高橋大輔選手逆転優勝!スケートアメリカ・男子シングル
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スケートアメリカは男子シングルが終了。
男子は高橋大輔選手がSP2位から逆転で優勝を飾り、グランプリファイナル進出一番乗りを果たしました。織田信成選手も2位で、ファイナル出場は確実という状況です。
そしてそして、アメリカの若き新星アーミン・マーバヌーサデー選手がグランプリシリーズ初の表彰台となる3位にジャンプアップです!!おめでとうございます!!


ISU Grand Prix 2010 Skate America
順位と得点詳細。
「Result」でそれぞれの種目の総合順位と総合得点が、
「Entries/Result Details」ではショートプログラム(SP)とフリーそれぞれの得点詳細が、
「Judges Score」ではSP/フリーで各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。




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フィギュア 高橋が逆転優勝 織田2位 スケートアメリカ

フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦、スケートアメリカ第2日は13日、当地で男子フリーなどがあり、ショートプログラム(SP)2位の高橋大輔(関大大学院)が148.95点をマークし、合計227.07点で逆転優勝を果たした。高橋はGPシリーズ6勝目。第1戦のNHK杯に続く優勝で、GPファイナル(12月、中国・北京)進出を決めた。高橋はジャンプの乱れを、持ち味である表現力でカバーした。

 SPトップの織田信成(関大)はジャンプのミスが響き、合計226.09点で高橋と0.98点差の2位に終わった。SP5位の村上大介(青森短大)が5位に食い込んだ。

 ★織田がジャンプの規定違反で自滅した。出だしの4回転ジャンプで転倒。ミスを取り返そうと滑りながら演技構成を組み替えたところ、3回までしか認められていない連続ジャンプを4回跳んでしまった。最後のジャンプは無得点。06年トリノ五輪選考会となった05年全日本選手権など主要大会で過去4度も犯しているミスだった。演技を終えてコーチに指摘されるまで気づかなかったといい「言葉にならない」とぼう然としていた。

毎日新聞 11月14日(日)14時42分配信

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高橋大輔選手がSP2位から本当に僅差、0.98差で織田信成選手をかわし、逆転優勝を飾りました!
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フリーはジャンプにミスが目立ったものの、それ以外のところはNHK杯よりずっと良かったと思います。しっかり踊れていましたし、より振り付けにタンゴっぽいねちっこさが出ていて見入ってしまいました。演技構成点(PCS)の5項目すべてを8点台と9点台に揃えるという高評価を得て逆転優勝です!

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今回のPCSについては、私は(あくまで素人の印象ですが)それほど不当に高いとは思いません。織田信成選手と比べても結果的に総合得点ではそれほど点差はついていませんし、高橋選手は滑りも振り付けも素晴らしく演じ切っていました。ただ、ジャンプの失敗に影響を受けていない点については・・・というのはありますけれど。
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というか、スケートカナダでのパトリック・チャン選手のPCSを見てしまってからは、もう何でも許せるような気にすらなっています(笑)。チャン選手の得点の高騰ぶりを見てしまったら、高橋選手の演技で高得点がつくのは道理に叶うような気がするというか。
高橋選手は高い技術と、内側からほとばしるような気持ちのこもった演技なので、ジャッジが点を出しやすいタイプの選手という面はあるにせよ、彼の演技なら高くて当然だよな、と思わせる説得力があるからです。
点を取るためだけの空虚な演技や、高得点を狙って要素をつぎはぎしたようなプログラムとは違う「魅せよう」という気概が感じられる演技であるというのも自分の中では大きい。
NHK杯ではあまり感情移入できなかったこのフリープログラムも、今大会ではジャンプはNHKより出来が悪かったにも拘わらず、私は結構入り込んで見ることが出来ました。ファイナルではジャンプも演技も更に磨かれた素晴らしい演技を見せてくれることと思います。楽しみにしています!!


Daisuke Takahashi 2010 Skate America FS -Invierno Porteno

SPでなでつけていた髪を、今度はフリーでたなびかせてますね(笑)
でも、髪を少し切りましたね。なのでうるさい感じではなくなっています。私は彼はこのくらいの髪の長さが一番似合うと思いますね。少なくとも、競技を続けている間はあまり長くしないほうがいいと思います。

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SPトップだった織田信成選手は、自身シニアで4度目となるジャンプのカウントミスのためにザヤック・ルール違反を取られ、3連続のコンビネーションジャンプの得点が0点になってしまう大きなミスを犯し、またしても目前の優勝を逃してしまいました。
このザヤック・ルール違反がなければ逃げ切り優勝だっただけに、非常に悔やまれます。
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ザヤック・ルールとは、同じ種類のジャンプやコンビネーションジャンプを複数跳ぶ場合の回数を制限する規則のこと。違反すると、該当するジャンプの中で一番最後に跳んだジャンプが自動的に0点となります。


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<ザヤック・ルールとは>
ジャンプの重複を制限し、フリープログラム中でより多くの種類を跳ぶよう促す規則。
シングルのフリープログラムで同じ種類の3回転ジャンプ、4回転ジャンプは2回までに制限されている。重複して跳ぶことが許されるのも2種類までで、そのうち少なくとも1回はジャンプコンビネーションか、ジャンプシークエンス中で跳ばなければならない。
名称の由来は、1982年の世界選手権で優勝したElaine Zayak(アメリカ)。この時彼女がフリープログラムで6回のトリプルジャンプのうち、4回トウループを跳んだことがきっかけと言われている。北米のマスコミを中心に使われる用語ではあるが、実際のISUルールブックにはこの表現はない。
参照:ISUルール520条
出典:JLogos
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織田信成選手のフリー得点表(クリックすると拡大します)。
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赤い線で囲んだ3S-2T-2Lo(トリプルサルコウ、ダブルトウループ、ダブルループの3連続コンビネーションジャンプ)の得点が消されて0点になっており、*印がつけられています。
下の赤い線で囲んだ部分を見ると「*=Invalid Element (無効な演技要素)」となっており、ノーカウント状態となったことがわかります。

1つのプログラムの中に入れられる「組み合わせたジャンプ」(コンビネーションジャンプまたはジャンプシークエンス)は3回までの決まりですが、最初の4回転ジャンプを失敗したことでとっさに演技構成を変更したため「組み合わせたジャンプ」の回数を間違えてしまいました。
恐らく演技要素6番目のトリプルアクセルのジャンプシークエンス(3A-SEQ)のところで数え間違いをしたのでしょう。本来ここで3Aを跳ぶときにはコンビネーションジャンプを計画していたのではないかと思いますが、2回跳ぶことが出来ずにジャンプシークエンスとなってしまった。そのためザヤックルールのカウントの回数に入れ忘れてしまった(自分としては連続ジャンプをしていないため、感覚的に除外してしまった)のではないかと思われます。
結果的にプログラムに「組み合わせたジャンプ」を計4回入れたと判断されてしまいました(図の青い傍線で表示)。そして本人はコーチに指摘されるまでミスをしたことに気付かなかったのです。
まあ、もし3A-SEQが単発と判定されたとしても、同じ種類のジャンプを2回跳ぶ場合はどちらか一つをコンビネーションかシークエンスにする必要があるので、3A1回分の点数は失っていたわけですが・・・。

そのため、大きな得点源であったはずの3連続ジャンプ(しかも演技後半なので基礎点から更に1.1倍の得点となるはずだった)が丸々0点になってしまったのでした。
こうやって書けば書くほど悔やまれます・・・。

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最初の4回転トウループで転倒したためとっさに演技要素を自分で組み替えたということなのですが、それは今のルールに照らせばあまりやってはいけないことだと私は思います。
今は昔と違いルールが厳密になっているので演技要素を変えるのは非常に危険なことです。スピンでも同じようなルールがあり、全く同じスピンを2度やってしまうと最後のスピンが自動的に0点になる、など、切羽詰まった状況であれこれやると、今回のように落とし穴にはまる危険が大きいのです。大きな得点となるコンビネーションジャンプや高難度ジャンプで失敗をしても、演技要素を変えない選手が殆どなのはそのせいです。
今回のようにジャッジと本人で「失敗」の度合いや演技要素の採用の仕方の見解に差があった場合、このような悲劇は起こります。そしてそれは決して珍しいことではないからです。
そして織田選手は、以前にも何度も同じようなケースで同じようなことをやり、同じような失敗をして順位や勝利を逃しています。特に2005年の全日本選手権ではザヤック・ルール違反が原因で優勝を逃し、結果としてトリノ五輪出場権を失っているのです。

以前、同様のケースで負けたときもバーケルコーチに「数の数え方を勉強しなさい」と言われたという織田選手でしたが、今回もその教訓が生かされなかったことが残念です。
もし本当に演技要素を組み替えるということをやりたいなら、日ごろの練習からこうなったらこうする、という演技要素のパターンを数種類あらかじめ決めておき、どんな失敗をしても落ち着いて方針転換が出来るように策を練っておくべきです。

今後の彼のキャリアにおいて、高橋大輔選手を下して優勝する、という経験と実績は非常に重要なものになるはずでした。そしていつ引退を口走ってもおかしくない高橋選手に勝つチャンスはもうそれほど多く残ってはいません。
織田選手は殆ど勝利をつかみかけていました。しかし勝てるはずの試合で以前もやった過ちを繰り返した結果、勝利を失ったというのは非常に残念です。
ですがこれは彼自身の行動の結果なので、残念ではありますが、同情はしません。
冷たいことを言うようですが、未だにこのようなことを繰り返しているようでは、世界トップに立つのはかなり難しいでしょう。彼自身のスケーターとしての能力はトップを充分狙えるものを持っているだけに、非常に歯がゆい思いです。


Nobunari Oda 2010 Skate America FS -Piano Concerto



アーミン・マーバヌーサデー選手がシニアグランプリシリーズ初の表彰台、地元で銅メダルに輝きました!!本当におめでとうございます!!!
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素晴らしい演技でした!!
終盤のコンビネーションの最初のルッツが1回転になってしまったのはありましたが、他は落ち着いて全てのエレメンツをしっかり決めました。最後までスピードも落ちることなく、体も十分に使えていましたし、最後まで動きにキレがありました。本人も演技終了後、「信じられない!」という達成感溢れる、すごくいい表情をしていました。
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ちょっとボケてるけど・・・。


得点詳細を見ましたが、彼はルッツでもフリップでもエッジエラーをとられていませんでした。ジャンプの判定が厳格化された今、これは彼にとって非常に大きな武器になるでしょう。
また、コーチは以前ジョニー・ウィアー選手を教えていたプリシラ・ヒルさんなのですね。だからちょっとジャンプの着氷の姿勢がジョニーを彷彿とさせる美しさなのでしょうか・・・。
それにしても、こういう経験を一度でもすると、きっと次は大きな自信を付けて更に選手として伸びていきますよね。これからが本当に楽しみです。
そして彼の滑りは本当に滑らかで、演技スタイルもすごく好きになりました。ちょっと本気で応援していきたいと思います(笑)。


Armin Mahbanoozadeh 2010 Skate America FS -Avatar

演技終了後、動画では5:18秒あたりからの彼のうれしそうな表情!
それにしても、リッポンくんといい彼といい、そして羽生君やテン君といい、最近は男子のドーナツスピンは珍しくなくなってきましたね・・・。高い柔軟性を誇る若い男子選手が増えました。
ですがこれから体がより男性的になってくると思うので、怪我には気を付けてほしいですね。

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アダム・リッポン選手は4位です。ジャンプミスが痛かったですね・・・。
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なんか彼は今大会元気がありませんでしたね。彼の今季のフリーを初めてジャパンオープンで見たときには素晴らしく完成されていて驚きとともに魅了されたものでした。
しかしそれと同時に「今の時期でこんなに出来上がってて大丈夫なのか。早すぎないか」という心配もちょっと頭をもたげたのですが、なんか一旦ピークがジャパンオープンに来てしまったんでしょうかね・・・。
でも、調子が悪くてもきっちり4位に踏みとどまったのは素晴らしかったです。お客さんも手拍子をしてくれたりして、地元の温かさがありましたね。
直前にアーミン君が自身最高の演技といっていいような素晴らしい演技をしたので、それに影響された部分もあったのかもしれません。

彼はニコライ・モロゾフの元を離れて今はキムヨナ選手が師事していたブライアン・オーサーコーチについていますが、彼の滑りがちょっとキムヨナ選手に似てきているように感じるのが気になっています。ジャンプの前にものすごく「漕ぐ」(スピードを付けるために加速をつける)のが他選手より目に付くのです。
本当にスケーティングの巧い選手なら、そんなにガシガシ漕がなくてもひと蹴りですごく伸びるというか、無理なく滑っていくものです。小塚崇彦選手やジェフリー・バトルさんの滑りを見るとよくわかりますが、ジャンプへの加速に無理がありません。他の選手も勿論ジャンプ前は加速をしますが、もっと振り付けに溶け込んだ形だったり、それほどストロークが目に付かない気がするんです。
ですがリッポン選手の演技では、素晴らしい滑りと柔軟性のある美しい身体能力を見せつける振り付けの合間に、突然無粋にせわしなくガシガシと漕ぐ部分が入ってしまい、ちょっと興ざめする部分が目に付き始めています。
キムヨナ選手もジャンプそのものは「スピードと幅があって素晴らしい」などと言われていましたが、彼女はジャンプ前に他選手に比べてつなぎの部分が薄く、その時間を使ってびっくりするくらい漕ぐのはファンの間では有名でした(回数を数えた奇特な方もいらっしゃいましたが、他選手と比べて群を抜いて漕ぐ回数は多かった)。それはあまり質の高い滑りには見えませんし、せっかくの雰囲気を壊してしまいます。
彼の「漕ぎ」が目に付くようになったのはオーサーコーチの指導の結果なのか、それとも私の見方が変わったのかは不明ですが、リッポン選手の繊細で美しい世界がこれ以上浸食されないのを祈るばかりです。


Adam Rippon 2010 Skate America FS -Piano Concerto No. 2



村上大介選手は落ち着いて演技をまとめあげ、5位入賞です!
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すごく落ち着いて滑ってるな、という印象がありました。すべてのジャンプを丁寧に跳び、他の演技要素や振り付けもしっかりと体全体を使って行っていました。トリプルループで両手をついてしまい転倒扱いの-1点は受けましたが、それ以外はきちんと演じ切りました。
彼は今季このまま順調に試合をしていければ、ものすごい自信を付けるのではないでしょうか。来季あたり、大爆発してくれそうな予感がします。
いや~アメリカ男子も若手の台頭が目覚ましいですが、日本男子も五輪以降、今まであまり名前が出てこなかった選手や若い選手もぐんぐん伸びてきているのがわかってうれしいです。
おつかれさまでした!!


Daisuke Murakami 2010 Skate America FS -Lawrence of Arabia



アドリアン・シュルタイス選手(以下ADSL)は7位。

SPでルトコフコーチがキス&クライにいなかったので心配していました。フリーでは姿を見せていましたが、ちょっと痩せて顔色もよくないのが心配です。アメリカに入る前から体調が悪かったのか、アメリカ入りしてからなのかというのも気になります。

4回転はあっけないくらい、素晴らしく美しく決まりましたね。GOE(出来栄え)の加点も1点もついています。
ですが、スピンが今回SPとフリーどちらも良くありませんでしたね。ドーナツスピン、もしくはキャッチフット的なものはADSLの柔軟性だとかなり難しいのではないでしょうか。ポジションを取ったとたんにスピードがガクンと落ちてしまいますし軸もブレてしまう。ちょっと手を放すタイミングも早すぎました。
でも、やり続けていればいつかはちゃんとしたポジションをとれるかもしれないですね。でも彼はもう20代ですし、腰や背中を痛めないように気を付けてほしいです。
彼は昨年もスケートアメリカに出場していますが、去年の物議を醸したフリーはアメリカ人にはにわかに受け入れがたかったようで(アメリカ人って自由ってイメージありますけど、結構保守的だったり柔軟性がない時ありますよね)、会場はドン引きでした。
「全米が引いた」と言わしめたあの演技をした彼と、この繊細で狂気をはらんだ彼とを結び付けられた人って会場にいたんでしょうかね?でも北米のファンってコアな人が多いですから、沢山いたかもしれませんね。

ルトコフコーチが一日も早く健康を取り戻しますように、心から祈っています。


Adrian Schulthiss 2010 Skate America FS -Romeo and Juliet



こうやって書いていると、全員書いてしまいそうになります(笑)
あとケヴィン・ヴァンデルペレン選手(以下KVDP)も4回転に成功したことと(おめでとう!彼もずっと4回転に挑戦し続けていますよね)、デニス・テン選手がずっと調子を崩していることも気になっています。何か怪我などでないといいのですが。
彼もひょっとして真央選手のようにジャンプを矯正中なんでしょうか?最近コーチが変わったので、彼も今新しいキャロルコーチとの足並みをそろえている最中なのかもしれません。見守りたいと思います。

女子の結果がまだ出ないようなので、女子は別記事に書きます。
選手のみなさま、お疲れさまでした。


<参考リンク>
JLogos


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by toramomo0926 | 2010-11-14 20:04 | フィギュアスケート


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