「選手が気に入る写真を撮りたい」  -スポーツカメラマン・中村康一さん
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読売新聞のネット版に、中村康一さんの記事が載っていました。
この方は浅田舞・真央姉妹の公式サイトの写真を一手に引き受けている方で、いつも素晴らしい写真を撮るなあ、こういう写真がもっと新聞や報道などのサイトに載ればいいのに、と常々思っていた方です。
今回初めてご本人の写真を拝見できました。アマチュアだった彼がプロのカメラマンになったのは、イリーナ・スルツカヤ選手のサイトを作ったことがきっかけだったそうです。




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真央を撮り続けて…  
スポーツ写真家 中村康一さん 40

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                         フィギュアスケートの撮影をする中村さん 

「人とのつながりが、最高の財産です」
フィギュアスケート大会の一日は、長い。昨年末の全日本選手権では、早朝練習から夜遅い表彰式までシャッターを押し続け、1万3000カットを撮影した。

 「選手が気に入る写真を撮りたい」
 撮影の視点は、報道カメラマンと少し違う。笑顔やガッツポーズだけではない。追い求めるのは、選手の成長の跡や、確かな技術を切り取った一枚だ。
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 中学、高校時代を過ごした名古屋を拠点に活動する。フィギュア好きだった両親の影響で、人気スポーツではなかった時代から会場に足を運んだ。

 昨年のバンクーバー五輪で銀メダルに輝いた浅田真央さん(中京大)らが脚光を浴びる以前は、大きな大会でも観客は少なく、写真撮影も自由だった。カメラを持ち込み、撮った写真を選手に贈るのが、熱心なファンの姿だった。

 十数年前まで、自身もそんなフィギュアファンの一人だった。転機は1999年に、ふと訪れた。

 友人と、のちに五輪メダリストとなったイリーナ・スルツカヤさん(ロシア)のファンサイトを開いた。彼女のスタッフが気に入り、「公式サイトにしないか」と、声をかけてきた。リンクサイドでの撮影が許され、知り合いになったカメラマンを手伝いながら自らも写真を撮り、収入を得るようになった。現在、浅田さんらの公式サイトのカメラマンも務める。
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 「この滑り方は本当に難しいんです。ありがとう」

 小学生時代の浅田さんから聞いた言葉が、今も忘れられない。高度なテクニックを確実にとらえた写真の価値を、幼いながらも理解してくれたのだ。
仕事への自信を深めるとともに、「この子はすごい選手になる」と感じた瞬間だった。


 小さな地方大会から大きな国際大会まで、世界中を駆け回る。「すべての選手の戦いを残したい」。レンズを通し、フィギュアスケート王国を支えている。

(宮島出)

(2011年1月23日 読売新聞)

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「選手が気に入る写真を撮りたい」
この一言を胸に写真を撮っている、そしてニュースサイトに載せる写真を選んでいるカメラマンが、日本にどれだけいるでしょうか。
それくらい日本の新聞社やニュースサイトに載るフィギュアスケートの写真、またその選択のセンスのレベルは外国の報道、通信社等が載せているものに比べて酷いものがあります。
だいたいスピンの最中かジャンプの最中の顔が歪んだ写真は必ず載る。演技中ほぼずっと動き続けるフィギュアスケートにおいて、撮る方としては一時的にでも静止状態になるジャンプやスピンの時は被写体を捉えやすいのでしょうが、スピンの美しいポジション、ジャンプの空中姿勢の美しさや高さを捉えるならまだしも、遠心力で歪んだ顔をわざわざアップにする必要はあるのでしょうか。

スピンの最中であっても、撮影する角度やタイミング次第で美しく撮る方法はいくらでもありますし、実際海外のカメラマンはそのような瞬間をとらえるのが巧いです。


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これは韓国のカメラマンが撮ったものです。
スピンで顔が歪むのは不可抗力ですが、少し引いて全身を写し、顔の角度を気を付ければここまで美しい写真になります。

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これが日本の報道写真(敢えて社名は秘す)。
何の芸も工夫もなく、歪んだ顔を真正面から映してしまっています。しかもポジションも移行途中のもので、全体としても美しくありません。ピントも甘いように思います。

真央選手に限らず、ほぼすべての選手のこのような写真(むしろこれはまだマシな方です)が採用され、ネットに載るのです。
このような「ミスショット」と言える写真をボツにせず、数多くの写真の中から「採用」として表に出すというのはどういう判断なのかといつも理解に苦しみます。
今回そのカメラマンの仕事の中ではこれがベストの中の一枚なのかと、その技量に疑問を持たれても仕方がないのではないでしょうか。

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回転しているところを適当なタイミングで撮って良いのなら、機材さえある程度のものをそろえれば、わざわざ高いお金を出してプロのカメラマンを雇う必要はないですし、そのような写真しか撮れないカメラマンに高いお金を出す必要などありません。
以前スポーツライターの田村明子さんの撮った写真を見ましたが、田村さんはプロのカメラマンではないにも拘わらず、現在試合のたびに上がってくる写真の中で「何故これをわざわざ選んで載せる?」と思うような本職カメラマンの写真よりもよほど選手の一瞬の輝きを捉えていました。


日本の(全てとは言いませんが)ほとんどのスポーツカメラマンはフィギュアスケートのことを何も知らず、もしくは「真央ちゃん、ミキティ」くらいの認識しか持たず、数多い現場の仕事のひとつとして派遣されて撮っているという方が殆どではないかと見受けられます。
あとは編集部の意向があるのか知りませんが、いわゆる「エロ目線」で撮られたような、スパイラルやスピンの時の開脚した部分を強調するような下品な撮り方をするものも多い。
「これは素晴らしい表情をしている」「美しいポジションが撮れている」と思えるものは、全体の半分にも満たないことがほとんどです。

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海外のカメラマンは、開脚したポジションの写真でもこのように写真のクオリティを保ったまま、うまくトリミングしています。
若い女性を撮っていて、しかもその写真は世界中に配信されるという配慮が全くないカメラマン、通信社は日本にびっくりするほど多いです。



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プロかアマチュアかということに関係なく、写真にはカメラマンの心持ち、被写体への愛情がストレートに出ます。
中村さんの写真には、選手が輝いている瞬間を出来るだけ多く残したいという気持ちや、頑張っている選手に対する愛情が、私のような素人にも見ているだけで分かります。
そういう気持ちを持っていれば歪んだ顔を大写しにしたものなど撮らないし、タイミング的に撮れてしまったとしても、それはボツとして表には出さないでしょう。中村さんの写真には「何故これを採用したのだろう」というものは私の知る限り一枚もありません。
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中村さんの写真の中の選手は瞳が輝いていて表情が生き生きとしている。そして写真全体から躍動感、生命力を強く感じるのです。写っている選手が写真から浮き出てきそうなほどに「動き」が感じられ、立体的なのです。
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選手が鍛え上げられた体で表現する一瞬一瞬の美というものを確実に捕まえ、フレームに収めて写真として焼いてもなお消えない生命のきらめきみたいなものが、写真から放射されているような気がするんです。
だから私は中村さんの写真が好きだし、これからもずっとフィギュア選手を撮り続けてほしいと思っています。
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<参考リンク>
Brilliance On Ice -浅田舞・真央選手公式サイト

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by toramomo0926 | 2011-01-25 22:31 | フィギュアスケート


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