浅田真央選手、2度目の世界女王に -2010世界選手権
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フィギュアスケート世界選手権、女子シングルは浅田真央選手がSP、フリーともにノーミスの演技で優勝、2008年以来2年ぶりの世界女王に返り咲きました。
高橋大輔選手とともに史上初、シニアでの日本選手アベック優勝となりました。本当におめでとうございます!!!

ISU Figure Skating World Championship 2010
順位と得点の詳細。
それぞれの種目の「Result」で総合順位と総合得点が、
ショートプログラム(SP)とフリーの「Entries/Result Details」では得点詳細が、「Judges Score」では各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。






今回、スカパーでリアルタイムで見ました。とりあえず一言言いたい。

真央選手は2度目のトリプルアクセル(3A)でダウングレードを取られたということですが、見た目には完璧な演技で197.58点。
キムヨナ選手はSPに続きやはり調子が悪そうで、3回転サルコウで転倒、またダブルアクセル(2A)は跳ぶことが出来ませんでした。スピンはいつもよりも数倍遅く、やっぱり気力は感じられなかった。
それなのに、彼女はフリーのみでの順位では1位、総合190.79 点をたたき出したのです。
まるでキムヨナ選手はどんなに調子が悪く、どんなに演技の内容が悪くても、表彰台落ちするということは「あってはならないこと」とされているかのような点の出方でした。
そしてやっぱり今回も最初の3-3のコンビネーションジャンプのGOE加点は+2。もう彼女は3-3を申告した時点で必ずGOEは2点つける約束でもあるかのように、毎回毎回判で押したように+2の加点がついていて、笑えるほどです。

真央選手の演技後にも、キム選手の演技後にも、観客から(逆の意味での)ブーイングが起こっていました。そりゃあそうですよね。
今まで彼女に対する加点・減点の甘さは取りざたされていましたが、賛否両論ありました。しかし今回ばかりはファンでない方も含めて疑問に感じた方も多かったのではないでしょうか。
マスコミとジャッジ以外の本当にフィギュアスケートが好きな人、そしてスポーツの本質とは何かを知っている人には、真のアスリートとは何かを(良くも悪くも)しっかりと認識できた大会だったように思います。


昨日のショートプログラム(SP)のコラムで、「彼女(キムヨナ選手)の場合「PCS&GOEマジック」で「7位から大逆転で優勝」とか起こりかねないから怖い、と冗談交じりに書いたら、本当にそれに近いことが起こりました。
本当に信じられない。
ISUの言い分は「質の高い演技には高得点を与える」という建前ですが、今日のキムヨナ選手の演技はお世辞にもそうは言えなかった。ミスしたジャンプは基礎点が低いものであったけれども、演技そのものに精彩がなく、身体も重そうな動き。そんな選手に「音楽の表現」「演技力」などの演技構成点(PCS)で高得点をつけたのです。
いつも彼女はPCSの加点を山盛りにつけてもらっていますが、今回の演技はいつもよりも出来が悪いものなのですから、彼女比でも点は低く抑えられるべきなのに、いつもと同じように8点台が並んでいました。

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今大会フリーの得点詳細(5位まで)。
格選手の得点詳細は上の赤地の表、項目の内容は下のグレー地の表を参照してください。
ざっくり言うと、TESが技術点(入れている要素の合計点)、PCSが演技構成点、TSSが総合得点(TES+PCS)です。
SSから右側の項目が、PCSの内訳となっています。



結局ISUがもっともらしいことを言って今の採点基準やルールを正当化していても、そこにははっきりとダブルスタンダードの存在を感じます。実際の運用は「特定の選手には点を多めに出す」「選手によって採点傾向、基準を変える」というルールなんだと言われても仕方ないのではないでしょうか。

そして更に私を唖然とさせたのはスカパーの放映で聞いた、試合後のキム選手のコメントでした。
「プレッシャーは全くなかった。私は欲しいものを全て手に入れたのだから。
(中略)オリンピックでミスしなかったのは本当にハッピーだ」

彼女のコメントは全部聞きましたが(長かったので全部は覚えられなかった)、負け惜しみと嫌味しか私には感じられませんでした。
ひたすら自己の正当化と弁解じみた内容に終始し、自分の演技への反省も、勝者への敬意もなかった。
こういう選手が五輪金メダリストとして名を刻まれるのかと思うと本当に、脱力するほどうんざりします。
今後はキム選手の引退またはプロへの転向の宣言を待ちたいと思います。間違っても変な欲を出して現役続行などと言い出さないことだけを祈ることにします。
お疲れ様でした。


さて、いきなり嫌な話から始めてしまいお目汚ししてしまったので話題を変えます。

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浅田真央選手はSP、フリーともに素晴らしい演技でした。
SPは華やかに舞っていた真央選手が、フリーでは別人のように荘厳な「鐘」を滑りこなす姿に、観客は大きな歓声を送っていました。五輪の時に続いてスパイラルでは大歓声が起き、観客に一番愛されていたのは地元のコストナー選手、そして真央選手だったように感じました。


Mao Asada 2010 World Championship FS -The Bells of Moscow



私としては、彼女が演技を終えて腕を高く突き出した瞬間、すごくいい笑顔をしていたのが本当に嬉しかった。
彼女がこういう表情で今季の試合を終えることを望んでいたので、順位が決まる前からかなり落ち着いた心境になっていました。点数はあてにならないとはっきり分かりましたし。

彼女は試合後に「全て出し切ったという感じ。(五輪でミスした)後半2つのジャンプは絶対に決めたいと思っていた。演技はパーフェクトではなかったが、完璧に近い演技ができたので、嬉しい気持ちが大きい」と話していたそうです。本当におめでとうございます。
あなたの今季の挑戦は誰からも無謀といわれるような険しいものでした。反対意見もすごく多かったし、シーズン初め不振だったことで批判もされた。
でもあなたは決心を一瞬でも揺るがすことなく、とうとう達成して乗り越え、私たちを力づくで納得させ、さらに感嘆までさせたのです。

ピアニストの辻井伸行さんも、以前真央選手のことを「最初調子がでなくても、必ず盛り返して優勝したりするところ」が好きだと語っていました。掲げた目標に一心に取り組み、必ず乗り越えてみせてくれるところが彼女の大きな魅力のひとつだと私も思っているので、すごくよくわかりました。
そして普段フィギュアを見ない方々も、五輪での彼女を見て何かを感じた方は多かったのではないでしょうか。

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真央選手、そして高橋選手、あなたがたの演技は今年の王者の名にふさわしい、素晴らしい演技でした。
五輪シーズン、本当にお疲れ様でした。美味しいものを食べてゆっくり休んで、真央選手はスケートを始めて以来一度も経験していないという長い旅行を舞さんと満喫して、また新しい気持ちで素晴らしい演技を見せてくれるのを楽しみに待っています。

ここで、一番印象に残った真央選手のコメントを。

 「最後に『鐘』を自分のものにすることができたと思います。それが一番嬉しい」

世界選手権優勝、本当に本当におめでとうございます。
そして、ありがとうございました。
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フィンランドのラウラ・レピスト選手が初めて世界選手権でのメダルを獲得、3位に入りました!
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スパッとしたキレのよい演技と回転軸の細い美しいジャンプが持ち味の彼女も、今季はジャンプに苦しみました。ですが最後に本当に素晴らしい演技をしましたね。
ミスはありましたが演技の流れを途切れさせず、スピードも落ちず、動きも最後まで力強かった。スピンも途中で回転速度を変えたりしてすごく美しい。彼女のスピンは私大好きなんです。
欧州選手権は優勝の経験はありますが、世界選手権の表彰台は初めて。確認していませんが、フィンランドの選手で初めてかもしれませんね。いつも真面目に取り組んできた彼女の努力が最後に報われて本当によかったと思います。おめでとうございます!

Laura Lepisto 2010 World Championship FS -Adios Nonino/Fuga y Misterio

ところで、彼女のファーストネームの読みはずっと「ラウラ」だったと思うんですが、最近「ローラ」って表記されていますね。
確かに「Laura」だから英語読みではローラなんだけど彼女はフィンランドの方ですし、場内アナウンスでも「ラウラ」って発音だと思うんですけど・・・
日本でもラウラじゃだめなの?・・・私は「ラウラ」って書きますけどね。


安藤美姫選手がフリーで神演技、見事4位入賞です!
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SPでは転倒がありましたが、フリーはステップの前のスピンが少しよれた以外は全てがきれいに決まり、身体もよく動いていて最後まで気持ちのこもった演技を見せてくれました。
音楽が終わった瞬間、自分でも大きな手ごたえがあったようで笑顔で歓声をあげていましたね。彼女が試合でこんなにいい笑顔をしたのをしばらく見ていなかったので、見ていてこちらまで嬉しくなりました。
彼女は4年間で本当に精神的に大きく成長したと思います。本人も話していましたが今季は特に演技にムラがなくなり、安定感が出てきました。
10代で大きくマスコミに取り上げられるほどの才能の開花を見せていた彼女ですが、彼女の真の能力が発揮されるのは、もしかしたら来季以降かもしれないというような期待を抱いてしまうほど、今日の演技は素晴らしかった。
おめでとうございます!ソチを目指すと聞いていますが、来季も頑張ってください!

Miki Ando 2010 World Championships FS -Rome



5位にシンシア・ファヌーフ選手(イタリア)。素晴らしい演技でした!
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彼女は昨季に初めて知ったのですが、エキゾチックな顔立ちで身体全体を大きく使ったダイナミックな演技をする選手という印象でした。ですがジャンプでミスが多く、点が出ずにもったいないなあと思うことが何度かありました。
今大会の彼女は何かを乗り越えた感じがします。来季自信をつけた彼女が台風の目になるかもしれませんね。
お疲れ様でした!

Cynthia Phaneuf 2010 World Championship FS -Mission Cleopatra

クレオパトラが4位と5位に並んだことになります(笑)。ほんと、曲(この場合はテーマですが)がかぶる時ってあるんですよね~。
でも2人とも個性が全く違うので、見比べる楽しさもありました。


6位にカロリーナ・コストナー選手(イタリア)です!
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カロリーナも今季調子が上がりませんでした。五輪でも全くうまくいきませんでしたしね。でも今大会で「終わり良ければ全てよし」という感じになったのは嬉しいです。彼女はやっぱり笑顔が似合います。
地元開催というのは選手にとって応援が嬉しくもあり、またそれがプレッシャーになったりする時もあるのかもしれませんが、今回トリノのお客さんは一貫して選手の側に立った、温かく公正な応援でしたよね。よく選手が「お客さんの声援に背中を押してもらった」みたいなコメントをするのを聞きますが、今大会の観客の反応を見ていると、頷けるものがあります。
カロリーナの明るくてフェアで、ハッピーなキャラクターは私は大好きなので、彼女が今季を笑顔で締めくくってくれたのは嬉しかったです。
お疲れ様でした!

Carolina Kostner 2010 World Championships FS -Air/Cello Concerto

この衣装の色、とてもステキですよね。デザインも大胆だけれど品が良くて、大好きです。


SP1位だった長洲未来選手はフリーでミスが出てしまい、総合7位となりました。
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初出場した世界選手権でいきなりSP1位になり、優勝や表彰台を必要以上に意識してしまい、彼女の武器だった「怖いものなしなパワー」が隠れてしまいましたね。残念です。
それだけ、やはり世界選手権という試合は特別だし、出場する選手の緊張感とか、雰囲気もきっとものすごいんでしょうね。
3つのジャンプで回転不足認定を受けてしまったということで点が全く伸びませんでした。
「7位になるとは思わなかった。表彰台に乗りたかった。こんな形でシーズンを終わりたくなかった」と涙を流していました。
彼女は回転不足を取られることが多く、見た目おお!神演技!と思っても、点があまり出なかったりするんですよね。
でも今回の経験と流した涙は、更に彼女を一回りスケーターとして成長させるはずです。来季の彼女はびっくりするくらい強くなっている可能性が高い。今の上位選手もうかうかしていられませんね。
ミライちゃん、本当によくがんばりました。今季の自分を誇りに思って欲しいと思います。本当にお疲れ様でした。

Mirai Nagasu 2010 World Championship FS -Carmen



鈴木明子選手がSP20位から11位にジャンプアップ!
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「ジャンプ無しでも楽しんでもらえる滑りをしようと思った」と話していた明子選手。文字通り最後まで観客を釘付けにしていました。
今季ヨーロッパで滑るのがこれがはじめてとのこと。驚きましたが、言われてみれば・・・という感じでした。
でも彼女のウェストサイドストーリーの弾けるような演技はきっとトリノのお客さんの心に響いたと思います。
表情も、身体の動きも素晴らしかった。
明子選手も来季が本当に楽しみな選手のひとり。次はどんなプログラムを、どんな物語を見せてくれるのか今から待ちきれないです。
本当に、今まで頑張ってきた分の「貯金」が一気に払い戻された、というような大活躍のシーズンでした。彼女の人生にとって最も重要な意味を持つ1年になると思います。つねに前を向いて頑張り続けた彼女の輝きを来季も楽しみにしたいと思います。
本当にお疲れ様でした。

Akiko Suzuki 2010 World Championship FS -West Side Story

ステップの時の表情にはいつも引き込まれます。


それにしても、五輪の時は世界選手権あるのって酷ですよね・・・ないと困るんでしょうけど・・・。
それでも出場したからにはベストを尽くし、何人かは今季最高の演技をした。五輪後、全てが抜け殻のようになったはずの選手達がシーズンベストを出し、自分の手ごたえ的にも最高と思える演技ができるというのは、どれほどの精神力と鍛錬を積んだというのでしょうか。
今季はすごく長く感じられたでしょうがゆっくり身体を休めて、心もしっかりリフレッシュして、怪我なく来季のシーズンスタートを全員が迎えられますように。

選手の皆様、本当にお疲れ様でした。

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by toramomo0926 | 2010-03-28 01:04 | フィギュアスケート


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