安藤美姫選手、GPS2勝を飾る -ロシア杯・男女FS
b0038294_1740337.jpg
グランプリシリーズ(GPS)5戦目のロシア杯が終了。
男子はチェコのトマシュ・ヴェルネル選手が、女子は安藤美姫選手がどちらも逆転で優勝!鈴木明子選手も2位に入り、日本女子は二人ともグランプリファイナル出場を決めました。
おめでとうございます!


ISU Grand Prix 2010 Rostelecom Cup
順位と得点詳細。
「Result」でそれぞれの種目の総合順位と総合得点が、
「Entries/Result Details」ではショートプログラム(SP)とフリーそれぞれの得点詳細が、
「Judges Score」ではSP/フリーで各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。





男子優勝はトマシュ・ヴェルネル選手。彼の優勝は久しぶりですね。本当にうれしいです。
b0038294_6131640.jpg

2つのアクセルでちょっとしたミスはありましたが、回転不足はなし。エッジエラーを取られたりはあったにせよ、久し振りに彼の転倒のない、クリーンといえる演技を見た気がしました。やっぱり彼の滑りはいいですね。
4回転を入れてないのは気になりますが、ここのところ4回転を跳んでも他のジャンプが崩れて順位を落としていたので、とりあえずプログラムを滑り切る成功経験というのを積んで自信を取り戻してからおいおい入れていってくれればと思ってます。彼の以前の発言からして4回転を捨てることはないと信じているので、彼が挑戦してくれるのを楽しみに待ちたいと思います。

今季のフリーは「マイケル・ジャクソン・メドレー」です。これはフローラン・アモディオ選手と一緒ですね。こういう曲が同じ年にかぶるというのも珍しいです。
ですが、アモディオ選手は若さあふれる「踊る」要素の強い演技だったのに対し、ヴェルネル選手の演技は「滑り」を前面に押し出したものでしたね。彼もシニアデビューの頃はハジけた演技も見せていましたが(『勇名トラ』の衣装が懐かしい・・・)なんか彼も大人になったんだなあと感慨しきりでした。
b0038294_6251173.jpg
この時はいろんな意味で衝撃だったなあ(笑)


Tomas Verner 2010 Rostelecom Cup FS -Michael Jackson Medley



パトリック・チャン選手は2位となりました。
b0038294_6274214.jpg

それにしても、この人は何をやっても表彰台落ちはない、というISUの意志表示を見たような気もしますね。
3回転倒して、コンビネーションジャンプを跳びすぎてジャンプ一つ分が0点になっても、まだ2位ですか・・・。
これは昨季までのキムヨナ選手とあまり変わらない状況になりつつありますね。ISUかカナダの意向かは知りませんが、彼を次のトップスターにするんだ、という強い意志を感じます。さきのスケートカナダでチャン選手は「ジャッジは僕に期待している」と発言して物議をかもし批判もありましたが、現実的には彼は正しいことを言っているのかもしれません。

はっきり言って、彼の演技は2位に値するような滑りではありませんでした。
彼の良いときの演技と比べてずっと悪かったし、後半は明らかに疲れきっていてステップも体が動いていなかった。ジャンプで3回転倒し、降りたジャンプも着氷が危ういものが多かった。観客からも落胆のため息が漏れていました。

そして何より、彼の演技は平坦でした。
「オペラ座の怪人」という素晴らしくドラマチックで美しい音楽を使用していながら、全く音楽との一体感がない。ただ振りつけられた通りに滑っているだけという印象しかなく、いくら技術があってもこちらの胸を打つものが全くありませんでした。
曲が盛り上がろうが静かなパートだろうが、彼は全く音楽を聞いていないような気すらします。彼の耳と頭にはメトロノームの規則的な音だけが響いていて、ただ教えられた通りに、振付のリズムの通りに身体を動かすだけ、という風にしか見えません。
そこへ持ってきてジャッジの偏愛とも言える毎回の高得点を見せられ続けているので、私は彼の滑りが大好きだったのだけれど、だんだん見る楽しみが失せてきています。見ていてもつまらないんですもん。

もし彼の滑りをあそこまで高く評価するなら、同じようにスケーティングの素晴らしさに高い評価を得ている小塚崇彦選手にも同じようにアドバンテージを与えてほしいと思います。本来ならバンクーバー五輪でも、小塚選手はもっと高い順位でもよかったはずだと考えている方は多いのではないでしょうか。
同じ部分で高い評価を得ている選手が二人いるのに、一人には何があっても得点にあまり影響はなく、もう一人にはそうでないというブレが、ジャッジや採点への不満や不信を与えていることをISUは問題視すべきだと思います。しかし彼らはそれも承知の上で、何か別の目的があってこのような不公平な採点をやっているようですので、どこかで不正が明らかになったりしない限りやめることはないでしょうね。
しかし日本以外の国、特にアメリカでは、有望な若手が育っているにも拘らずフィギュアスケート人気は明らかに衰退しています。
これは不公平な採点にフラストレーションがたまるという原因も決して小さくないと思うのです。日本は今かつてないほどにフィギュアスケート人気は隆盛していますが、現在第一線で戦っている選手が全員競技を引退したら、よほどの逸材が出てこない限りファンは引退してプロになった選手たちが出演するアイスショーに流れてしまい、競技の方は人気的、興業的に暗黒時代に入るのではないかという予感もあります。
私は今までここで「ISUはフィギュアを衰退させたいのか、滅ぼしたいのか」と何度か訴えてきましたが、本当に目先の利益しか追い求めていないのかもしれません。

お願いだからISUが自ら選手のファンを減らすようなマネはもう辞めてほしいと思います。


Patrick Chan 2010 Rostelecom Cup FS -Phamtom of the Opera



3位にジェレミー・アボット選手が入りました。やはりこの3名は固かったですね。
b0038294_659989.jpg

それにしても、彼は元気がないように見えましたね。そして客席がすごい静かなのはどうしたことでしょう?誰もいないかのように静まり返って、手拍子も拍手も演技中に起こることはありませんでした。これは彼は演じていて辛かったと思います。完全アウェイでした。
今大会佐藤有香さんが同行していないようですが、どうしたんでしょうね?体調を崩されていないといいのですが。


Jeremy Abbott 2010 Rostelecom Cup FS -La Vita e Bella

せっかくの小粋な振付があまり生きていませんでしたね。彼はハマると本当に素晴らしい「作品」を演じることのできる選手だと思うので、次回に期待です!


羽生結弦選手はジャンプの跳びすぎなどが影響し、総合7位でした。
b0038294_726869.jpg

ザヤック・ルール違反は残念でしたね・・・。4回転トウループも3回転になってしまいましたし、彼自身順位を上げようとして焦りが出た、というような報道がありましたが、一方で「次の糧になると思う。経験できて良かった」「全日本ではこんな演技はしない。いろいろ課題はあるけれど、全部クリアしてみせます」と話していたということなので、しっかり身体と心を立て直して来ると思います。頭の良い彼の事ですから、心配はしていません。だってまだ2戦目ですし、このメンバーで表彰台に乗るのはかなり厳しい状況でもありましたし。
腰痛のケアをしっかりして、全日本での素晴らしい演技(ファイナルはもう難しいのかな・・・)を期待しています。


Yuzuru Hanyu 2010 Rostelecom Cup FS -Zigeunerweisen

彼のジャンプの着氷は素晴らしく美しいですね!見ていてうっとりします。
織田信成選手もとても着氷が柔らかく美しい選手ですが、彼とはまた少し違いますよね。よりバレエに近いような感じ。
これからの活躍が本当に楽しみな選手です。


町田樹選手は11位。
b0038294_21505855.jpg

どんな時でも4回転を一貫して入れてくる姿勢は素晴らしいです。順位的には良くはなかったけれど、私は彼の滑りは好きです。ジャンプも体が斜めにならず、体の軸が氷と垂直に跳ぶのも美しいと思います。
次に彼を見るのはきっと全日本ですね。それまでの約ひと月はこの2試合で見つけた課題などとじっくり向き合う期間になるでしょう。全日本ではもっともっと良い演技が見られるように期待したいです。
でも、私は本当に彼の今季SPが好きです。


Tatsuki Machida 2010 Rostelecom Cup FS -Legends of the Fall



女子は安藤美姫選手が腰の怪我を乗り越えての逆転優勝を飾り、文句なしでグランプリファイナルへの出場を決めました!
b0038294_2138695.jpg
背中のテーピングが痛々しかったですね。でも最初の3-3を3-2にしましたが、他は全ての要素で減点ゼロの素晴らしい演技。
この突然のアクシデントの精神的ショックと痛みを乗り越えた上での優勝というのは、彼女にとって大きな財産になることでしょう。演技はベストではなかったかもしれませんが、長い目で見ると、彼女にとって非常に大事な試合になるのではないかと思います。
お疲れ様でした。ファイナルまでに少しでも怪我が回復しますように。
b0038294_21565563.jpg

また、ファイナルからはSPの曲を変更するという記事を読みましたが、本当でしょうか?
本人的に「良い時と悪い時の差が大きい」とのことですが、衣装も曲も彼女にすごく合っている気がするので、2試合で早々に諦めてしまうのはもったいないような気がしますが・・・。


Miki Ando 2010 Rostelecom Cup FS -Piano Concerto in a minor

今季のフリーは、織田信成選手と同じ曲ですね。


2位は鈴木明子選手。中国杯に続いてのワンツーフィニッシュです!
b0038294_2275378.jpg

うーん、中盤のミスが惜しかったです!
今季どうしてもフリーで中盤のルッツなどが1回転に抜けてしまったりするミスがありますね。フリーは時間が長いので体力的にも負担が大きいですし精神的に集中を保つのはとても難しいのだろうと思いますが(だからこそ転倒する選手がSPよりもずっと多くなりますよね)、せっかくSPで取った順位を手放してしまうのを見るのは切ないです。
もちろんそういう悔しさは彼女が一番骨身にしみていると思いますのでファイナルまでにはしっかり滑り込み、調整してくるでしょう。ファイナルでもあっこちゃんと安藤選手が金メダル争いをするのを楽しみにしたいと思います。


Akiko Suzuki 2010 Rostelecom Cup FS -Fiddler on the Roof



3位にはアシュリー・ワグナー選手が入りました。
今大会は表彰台のメンツは先輩がしっかりプライドを守ったというか、やっぱり順当な人間が台に乗ったな、という感じですね。
b0038294_2215859.jpg

彼女の滑りはいつ見ても気持ちいいです。女性らしく優雅な身のこなしだけれど、スパッとした切れ味のよさもある。そしてジャンプの回転が速く回転軸が細いので、見ていて痛快というか爽快です。
終盤のフリップでの転倒が本当に惜しかった!彼女も一度フリーでノーミス演技をするとまたぐっと自信がついて成長するのではないかと思うのですが、やっぱりフリーを転倒せずに滑り切るというのは非常に難しいんですね。
でも演技終了後にあんなに晴れやかに笑うアシュリーを見るのは久しぶりなようにも感じたので、よかったと思いました。
彼女もこれからもずっと見守っていきたい選手の一人です。すごく性格の良いスケーターなので、なんか応援したくなってしまうんですよね。


Ashley Wagner 2010 Rostelecom Cup FS -Malaguena



若手として参戦しているアメリカのザワツキー選手やロシアのビリュコワ選手、マカロワ選手などはフリーで転倒やミスなどがあり、表彰台を逃してしまいました。
b0038294_22275941.jpg
やはりシニア女子フリーを滑って上位に食い込む、というのは一筋縄ではいきません。しかも今大会は昨季までも同じように表彰台を争っていたトップ選手が3人も出ていたのですから。他の大会ならもしかしたら台乗りもできたかもしれませんが、今回はメンツという高い壁がありました。
でも今季シニアデビューした選手たちは、良かった選手も悪かった選手も、これで評価が決まるわけではありません。
今やっとスタートラインに並んだところで、今後継続してファンに認められる良い演技、良い成績を残し続けることが重要です。今季デビューの選手たちは全員高いポテンシャルを持っているので、これからソチまでまた激しい戦いが見られそうですね。
「シニア初参戦で表彰台!」というような派手さはなかったけれど、すごく可能性のある選手たちをたくさん見ることが出来た大会でもありました。
そして先輩スケーター方がきっちりプライドを見せ、シニアの厳しさをを教えられたという意味では、とても健全な形で行われた大会だったと思います。ただ、チャン選手の得点と順位はやっぱり腑に落ちないものがあります。彼は何をやってもOKなように見えるので。

ともあれ、選手のみなさま、おつかれさまでした!!

*ところで、表彰式の写真って最近何故全くといっていいほど出てこないのでしょう?
試合なのに表彰台の写真をどの新聞会社も、そしてネットニュースも全く報道に上げないというのは何だか不自然に思いますし、選手にはすごく失礼なことだと思うんですが・・・。
記事トップの安藤選手の写真も23日になってやっと見つけ出せたもので、男子・女子ともに3人並んだ写真は未だ見つかっていません。これってやっぱりおかしいですよ。


さて、いよいよ今週末はGPS最終戦のフランス杯が行われ、浅田真央選手が久しぶりに試合に出場します。
NHK杯の後ずっと地道に練習を重ねてきたと思われますが、どの程度新しいジャンプが身についているか、自信を持って跳べるようになっているか(またはなっていないか)をじっくり見守りたいと思います。
良かったら勿論喜びますが、悪くても必要以上にショックを受けないようにすることが大事です。彼女はゴール地点を最初から今季にはおいておらず、2~3年後を目安につくりあげようとしているのですから。
でも、欲を言えばエキシビジョンに出られる順位だといいなと思っています。芸術に造詣の深いフランスの方々に、真央選手のエキシビジョン「バラード1番」をどうしても見てもらいたい、という気持ちがあるので・・・。


Mao Asada 2010 NHK Trophy EX Ballade No.1 in G minor, op.23


でも、ぜいたくは言いません。真央選手が少しでも納得のいく、満足できるところがある試合になればと祈っています。
兄妹弟子の小塚崇彦選手も一緒だし、もちろん信夫先生もそばについている。心強いメンツで是非強い気持ちでフランスに乗り込んでほしいと思います。


<関連コラム>
ロシア杯・女子SP  2010年11月20日
ロシア杯・男子SP
浅田真央選手動画 “Ordinary Miracle”  2010年11月16日
「先入観」への危惧 -パトリック・チャン選手優勝:スケートカナダ・男子シングル  2010年10月31日
キムヨナ選手、グランプリシリーズ欠場を発表  2010年7月19日
キムヨナ選手、現役続行の意向  2010年5月31日
フィギュアスケートのルール改定とジャッジの質について考える  2010年5月7日
浅田真央選手、2度目の世界女王に -2010世界選手権(追記あり:2010年3月28日)  
女子シングルは波乱の幕開け-2010世界選手権  2010年3月27日
浅田真央選手銀メダル獲得、日本選手全員入賞おめでとう!-バンクーバー五輪  2010年2月26日
キャンデロロ、女子SP結果に吠える「真央の方が難しい技をしているのに、どうしてこうなるのか?」 2010年2月25日
エルヴィス・ストイコ氏、4回転論争に吠える  2010年2月22日
男子シングル終了・4回転論争は続く-バンクーバー五輪  2010年2月19日
キムヨナ選手の「世界最高得点」の意味を考える 2009年10月20日
「競技」としてのフィギュアは死んだのか 2009年10月18日
by toramomo0926 | 2010-11-22 06:13 | フィギュアスケート


<< 「自由」を求めて -浅田舞選手... ロシア杯・女子SP >>