男子は大波乱の表彰台 -2011全米選手権
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全米選手権の男子シングルは、私にとっては驚愕の表彰台となりました。
正直、予想してた表彰台の顔ぶれと全然違う!!!

エヴァン・ライサチェク選手、ジョニー・ウィアー選手という両雄が今季競技を休んでいるため、顔ぶれは新しくなるだろうとは思っていました。
そして、これからはジェレミー・アボット選手を筆頭に、新勢力としてアダム・リッポン選手、スケートアメリカで初の台乗りを果たしたアーミン・マーバヌーサデー選手などがひょっとしたら表彰台かも?などとぼんやり考えていたのですが・・・。
特にアボット選手が表彰台にいないのは驚きました。まあ、全米選手権はなぜか4位まで表彰台は用意されているのですが、ライサ&ジョニー不在の全米で、3位以内に入らなかったというのは意外でした。

五輪後、力を溜めていた新勢力がぐっと台頭し、アメリカの新時代、新序列形成の始まりを予感させる大会にもなりましたね。やはりアメリカは層が厚い。

2011 U.S. Figure Skating Championships
順位と得点詳細。
でそれぞれの種目の「Final」で総合順位と総合得点およびショートプログラム(SP)とフリーそれぞれの得点と順位が、
「Final」を開いた後、各選手の「Total Score」の右側にある「+」を開くとではSP/フリーで各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。





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ブラッドリー初優勝=全米フィギュア男子
 【ニューヨーク時事】フィギュアスケートの全米選手権は30日、ノースカロライナ州グリーンズボロで男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位のライアン・ブラッドリーが合計231.90点で初優勝した。フリーはジャンプの失敗が続き4位だったが、SPのリードで逃げ切り、3月の世界選手権(東京)代表入りが有力になった。
 リチャード・ドーンブッシュがSP7位から巻き返し、225.56点で2位。ロス・マイナーが3位に入った。3連覇を目指したジェレミー・アボットはフリーのミスが響き4位。バンクーバー五輪金メダルのエバン・ライサチェクと同6位のジョニー・ウィアは出場していない。

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ブラッドリー、ミス乗り越えて栄冠=全米フィギュア
 ライサチェクらが欠場した今季の全米は、27歳のベテラン、ブラッドリーが制した。SP首位で迎えたフリーの最終滑走。重圧に勝って初の栄冠を手にし、「これまでで最も演技するのが難しかった。信じられない」と喜んだ。
 冒頭の4回転ジャンプで左手をつき、次のジャンプも失敗。その後のトリプルアクセルを何とか決めて持ち直した。後半は切れのある3回転の連続ジャンプなどを披露し、表現力でも観衆を魅了した。
 昨年は4位。バンクーバー五輪代表を逃した。出場11度目での初制覇に「パーフェクトな演技はできなかったが、最後まで諦めなかった」と笑みが広がった。 

2011年1月31日 時事通信

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ショートプログラム(SP)、フリーともに私たちを真に楽しませてくれた、ライアン・ブラッドリー選手が優勝!!おめでとうございます!!!!!
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彼は27歳の大ベテラン。
以前(2006-2007年シーズン)、ステファン・ランビエール選手が富士ゼロックスのCMに出演したことがありましたが、その時、一緒に出演していた「経営者役」の人が突然スーツ姿で突然スピンやジャンプをしだしたことに驚いた方も多いと思います。
実はこれが変装したブラッドリー選手なのだそうです。


Fuji Xerox CM Stephane Lambiel (Spin Version)



2007年に全米選手権2位という実績はありますが、優勝はありませんでした。私も正直彼をあまりよく認識していなかったところがあります。バンクーバー五輪にも出場していません。演技中の解説によれば(ヒアリングが正しければ)今季試合には出ていなかったようです。
しかし今大会の彼は「何故こんなに良い選手が今まで日の目を見なかったのだろう」と思うほどの素晴らしい演技。
しかも、彼は27歳です。それでSPでは4-3のコンビネーションを跳び、フリーでは4回転を2回跳んだ(ステップアウトはしたけれど、しっかり入れてきた)のです。
年齢を考えたら、プルシェンコ選手の次にくるくらい凄いポテンシャルです。現在4回転をプログラムに入れてきている選手だって、その中で27歳になっても引退せず競技をを続け、更に同じ構成を入れられる選手がどのくらい残っているでしょうか。
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PCS(演技構成点)が男子トップ選手と比べて低いので、ライサ&ジョニーとはやはりそのあたりで差がついてしまっていたのだと思いますが、アメリカ以外の国もあわせて考えたら、世界トップで戦う選手で彼と同等のレベルの選手がいない訳ではありません。それでも今まであまり脚光を浴びてこなかった。
そう考えるとアメリカ男子の層の厚さというか、ライサ&ジョニーの盤石さというのもすごいなあと改めて感じさせられます。そしてその両雄体勢に唯一風穴を開けたジェレミー・アボット選手の存在も。

とにかく今大会の彼の演技は見てて楽しかった。SPでは小粋なアーミー(?)に扮したかと思えば、フリーではクラシックのメドレーに合わせて可愛いオネエを演じ、会場の笑いと盛り上がりを誘っていました。
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リンクに入ってポーズを取る前から、既にキャラクターが彼に乗り移っていました(笑)
アメリカは結構保守的な考えが根強く「男は男らしく」というような風潮があり、男子フィギュアスケーターというと「フリルヒラヒラで踊るカマっぽいスポーツ」とバカにされたりした歴史があったと言います。
それを逆手に取り、見事上質な笑いに昇華させた彼の演技とプログラムに拍手ですね!(笑)


かようにエンターテインメントとして見事な演技だったうえに、4回転を入れたタフなプログラムを滑り切った彼。完璧な演技ではありませんでしたが、彼のキャリアの中でも最高の演技のひとつだったに違いありません。フィニッシュの時には達成感溢れる表情を見せてくれました。
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3月、彼が東京にやってきます!
昨季高橋大輔選手が作った演技性のあるプログラムへの評価の高まりと、コレオステップ導入なども追い風になり、彼のようなタイプのスケーターが活躍できる土壌が整いつつあります。
遅咲きの彼が世界選手権で素晴らしい演技と成績を残すことができますように!楽しみにしてます!!


Ryan Bradley 2011 US Championship FS -Amadeus:Mozart Medley

もう、いちいち手がヒラヒラしてておもしろい(笑)
オネエっぽさを出すには、手首から上を直角に上向きにするのがポイントだとよく分かりました(笑)。
演技後にはバックフリップまで披露!
それにしても、チャッキー人形を投げたのは誰なんだ(笑)


キス&クライの様子


*コメントはそのままにしているので、うるさいと感じる方は、再生後動画画面右下の「…」をクリックして下さい。


↑ 感動的。なのにチャッキーとも記念撮影・・・(笑)
隣に座っているのは彼のお姉さまのようですね。

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2位には若い新勢力、リチャード・ドーンブッシュ選手!
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彼は今年のジュニアグランプリファイナル優勝者。ジュニアグランプリシリーズで優勝4回の実績を持つ19歳です。
ウィキペディア情報ですが、まだシニア参戦はしてないんですかね?それで全米2位ですか!長洲未来選手を彷彿とさせますね。

彼は正統派という感じですね。スピードはあるし、スピンも早い。4回転トウループを含むプログラムで申請を出していましたが、最初に跳んだのは3フリップ(3F)だったので、とっさに3回転にしたのではなく、勝ちに行くということで確実なジャンプ構成にすると演技前から決めていたんでしょうね。でも4回転を入れられるポテンシャルは持っているということです。
羽生選手が「シニアでは4回転は必須」としてこの夏必死で体得したのがよくわかります。
すごく滑りが丁寧できれいです。このまま体格の変化をしっかりコントロールしていけば、すごく良い選手になると思います。
ホントにアメリカは広いし大きいんだなあと彼を見て更に実感。ため息でそうです(笑)

ジュニアとはいえ、19歳だから世界選手権には出られますよね。彼の演技も見るのが楽しみです。


Richard Dornbush 2011 US Championship FS -Sherlock Holmes

シャーロックホームズ、推理してましたねー。
ステップもコリオステップ導入から、面白い振り付けが増えましたね。でも複雑なステップを踏んでの演技も好きなので、未だにコリオステップ導入には痛し痒しというか(違う?)、複雑な気持ちがあります。


3位にやはり若い、20歳のロス・マイナー選手!
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彼は今季のNHK杯に来てましたね(9位)。あと中国杯で7位でした。
全米3位というのはすごい成績ですから、これから自信を付けて大きく伸びていきそうですね。
彼は4回転はプログラムに入れていませんでしたが全ての要素で減点がなく、フリップとルッツの踏み分けもきちんとできているようです。
ドーンブッシュ選手よりも、もっとジャンプにスポーツを感じさせる選手ですね。大きく振りかぶって高く跳ぶ。でも演技全体の印象は粗い感じはなくて、滑りもきれいです。男子の醍醐味的なダイナミックさと、チャーミングさも持つ選手ですね。
今季の小塚崇彦選手のように、自信を付けた若い選手は大きく成長しますから、これからが楽しみな選手です。


Ross Miner 2011 US Championship FS -As Time Goes By

最後は顔が真っ赤ですね(笑)嬉しさ大爆発。ホントに今回の表彰台は、みなさん「やりきった!」という感じでしたね。こういう勝負は本当に気持ちいい。


4位にジェレミー・アボット選手!
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彼の今季のSPは大好きなんです。ステファン・ランビエールの名プログラム「ポエタ」を振り付けしたフラメンコダンサー、ナハロさんが手がけたということで、そこかしこにランビエールの演技を彷彿とさせるところがありますが、このプログラムは今までのアボット選手の「気のいいお兄ちゃん」または「良家の子女」的な草食感を吹き飛ばす、キレのいい大人のプログラム。
このプログラムの時のアボット選手は本当に入り込んでいる感じがするのもいいです。見てて小気味よい。
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フリーでは当初予定していた4回転を外したけれど、それでもベスト3に入ることはできませんでした。
彼はフリーを(回転不足云々はおいといて)クリーンに滑り切ることが最近なかなかできていないですね。今回は本当にみなさん「やりきった」選手が多かったので、彼は1度転倒したものの、それほど大きなミスはしなかったけれど敗れた。一度でも転べば、あっという間に順位を落としてしまう。厳しいスポーツですね。
でもこれが健全な姿だとも思います。

彼は世界選手権の出場を逃しましたが、四大陸選手権には出場します。彼がシーズン最後にSP、フリーともにクリーンに滑り切ることに期待したいと思います。


Jeremy Abbott 2011 US Championships SP -Viejos Aires



5位にアダム・リッポン選手!
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SPは、まさかのタノルッツで転倒。しかしフリーは頑張りましたね!
ですが、やっぱり今季最初のジャパンオープンの神演技のインパクトがすごくて、あれを超える演技はなかなか見られないな~という感じ。
あの時のキレのある演技を毎回、という訳にはいかないだろうというのはわかりますが、でもピークの持っていきどころは正しかったんだろうか、という気はしてしまいますね。あの演技が出来ていたら台乗りも可能だったのではないかと思いますし・・・まあそれは結果論ですが。
しかし彼は群を抜いて美しい滑りとジャンプを持つ選手ですので、これからソチまで成長を追えるのが楽しみな選手の一人です。頑張ってください!!


Adam Rippon 2011 US Championships FS -Piano Concerto No. 2 by Rachmaninov




6位にアーミン・マーバヌーザデー選手!
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アーミン君、すごくよかった!!!!
全米のフリーという緊張感の中、全てのジャンプを決めて滑り切ったのはすごい!
観客も途中から応援の声が大きくなり、最後はスタンディングオベーションしてくれていましたね。
彼のジャンプの高さ、ジャンプの軸の細さ、体の柔軟性、スピンの独創性、ステップの丁寧さ、すべてが良かったと思います。これから知名度とともに評価(得点的にも、アメリカのスケ連の内部評価的にも)がぐっと上がってくるんじゃないでしょうか。
個人的には、フリーだけでいえばリッポンくんよりもアーミン君の方が印象としては良かったように思いました。要素の組み合わせなどが入るので一概には言えないでしょうが、自分の見た目の感覚としては。

アーミン君も四大陸選手権への派遣が決まりました。憧れの真央選手と2008年のグランプリファイナル以来、約2年ぶりで同じ大会へ出ることになります。
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「みなさん応援ありがとう!休む暇なく、家に戻ったらすぐに四大陸のための練習に戻らなくちゃ!」とつぶやいています。

今度も真央選手に花束を持っていくのか?(笑)、いや、Youtubeに自らアップロードしている真央選手の使用曲のピアノを弾いた動画をDVDにして渡した方がいいのか(笑)それじゃ本当に単なる熱狂的なファンですかね・・・(笑)。
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台湾でも良い演技ができますように!


Armin Mahbanoozadeh 2011 US Championships FS -Avatar



みなさん、お疲れさまでした!!
全米選手権というのは、恐らくアメリカの選手にとってはグランプリファイナルよりも重要な試合ですから、それぞれ並々ならぬ意気込みで臨んだことと思います。
うまくいった選手も、結果が出なかった選手もいると思いますが、次の試合に向けて怪我の無いように頑張ってほしいと思います。いよいよシーズンも終盤ですものね。


そして、来月の四大陸選手権(台湾)には、アメリカからこのような豪華な顔ぶれが出場することになりました。

男子:
ジェレミー・アボット選手
アダム・リッポン選手
アーミン・マーバヌーザデー選手

女子:
アリッサ・シズニー選手
レイチェル・フラット選手
長洲未来選手

そして日本からは、
男子:
高橋大輔選手
小塚崇彦選手
羽生結弦選手

女子:
鈴木明子選手
安藤美姫選手
浅田真央選手

なんですか、この豪華さ(笑)
この2か国だけでも、「裏ワールド」と呼んでも良いくらいの凄いメンバーです。
台湾の方々はラッキーですね~。是非世界最高峰の戦いのために、席を埋め尽くしてほしいですね!!


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表彰式の様子



** おまけ **

ライアン・ブラッドリー選手&ステファン・ランビエールの富士XEROXのCM舞台裏。


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by toramomo0926 | 2011-02-01 07:40 | フィギュアスケート


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