「一発勝負」の意味について -岩崎夏海氏コラム
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岩崎夏海さんのコラム「浅田真央さんは『一発勝負』に臨み『大きな山を越えた』と言った」を読んでの感想です。

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浅田真央さんは「一発勝負」に臨み「大きな山を越えた」と言った /岩崎夏海 /日経ビジネスオンライン 2011年2月8日




このコラムの連載が更新されるのかということはちょっと気になっていました。
彼の最初の取材(フランス杯)で、スケート関係者以外立ち入り禁止の区域にまで彼が入り込み、バックスペースの真央選手に取材をしていたことで真央選手のマネージメント会社(IMG)が岩崎氏に苦情を述べたという報道を見たからです。
おそらく取材パスを持っていればどこにでも入れると勘違いしたのだと思いますが、試合前に自分を高めている選手の集中を乱したりすることは絶対にやめてほしい。
このような経緯があったため、このコラム(ひいては書籍出版)は最悪の場合暗礁に乗り上げるのではないかと思っていたのですが、更新されていましたね。

今回は普通のスポーツコラムにはない視点で見た全日本、という感じですね。これもなかなか興味深いです。
でも「一発勝負」という言葉については、ちょっと深読みしすぎかなという気もしないでもありません。

彼女が「一発勝負」と言い始めたのは、岩崎氏も書いている通りグランプリシリーズが終わった頃からです。グランプリシリーズで良い成績を残せずファイナルに出場できなかった彼女には、世界選手権出場権獲得の条件のひとつである「ファイナルでの日本人最上位」という道は閉ざされた。
そうなると、文字通り彼女は全日本で良い成績を残すしかありません。全日本で良い演技ができなければ、3月の世界選手権への出場は事実上断たれます。
昨年までなら、これまで安定して成績を残してきた実績も考慮される可能性は大きかったでしょう。ですが今季はジャンプ修正に取り組み試合で良い結果を残せていませんし、新しいジャンプがいつ軌道に乗るかは誰にもわからない状態でした。
加えて、今季は村上佳菜子選手のシニアデビュー&出場した試合すべてに表彰台乗りを果たしている実績があることから、「他に順位を狙える選手がいないから」という理由は成り立たない状態だったのです。
なので、もし真央選手が全日本で良い演技ができなければ、日本スケート連盟は真央選手に「今季はジャンプ修正に集中するように」と伝え、安藤選手、鈴木選手、村上選手を派遣するという事態も十分考えられるものでした。

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ジャンプ修正のために今季(の成績)を捨てるという気持ちが真央選手にない以上、彼女には全日本で今できることを全て出しきる演技をするしか道は残されていませんでした。それを「一発勝負」と素直に表現したのではないかと思うのです。

つまり、岩崎氏は「グランプリ大会は、出ることは出たものの、世界選手権への切符を手にするチャンスとは考えられなかった――つまり、まだ満足の行く演技をできる状態ではなかったのだ」と書いていますが、真央選手はそういう考えをするかどうかというのは私には疑問が残ります。
彼女は一試合も捨てるつもりはなかったし(前回コラムでの岩崎氏のインタビューでも真央選手はそう話しています)、ファイナルに出るつもりでやっていたに違いないと思うからです。
実際の状態は「まだ満足の行く演技をできる状態ではなかった」かもしれませんが、真央選手の気持ちとしてはそうではなく、すべての試合でベストの演技をするべく臨んでいたのではないでしょうか。彼女のインタビューやこれまでの彼女の競技に対する姿勢から見ても、そのあたりには私なりに確信を持っているのですが。


まあ、私は「深読みしすぎ」と書きましたが、実は話を聞いてみたら岩崎氏の説の方が正しいのかもしれません。その場合私は真央選手に失礼なことを書いたということになる訳ですが(笑)でもそう考えるのが今の時点では一番自然であるように思います。


あと、「本番は日常、日常は本番」と言った武道家がいた、という記述がありましたが、これは佐藤信夫先生が話したという「練習は試合のように、試合は練習のように」という言葉を私に思い出させるものでした。やはりどのような方面においても、普遍的な考え方なんでしょうね。
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彼のコラムについて、これはフィギュアスケートのコラムとして良いものなのか、正しいものなのかという判断は私の中でまだ下せていません。ただ、視点が新鮮なので読んでいて「こういう考え方もあるのか」と興味深いのは確か。
そして最近スポーツメディアについてあまり信頼を持てないでいる私にとって、何の予備知識もなくフィギュアを見て、自分の経験や仕事から得たものの見方で書いているこのコラムは私に新しい見方を提示するものでもあります。
それに同意するとかしないとかじゃなくて、あくまで客観的に「この人にはこう見えているのだな」というスタンスで、しばらく更新を追いかけていきたいと思います。もし今後「違う」と感じたら、途中でやめるかもしれませんが。

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<参考リンク>
浅田真央さんは「一発勝負」に臨み「大きな山を越えた」と言った /岩崎夏海 /日経ビジネスオンライン 2011年2月8日


<関連コラム>
岩崎夏海氏コラム -全日本観戦  2011年2月8日
岩崎夏海氏コラム「パリで浅田真央さんは「私はスケートが好きなんです」と言った」  2010年12月21日
「もしドラ」の岩崎夏海氏、浅田真央選手のコラムを執筆  2010年12月20日
by toramomo0926 | 2011-02-08 23:02 | フィギュアスケート


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