浅田真央「復活の真実」
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昨夜のテレビ東京「Neoスポーツ」で、真央選手の特集をやっていました。



真央選手は、今季落胆することもありながらも、全日本選手権で笑顔で帰ってきました。
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結果は2位。全日本はシニアデビュー2年目からの5連覇がかかっていましたが、この2位は5連覇よりも価値のあるものでした。
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昨年2月のバンクーバー五輪では、真央選手は女子で唯一無二の武器であるトリプルアクセルを3度成功させるという世界初の偉業を達成し、技術的にも最高難度のプログラムをひっさげ、表現のほうでも華やかな「仮面舞踏会」と格調高い「鐘」を滑り切りましたが、金メダルを取ることはできませんでした。
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荒川静香さんは、「トリプルアクセルだけでは勝つのは難しい。フィギュアスケートは総合力を問われる競技であり、バランスのとれたプログラムを作ることが今のルールでは勝利につながる」と解説しています。
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荒川さんの言っていることは、採点と審判を信頼できる状態であるとすれば、文句なく正しいと思います。
ですが、真央選手はトリプルアクセルだけを磨いて五輪に出場した(出場できた)訳ではないですし、ステップなどのエッジワーク、柔軟性のあるスパイラル、ポジションの美しいスピンなども世界トップの一人です。
そして、金メダルを取った選手への、審判のあまりにも露骨な減点要素の見逃しと過剰な加点というものがあったことも否定できないように思います。翌月の世界選手権での彼女の強引な「表彰台乗せ」にもそれは現れていました。

*彼女は五輪翌月の世界選手権で、SPでは決められた演技要素を満たせず7位に。フリーでもジャンプすっぽ抜けや転倒などの複数のミスがあったにも拘わらず、フリーのみの順位ではトリプルアクセルで回転不足を取られた他はほぼパーフェクトに滑った真央選手を抜いて1位、総合2位という驚愕の得点、順位が付きました。
会場では彼女への点が高すぎることと、真央選手への点が低すぎることの両方に対してブーイングが起こりました。


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荒川さんはこのジャンプ修正について「基礎点中心から基礎点+出来栄え点をとれるジャンプへ」と話していましたが、「真央選手が何故基礎点中心のプログラムを組んだか」ということへの言及が足りないように思います。

真央選手が基礎点の高いトリプルアクセル3回に拘ったのは」、前人未到のことに挑戦したいという気持ちもあったでしょう。
しかしジャッジの心持ちひとつで回転不足かそうでないかや出来栄えの加点・減点が決まる採点方式の中で、なるべく得点を重ねられるように基礎点の高い構成を組み、それをこなせる体を作った。技術的に文句を言わせない構成で基礎点で高得点を稼ぎ、出来栄えで減点される影響をなるべく少なくする、という意図は多少なりともあったのではないかと思います。
昨季でジャッジを引退したパトリック・イベンス氏も、「公正にジャッジしている審判は全体の10%」と述べていますし。

そもそも、五輪金メダリストの選手が「総合力のある選手」かどうかという問題もあります。
同じ演技構成内容のプログラムをジュニアから延々やっていればそれは演技は洗練されるでしょう。
また、演技には何の変化も向上もないのに得点だけは右肩上がりに上がり続けることが約束されているのであれば、フィギュアは総合力のある選手だらけになるのではないでしょうか。
毎年それぞれに乗り越えるべき課題を持って取り組んでいるからこそ勝ったり負けたりがあるわけですし、それがなければ単なる「勝つための作業」に過ぎず、もはやスポーツではないし、芸術でもないと思います。


真央選手は五輪の舞台で、ショートプログラムはパーフェクトな出来でしたが、フリーでジャンプに2つのミスがあり、プログラムをクリーンに滑り切ることが出来ませんでした。
悔し涙を流した彼女は、新たな挑戦を決意します。
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それは、ジャンプの修正。
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五輪が終わって帰国する飛行機の中で、既にこの大工事に着手することを決めたそうです。
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五輪の前のシーズンからジャンプに違和感を感じていたとのこと。昔のジャンプを取り戻したいというリスク承知の大改造でした。

並行して新しいメインコーチ探しをしていましたがなかなか決まらず、暫定的に夏の期間、長久保裕コーチにジャンプコーチを依頼。シーズンイン前月の9月になって、佐藤信夫コーチの就任が決まりました。
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長久保コーチへの短期間の師事というのは賛否両論ありましたが、今の状況を見ると正しかったんでしょうね。
夏から見てもらっても、試合でジャンプが入ったのは年末でした。これで長久保コーチの助けがなければ、もっとその時期はずれ込んでいた可能性が大きいです。
長久保コーチ、ありがとうございました。


自身も20歳になり、新コーチと新しい出発となりましたが、修正したジャンプのフォームがまだ体になじんでおらず、試合で結果が出ない日々が続きます。マスコミからもバッシングを受けました。
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「この頃(シーズン序盤)はまだ本当にジャンプが安定していない状態で、練習での悪いところが試合でそのまま出る感じだった」と話していました。


シーズン初戦のNHK杯後、佐藤信夫コーチは「心理的なものだと思うが、それがどこから出てきたかは、まだ私には計り知れない」と述べています。
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そりゃそうですよね。まだ教え始めて1ヶ月です。真央選手が技術的にも性格的にも、「本当は」どういう選手かというのも、まだ全く手探りの状態だったでしょう。
それでもコーチを引き受け、自分の教え子として試合に出すというのは、信夫コーチとしても相当な恐怖心があったのではないかと思いますね。本当に、よく引き受けてくださいました。


ジャンプを一度クリーンに試合で跳べれば一気に調子が出て来るんじゃないかと思いながらも、やはりスポーツは厳しいもので、思ったようにはいきません。
グランプリシリーズはNHK杯8位、フランス杯5位。ファイナルへの出場を逃してしまいます。
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これはNHK杯の後だと思いますが、この顔を見たときは辛かった・・・・。ジャンプ修正に着手と聞いた時にこういう事態も覚悟しなければならないと思っていましたが、それでも辛かった。


フランス杯から帰国後、世界選手権への出場について、全日本での演技がラストチャンスだと語ったことは話題となりました。
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橋本聖子スケート連盟会長が口にする前から、真央選手はこのように発言していました。


その真央選手を支えた存在として、今季より信夫コーチのもとで兄妹弟子となった小塚崇彦選手が。
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TVで見ていて、この展開にはびっくり(笑)。
でも、真央選手は殆ど一人で練習していたわけですから、世界トップレベルの練習メイトができたことは、本当によかったと思います。新横浜でのたくさんの選手との練習も然り。

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「小塚選手は本当に素晴らしい選手。
ジャンプも、スピンも、スケーティングも、スピンも・・・」って、スピンは大事なことなので2度言ったんでしょうか真央選手(笑)
でも確かに小塚選手は佐藤ファミリーの理想の結晶ともいえる、癖のない本当に基本に忠実な美しい技術を持つ選手なので、彼を間近で見ながら一緒に練習するということはとても良い影響をもらえると思います。


小塚選手は小塚選手で、一緒に練習していて思う所があったようです。
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「一緒に練習していて、ちょっと悩んでるんだろうなぁ、と思う時もありましたし・・・
(真央選手が)自分のやるべきことをきっちりこなして一日を終える、っていうのを隣で見ていて感じたので、それはしっかりと真似しなければならないと思った」と話しています。


荒川静香さんも、一緒に練習するメリットを解説。
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トリプルアクセルを含めた男子並みの技に挑戦している真央選手にとって、トリプルアクセルを当たり前に跳んでいる男子選手と練習することは、女子だけ(または単独)で練習するときには得られないモチベーションも出てくるだろう、とのこと。


小塚選手がこれまでコツコツと着実に積み重ねた技術、努力と才能がついに今季開花し、彼は高橋、織田両選手をおさえて初めて国内チャンピオンになりました。
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そんな高いレベルの技術を持ち、また幼少期より試合や合宿などで顔を合わせていた幼馴染のような小塚選手という頼もしい練習パートナーを得て、真央選手は徐々にジャンプに手ごたえをつかんでいきます。
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二人で同じ振り付けを滑ってますが、これはなんでしょうね?遊び?それとも練習の一環?
全日本前に、真央選手と小塚選手はそれぞれのフリーをいくつかのパートに分け、交互に音楽を流して練習しているという話を聞いたので、それでしょうかね?
いずれにしても、楽しそうでいいですね。ストイックに打ち込むのも大事ですが、こういう息抜き的な練習も楽しそうです。



世界選手権の出場枠獲得の為には表彰台乗りが絶対条件と言われた全日本選手権が始まりました。
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後ろでニコニコされている素敵な女性は、真央選手のお母様の匡子さんですね。


ジャンプについて、真央選手「考えすぎると固まってしまって失敗するが、考えないと昔のクセが出てしまう。今直したものが、今すぐその通りに出来るという訳ではないので、厳しい状態だった」と話していました。
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2年かかる計画で始めたジャンプ修正ですから、約半年では勿論そういう状態でしょうね。むしろ私はこの短期間にここまで上げてきたことに驚いています。


試合が始まります。
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真央選手はショートプログラムの日、6分間練習時に確信をつかんだようで、当初回避予定だったトリプルアクセルを「跳びたい」と信夫コーチに直訴、見事成功させます。
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ショートはまさに「意地の着氷」でしたね。バランスを崩しかけましたが持ちこたえ、認定を得ました。
ここでリズムをつかみ、SPのフリップをきれいに着氷した時から一気にオーラがはじけたように見えました。
「昔のジャンプ」を跳んでいた頃の真央選手の躍動感みたいなものが戻ってきたように見えました。


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エッジエラーを取られ続けてプログラムから外していたルッツもしっかり入れてきました。
今年ジャンプ全種類をプログラムに入れてきたと知った時には「どれだけハードルあげるつもりなんだ」と思ったものでしたが、本当に跳んでくるとは!そしてまだエッジは修正中ながらも、きれいに着氷。こういう成功経験がすごく大事で、今後に絶対生きてくると思います。
最初のナレーションにあった通り、5連覇はなりませんでしたが真央選手にとってはもっとずっと価値ある2位だったと思います。


佐藤信夫コーチも、「よく頑張ってくれた。もっと時間が必要と思っていたので、私の方が舌を巻いている。根性だけはただ者じゃない」と褒めていましたね。
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「試合が近づいてくると、ググッと一気に登り始めてきた。やっぱりこれは、(真央選手の)芯の強さというのがあると思う。自分の決めた目標や夢を何がなんでもやり遂げるんだという意思の強さ、それだけは凄いと思う」


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「うまくいかなくても、そこから目を背けずに(トリプルアクセルを?)使い続けた。それはソチ五輪への良いスタートだと思う」と荒川さん。


真央選手は全日本までの日々を振り返り、「スケート人生の中で一番大変だったが、それだけの結果もついて来たし、一番の演技ができたと思う」と話します。
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「真央選手はひとつの山を越えたかもれないが、それは「復活」というものではなく、究極のジャンプ完成への必然的な通過点」というナレーション。
そうです、その言葉を待ってました!
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ライバルへのリベンジとかは、どうでもいいんですけど(笑)本当に選手としての成り立ちが全く違いますし、彼女が目標としているのは他人じゃないんですけどね。あくまで自分の目標を超えることだけだと思います。


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世界選手権で、真央選手が一番の笑顔を見せられますように!


浅田真央選手特集2011年1月10日



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by toramomo0926 | 2011-01-10 09:54 | フィギュアスケート


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