff. I feel bad for him.
ジョニー・ウィアーは素晴らしかった。 彼は6位よりも上位にくるべきだ。パトリック・チャンよりも上にね。ウィアーはチャンを凌いでいた。少しスピードが遅かったかもしれないが、彼は自分の力を出し切ったよ。気の毒に思う。


People say I’m hammering certain skaters. I’m not. It’s the system I don’t like and if you say I am biased … I already said I am not a fan of Weir’s skating, but he skated well tonight and deserved to be ahead of Chan.
みんなは俺が一部のスケーターを叩いていると言っているが、そうではない。俺はシステムが嫌いなだけなんだ、そしてみんなが俺が偏った考えだと言うのなら・・・前にも言ったけど俺はジョニー・ウィアーのスケーティングのファンではないが、彼は今夜素晴らしい滑りをしたし、彼の滑りはパトリック・チャンよりも上位に値するものだった。


In addition, Takahiko Kozuka – my favorite skater – did not get the points he deserved. He skated great, had awesome spins, the best edges in the competition, was very close with the quad and did a ton of triples.
そして俺のお気に入り、小塚崇彦もまた彼に値する得点を得られなかった。彼のスケーティングは素晴らしかった。最高のスピン、出場選手中もっとも素晴らしいエッジング。惜しいクアドとトリプルジャンプを沢山跳んだ。


Figure skating gets no respect because of outcomes like this. More feathers, head-flinging and so-called step sequences done at walking speed – that’s what the system wants.
フィギュアはこのような結果のため全く敬意を得られていない。
フワフワした様なもの、ただ頭を激しく動かしたり、いわゆる歩いているみたいなステップシーケンス・・・こういうのが今の採点システムが求めているものさ。


I am going to watch hockey, where athletes are allowed to push the envelope. A real sport.
俺はアイスホッケーを見ることにするよ。選手達が限界に挑んでいるからね。真のスポーツだよ。

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エルヴィス・ストイコ氏のようなフィギュア界に歴史を打ち立てた実績もある方がこのような発言をガンガンしていってもらえると、少しでもISUにもプレッシャーになるかな、なればいいなと思います。
ライサチェク選手の言うとおり、フィギュアはジャンプだけでなく表現も重要な要素です。ですがどちらが、ということではなく、どちらも最高のものを追求するべきなのです。どちらかが重要ということではなく、どちらも同じくらい重要なものなのです。

選手に挑戦を諦めさせるような方針やルール作りは、スポーツとしてのフィギュアを捨てようとしているようにしか見えません。
もし本当にISUが今後フィギュアスケートを「リサイタル化」していくつもりなのであれば、五輪正式種目から撤退するべきだと思います。そんなものはもはやスポーツではないし、芸術に点数をつけるなんてことはナンセンスですから。

彼の言葉が、女子選手の採点に良い影響を与えるといいなと思います。少しでも公平・公正な採点のために。


*英文及び翻訳はやっちのブログ『just like an Amaranth』様より引用させて頂きました。ありがとうございました。


<引用したリンク>
彼らがフィギュアを殺した夜  ストイコ 翻訳 -やっちのブログ『just like an Amaranth』2010年2月21日


<関連コラム>
男子シングル終了・4回転論争は続く-バンクーバー五輪  2010年2月19日
by toramomo0926 | 2010-02-22 10:34 | フィギュアスケート


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