回転不足認定に「中間点」導入の見通し-ISU
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ここのブログで散々こき下ろしてきたフィギュアスケートの回転不足認定について、国際スケート連盟(ISU)が来季から「中間点」に相当するルールを導入する見通し、という報道が出ました。



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回転不足で「中間点」導入へ=高難度ジャンプ挑戦を促進-国際スケート連盟

 【バンクーバー時事】フィギュアスケートで回転不足とされたジャンプの基礎点について、国際スケート連盟(ISU)が来季から「中間点」に相当するルールを導入する見通しであることが26日、分かった。五輪終了を受け、6月のISU総会での改正に向けた詰めの議論が行われる。
 現行ルールでは回転不足のジャンプは1回転少ないジャンプと見なされて大幅な減点になるが、その減点幅を縮小し、難度の高いジャンプへの挑戦を促すのが狙い。ISU技術委員会関係者によると、以前から話し合いが続けられていた。
 例えば、バンクーバー五輪女子銀メダリストの浅田真央(中京大)が得意とするトリプルアクセル(3回転半ジャンプ=基礎点8.2点)は、回転不足と判定されると2回転半の基礎点(3.5点)しか付かない。新ルールが導入されれば、二つの基礎点の間の点数が得られることになる。
 近年は高難度のジャンプに対するルール緩和が行われてきた。昨季はトリプルアクセルと4回転の基礎点が引き上げられ、今季からは回転不足のジャンプに対してジャッジが評価点(GOE)を必ずしも減点する必要がなくなった。
 それでも、今回の五輪では、女子でトリプルアクセルを計3度跳んだ浅田が金妍児(韓国)に大差で敗れ、男子では4回転を跳ばなかったエバン・ライサチェク(米国)が優勝した。 
(2010/02/28-02:32)

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今回の五輪で、まず男子シングルから、4回転という限界に挑戦せずに守りに入った選手が優勝してしまうのはどうか、という「4回転論争」が巻き起こりました。
続いて女子シングルでは、大会で唯一トリプルアクセル(3A)に挑み、しかも一つの試合で3度成功させるという、女子には不可能と思われていた史上初の記録を打ち立てた選手が、ジュニアでもできる演技構成の選手に「演技の質が高いと評価された」という理由で20点以上の点差をつけられて優勝を逃す事態となりました。
この2つの事件は、ISUに対して、またフィギュアスケートという競技に「スポーツであり続けるのか、スポーツであることを辞めるのか」という決断をある意味迫るような状況となりました。

男子の4回転論争の方が真正面から議論されているので騒ぎ的には大きくなっていますが、起こっていることだけを見てみると、女子の方が問題が根深いというか、ねじれていると言うか、真正面から議論もできないだけに深刻な気がしますね。
男子では4回転を飛べる、または跳ぼうとしている選手は複数いますが、女子で3Aに挑んでいるのは浅田真央選手だけなので。
ただ、現役選手の中で成功させられるのが一人だけのジャンプ、というか彼女の他は跳ぼうとすらしていないという難易度の高いジャンプを3回成功させても殆ど評価されないという意味では男子以上に「終わっている」状況と思われます。

トリノ五輪後に4年がかりで浅田真央がされてきたこと

プルシェンコ選手が浅田真央選手の3Aについて語る

プル様は、今日のエキシビジョンで真央選手にキスを迫った(笑)そうですね。
プル様は4回転、真央選手は3Aと違いはあれど、自分の限界を広げようと頑張っている彼女へのシンパシーと励ましの気持ちを感じました。


4回転を成功させながら銀メダルとなったプルシェンコ選手は採点(評価)について正式に抗議する旨のコメントを出し、彼に賛同する署名は既に2万名分集まったという話もあります。
五輪開催中の出来事という事で、普段フィギュアスケートを追いかけていない一般の方々にも現在のルールの不条理さ、限界に挑戦する選手を罰するようなスポーツとしての割に合わなさが広く知られることとなり、ISUも重い腰を上げざるを得なくなってきたのかもうしれません。「以前から話し合いが続けられていた」というのはちょっとマユツバですけど。個人的には。

でも、「中間点」ってナンでしょうかね?何故、頑なに「跳ぼうとしたジャンプの基礎点から減点」というシンプルな方法を取らないのかというのが非常に不思議というか、訳がわかりません。余計にルールが複雑に、わかりにくくなるだけです。


b0038294_22221937.jpgライサチェク選手は4回転こそ跳びませんでしたが、他は本当に素晴らしい演技でした。
五輪というある意味人生を決める大舞台で、4回転を跳ぶことに対する精神的重圧や転倒した場合の精神的・体力的なダメージとう大きなリスクを回避したという点においてはかなりアドバンテージがあったと思うし、だからこそのあの演技だったということは確かにいえる面はあります。
ただ、彼がどれだけ練習を積んできたかということは見ていてすごく伝わってきたし、そしてそれを遺憾なく発揮できた精神力ということについては、4回転論争に関係なく賞賛されるべきだと思います。
回転不足認定のルールは今年から始まったことではないのに、彼にとっては少し気の毒な状況となってしまいました。
キムヨナ選手もノーミスで滑りきった精神力については素晴らしかったですね。ただ、出来栄え加点(GOE)があの神演技をしたライサチェク選手の約2倍もついているのです。これは私の個人的感情を抜きにしても、やはり妥当だとはどうしても思えません。女子だけでなく、男子選手と比べても非常にバランスが悪いというか、加点の与えられ方が突出しすぎている。これはこれでまた別の問題を抱えていると言えます。こちらもどうにかしてもらいたいものです。

しかし、とにかく状況は動き出してきた、しかも予想外に早く始まったことは嬉しいですね。
ただ、昨年ぬか喜びさせられた「回転不足認定を緩和」みたいな羊頭狗肉的な改正にならないよう、またジャッジの一人が「一人以外は新しい採点以前の方式で採点した」などと平気で口に出すいうことにならないよう、運用までもしっかりとして欲しいですね。
そしてプルシェンコ選手もここで手を緩めることなく、この動きがどうなろうがしっかりと抗議まではやってほしいと思いますね。まだルールが制定されると決定したわけではないのですから。


このことについては、慎重に推移を見守っていきたいと思います。
少しでも努力と挑戦を続ける選手達の心の支えとなるような改善がありますように。
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<参考リンク>
浅田真央が戦ってきたもの

<関連コラム>
キャンデロロ、女子SP結果に吠える「真央の方が難しい技をしているのに、どうしてこうなるのか?」  2010年2月25日  
エルヴィス・ストイコ氏、4回転論争に吠える  2010年2月22日
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by toramomo0926 | 2010-02-28 21:22 | フィギュアスケート


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