グランプリファイナル終了 -女子シングル
b0038294_1221059.jpg
女子はショートプログラム(SP)とフリーの総評になってしまいますが、グランプリファイナルについて書きます。
女子は1位から6位まで、SPとフリーで順位が全く変わらないという珍しい結果になりました。
優勝はアリッサ・シズニー選手!2位にカロリーナ・コストナー選手。日本女子は初出場の村上佳菜子選手が3位に入り、鈴木明子選手が4位、安藤選手が5位。6位がレイチェル・フラット選手でした。

ISU 2010 Grand Prix Final
順位と得点詳細。
「Result」でそれぞれの種目の総合順位と総合得点が、
「Entries/Result Details」ではショートプログラム(SP)とフリーそれぞれの得点詳細が、
「Judges Score」ではSP/フリーで各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。
例年ジュニアのグランプリファイナルも同時開催されるので、今回はジュニアの成績も同時に見ることが出来ます。



アリッサ・シズニー選手がミスを最小限に抑えた素晴らしい滑りを見せて見事優勝です!!
b0038294_23134892.jpg

フランス杯ではちょっと元気がないというか精彩なく見えた彼女でしたが、ファイナルというチャンスをしっかりものにしましたね。初優勝おめでとうございます。
一時期潜伏期ともいえる時期を過ごしたとは思えない復活ぶりです。素晴らしいですね。SPから滑りも美しかったし、特にスピンとスパイラルはハッとするような美しさがありました。
今大会のフリーは安藤選手からずっと素晴らしい演技が続き、その中でSP1位の最終滑走というプレッシャーは大変なものだったと思いますが、見事冷静さを失わず、美しく滑り切りました。
コーチを務める佐藤有香さんは今回同行していないようですが、きっと喜んでいると思います。
全米選手権も優勝したし、ファイナルもとった。着実にキャリアを積み重ねていますが、若い時に一度成績が落ちてから、またここまで立て直すには、あの太陽のような笑顔の裏で血の滲むような、想像を絶する努力をしてきたんだと思います。心からおめでとうございますと言いたいです。
アリッサおめでとう!!全米選手権も頑張ってー!

b0038294_23343183.jpg


Alissa Czisny 2010 Grand Prix Final FS -Selections from Winter and Spring


b0038294_816071.jpg



2位にはカロリーナ・コストナー選手!
b0038294_23352674.jpg

カロリーナがSPとフリーをここまでまとめあげたことが私はうれしいです(涙)SPは素晴らしくてもフリーで自爆、というパターンを幾度となく見てきて「ああ、もったいない・・・」と思っていたことが多かったので、今季の安定した活躍はうれしい限り。
それにしても3位の村上佳菜子選手とは0.01点差というこれ以上ない薄氷の2位!ちょっと見ててびっくりでした。
長い手足はいつ見ても氷に映えますね。
b0038294_811386.jpg
ただ、彼女のプログラムにはフリップやルッツという高難度ジャンプがないのが難点ですね。美しいスケーティングなどの強みがあるので演技構成点がいつも高いんです。彼女もだいぶPCSで救済されている感はありますね。今後頑張ってルッツかフリップ、どちらか一つでも試合で入れてきてもらえるとなおうれしいところ。
でも今回は、最近あまり良いシーズンを過ごせていなかったカロリーナの復活を喜びたいと思います。本当におめでとうございます!!


Carolina Kostner 2010 Grand Prix Final SP -Galicia Flamenco

シズニー選手もだけど、コストナー選手の衣装のセンスが私はすごく好きです。
シズニー選手は衣装だけを見ても「きれいだな、素敵だな」と思えるものだけど、コストナー選手の衣装は、恐らく衣装だけを見たら、「どうかな?」と思ってしまうものだと思うんです。着たらどうなるかが想像しにくいというか、良くなるかあまり良くないかが見ただけでは読めない。
でも、コストナー選手が着るとピタッとはまるんですよね。自分に似合うものをよく知っているんでしょうね。イタリアの有名デザイナー、ロベルト・カヴァリの手になるというのも大きいと思いますが、さすがイタリア娘というものを毎回見せてくれる、おしゃれ上級者です。

b0038294_8112334.jpg




3位に初出場の村上佳菜子選手です!
b0038294_23523898.jpg

SPでリンクに出てきたときには顔がこわばっていていつもの笑顔がなく、大丈夫かと心配しましたがしっかりと滑り切りました。フリーではフリップが抜けるミスがありましたが落ち着いて2度目のフリップでコンビネーションをつけるなどミスを最小限にし見事にリカバリー、新人と思えない落ち着きをみせて見事表彰台乗りを果たしました。おめでとうございます!

ですが私は彼女の点は、ちょっと高いなと感じています。SPにしてもPCSにおいて鈴木明子選手を上回るというのはちょっと腑に落ちませんし、全体的に思ったより高い点がついているように思います。エッジエラーは山田門下生の例にもれずばっちり取られていますが。
まあさきのコストナー選手やフィンランドの選手のように、難易度が低めの技(彼女の3トウループ-3トウループのコンビネーションは、3-3のコンビネーションの中では一番難易度と基礎点が低いものです)をきっちり決めることでGOEなどを多めにもらっているという点はありますね。
ですがあまり初年から盛ってしまうことは彼女の為にならない気がします。

今季初戦のNHK杯で表彰台乗りしたことと、浅田真央選手がマスコミが期待したような成績を残していないこともあり、次の一押しアイドルとして村上選手に一気に注目が集まった感があります。
テレビ朝日は完全に村上選手をメインに押し出して、まるで彼女のマネージメント会社のように強力に売り出していますが、マスコミは永遠に持ち上げてくれるということは殆どありません。持ち上げて、落としたりする。持ち上げたほうが落とす時の価値が上がるからです。
今回も(グランプリシリーズの成績が良かったので期待する気持ちは分かりますが)「ファイナル初出場初優勝なるか?」という煽り報道は凄いものがありました。
しかし彼女の持ち技の難易度や、滑り自体もまだ技術的にも表現的にも洗練されておらずジュニアっぽさが抜けないことを考えると、普通に採点されれば優勝は他選手が総崩れにならない限り、かなり難しいといっていいものでした。
b0038294_052276.jpg
グランプリシリーズの成績にしても、昨季までトップグループの牙城として強力にそびえていたキムヨナ選手、ジョアニー・ロシェット選手、ラウラ・レピスト選手が揃って出場しておらず、浅田真央選手はジャンプ修正中という世界トップが4人不在状態となった中で残したものです。優勝や表彰台の価値は変わりませんが、シニアデビューする選手にとってインパクトのある実績を残すにはかなり有利な状況であったことは否定できません。

今回彼女は3位となりましたが、来年ロシェット選手やレピスト選手が競技に復帰し、真央選手が本格的にジャンプが戻った時に、そして今回同時開催されたジュニアグランプリファイナルで上位を占めたロシア勢や、4位となった庄司理紗選手が近い将来シニアに上がってきたときに戦える力を今から備えておく必要があります。体型の変化が始まるのも来年あたりからになるので、そのあたりの微妙な対応も必要です。
村上選手ももちろんそのつもりでいるでしょうが、来季から継続して成績を残せるかが本当にシニアトップに残っていけるかの分かれ道になるわけで、今年の成績だけでは大変失礼ながら「追い風参考記録」となるか「その後の活躍の片鱗をのぞかせた年」となるかはまだ未知数の状態です。
キミー・マイズナー選手やエミリー・ヒューズ選手など、学業との両立など他の理由もあったかもしれませんが、身体の成長や後輩選手の台頭にうまくアジャストできずに一線を退いた選手は大勢います。シズニー選手のように再び第一線に復活してくるのは本当に稀なケースです。
キミーなどは全米選手権や世界選手権で優勝しているにも拘わらず、その後長く活躍することはできませんでした。
そのくらいシニアで戦っていくこと、トップグループでい続けることは難しいのです。日本選手がこのところ継続して活躍し続けているのは人種的に太りにくいということもあるでしょうが、かなり珍しいといっていいのではないでしょうか。

それなのに、アイドル探し、番組の目玉探しの為に過剰に持ち上げられてしまうと、来年以降の視聴者(=国民)の期待度が必要以上に上がってしまい、村上選手に課せられるハードルを無理に上げてしまう危険性が大きい。
そしてもしその期待に佳菜子選手がついていけなかった場合、もしくはシニア2年目としては充分すぎる成績を残したとしても、元の期待値が高すぎたために落胆が大きくなったとしたら(今回のように『優勝か?』と散々事前に騒がれて3位でした、という状況が続いたりしたら)、マスコミが叩きはじめるような気がして怖いのです。
今の真央選手のように、事情も良く調べず、または知っていても敢えて書かず、「1年目より落ちた」「デビューの年が一番良かった」という印象を与える記事を書くことは充分あり得ます。
「笑顔がいいね」と持ち上げながら、その笑顔を全力で奪いに来るのもマスコミだからです。

その逆風に耐えるのには想像を絶する精神力が必要になり、ミドルティーンの女の子には過酷すぎるものです。かつて安藤美姫選手がその煽りをもろに受け、完全に立ち直ったと思えるようになったのはここ数年です。真央選手はキムヨナ選手がシニアデビューした頃から何年もその状況に耐え続けながら競技を続けていますが、あれほどに忍耐強く対処している彼女ですら一度練習を投げ出そうとするほどの傷を負いました。
佳菜子ちゃんにはこのような思いをして欲しくないし、マスコミにも選手を使い捨てにするようなことをして欲しくないと思います。彼女にはしっかり足元を見て、着実に歩んで行ってほしい。近くに真央選手という良いお手本もありますし、良い悪いにかかわらず、あまり周囲の評価に振り回されないでほしいと思っています。


Kanako Murakami 2010 Grand Prix Final FS -The Mask of Zorro




4位に鈴木明子選手!
b0038294_0404554.jpg

彼女の得点には、正直不満が残りました。なんか彼女は素晴らしい演技をしても点が伸びませんね・・・。
荒川静香さんも、SPのステップが要素不足があったということでレベル1になったことについて「すごく体もよく動いていると思ったので、信じられない」と話していました。ここ数年、「ISUは点を比較的多めに出す選手と出さない選手をあらかじめ決めているんじゃないか」という考えが頭をよぎる時があります。

明子選手は昨季よりも筋肉質になったように見えました。オフの間もきっちりとトレーニングをし、プログラム作りに精進してきたのでしょう。昨季より体の切れがより鋭敏になり、キメという時の身のこなしの鋭さはハッとさせられる時があります。動きの緩急がよりドラマチックに見えるんですよね。これはしっかり筋肉がついている証だと思います。
それなのに、見た目よりも点が出ないのを見るのは本当に切ない。そして明子選手の謙虚なコメントを聞くともっと切なくなります。
お願いですから、やった分の評価だけはちゃんと公平にしてもらえませんか、公平にしているというのなら、見た目と評価の乖離をなくすようにしてもらえませんか、とISUに泣きつきたいような気持になりました。

明子選手、あなたの演技は本当に素晴らしかったです。客席からもスタンディングオベーションが起きていましたね。
自分の努力と、その演技に誇りをもって胸を張って帰ってきてください。本当にお疲れさまでした。


Akiko Suzuki 2010 Grand Prix Final FS -Fiddler on the Roof

最初SPを貼り付けていましたが、ミスはあったけれどフリーの演技中の笑顔が本当に自然で美しかったのでフリーに差し替えました。最後までキレのある素晴らしい演技。私は今季一番だと思いました。

b0038294_0505049.jpg



5位に安藤美姫選手!フリーは本当に素晴らしかった!
b0038294_0512052.jpg

SPの曲を今大会から変更。硬質でかっこいい系のプログラムから、全く逆のしっとりした優美なプログラムにして臨みました。
私はこれまでのSPも衣装を含めてすごく安藤選手に合っていると思っていて大好きだったので、このニュースはかなり残念でした。でも安藤選手本人がやりにくさを感じているのなら、しかたないと思いました。
ただ、ファイナルでいきなりぶっつけというのも大丈夫か・・?と思ったのですが、ミスが出てしまったのが残念でした。
ですが本人的には手ごたえがあったようで、変えたことに後悔は全くなさそうだったので安心しました。これで全日本はどちらになるのだろう?とちょっと考えたりしたのですが、ああ、これなら全日本も新しいもので来るなと。
これが佐藤信夫コーチの言う「失敗に見えるものでも、自分たちが見るとそうでないものがある」ということなんでしょうね、きっと。
安藤選手がやりやすい形で、全日本で是非新SPの完成版を見せてほしいと思います。
b0038294_056068.jpg
フリーは本当に素晴らしかったと思います。本当に安定感がありますね。後半に固めた5回のジャンプも女子としてはかなり体力的に厳しい構成となっていますが、彼女は危なげなくこなしました。そして今季は最後まで疲れた様子を見せませんね。素晴らしいです。

フリーだけの順位では1位、120点台に乗せたのは彼女だけでした。本当に素晴らしい演技でした。
総合順位は5位でしたが、もっともっと価値のある演技、試合ぶりだったと思います。お疲れさまでした。
b0038294_13615.jpg
演技終了直後のガッツポーズが印象的でした。


Miki Ando 2010 Grand Prix Final FS -Piano Concerto in a minor



驚きの6位、レイチェル・フラット選手。
b0038294_1161545.jpg

彼女はジャンプが完全にタイミングが狂ってしまっていましたね。SPでの技術点(TES)が20点行かなかった時には驚きました。
彼女もなかなか点を出してもらえないタイプの選手ですが、それでも演技自体は大崩れしないというイメージはある選手なので、今大会の彼女はショッキングでした。総合得点は5位の安藤選手と50点近い差がついているんです。彼女自身もかなりショックを受けたのではないかと思われ、心配です。
ジャンプの調子を落としていたところにSPで他選手よりもかなり低い点数が出てしまったので、その動揺をフリーまで引きずってしまったのではないでしょうか。そうでなければ彼女があそこまで崩壊するというのはありえないような気がします。
体調が悪いとか、怪我をしているとか、何か相当大きな悩みや問題を抱えている、というようなことでないといいのですが。
全米選手権までにうまく気分転換をはかって、もう一度「崩れないレイチェル」を取り戻してくれることを心から祈ってます。
お疲れさまでした。


Rachel Flatt 2010 Grand Prix Final FS -Slaughter on Tenth Avenue



日本選手の表彰台独占はさすがになりませんでしたが(でもなったらなったで来年のルール改正などが怖いかも(笑)男女合わせて3人が表彰台という素晴らしい結果でした。表彰台を逃した選手も皆さんすごく見応えのある演技で、素晴らしい試合でしたね。
選手の皆さん、お疲れさまでした。そろそろシーズンの疲れが出てくる時期ですが、国内選手権などがまだ控えていてなかなか大変ですね。怪我に気を付けて、怪我をしている方は早くなおりますように、というメッセージを選手の皆さんに送りたいと思います。
ありがとうございました。


***追伸***
b0038294_1202484.jpg
高橋成美選手・マーヴィン・トラン選手がジュニアグランプリファイナル・ペア部門で見事優勝!おめでとうございます!!!



<関連コラム>
グランプリファイナル終了 -男子フリー  2010年12月11日
グランプリファイナル、男子SP  2010年12月11日
高橋選手と小塚選手、練習中に衝突 -グランプリファイナル公式練習  2010年12月10日
高橋大輔選手逆転優勝!スケートアメリカ・男子シングル  2010年11月14日
「先入観」への危惧 -パトリック・チャン選手優勝:スケートカナダ・男子シングル  2010年10月31日

浅田真央に何が起きているのか-グランプリシリーズ ロシア杯  2009年10月25日
by toramomo0926 | 2010-12-11 23:13 | フィギュアスケート


<< バナーあれこれ グランプリファイナル終了 -男... >>