浅田真央選手、自身の練習と新体制の充実ぶりを語る
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今日の日本経済新聞に、浅田真央選手のインタビューが載っていました。
現在の調子や思い、チーム佐藤に加入しての新体制での練習の様子やその充実ぶり、そして21日からはじまる世界選手権への思いについても語っています。
日経は「経済新聞」なわけですが、フィギュア選手へのインタビューはすごく内容が濃くて毎回いいですよね。真央選手だけでなく他の選手のインタビューでも楽しく読めますね。




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真央 ガンガン上り調子 世界フィギュア21日開幕 連覇めざす

銀メダルを獲得したバンクーバー冬季五輪から1年。五輪後にコーチをかえ、ジャンプ修正に取り組んできたフィギュアスケートの浅田真央(20、中京大)がいよいよ復調してきた。今季最大のイベント、東京での世界選手権(21日開幕)を前にして、連覇を目指す昨季世界女王の心境を聞いた。
(聞き手は原真子)

-2位だった四大陸選手権(2月、台湾)ではジャンプも安定、あとは曲を感じて滑る段階に来ました。

「やっとガンガン上り調子で来ている。昨年末の全日本選手権の後、振付師のローリー(・ニコル)先生に中京大まで来てもらって、フリーの『愛の夢』をかなり直した。初披露の四大陸で、『変わったね』『良くなったね』と言ってもらえたので、自信になった」
「四大陸のフリーのトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)はテレビで久しぶりに見た。踏み切る時の体の傾きがほとんどなくなって(まっすぐに跳べるようになって)きたと思う。(苦手で跳ばなかった)ルッツも安定して、15歳のころのジャンプがちょっと戻ってきました」

-前半戦、「このままで大丈夫か」と言われていた時の気持ちは。

「大丈夫って思ってた。今年はゆっくり楽しんでやろうっておもっていたんですけど、いざ試合が始まると、昨季と変わらないくらいの気持ちの入りようになって、やっぱりスケートが好きなんだなって実感した。嫌いだったら、『ま、いいか』で終わっていたと思う」

-佐藤信夫、久美子コーチについて半年。小塚崇彦(トヨタ自動車)とも一緒に練習する新しい環境はどうか。

「(豊富な練習で自信をつける)真央の納得がいくまで練習させてくれる。でも試合前になると、あまり追い込まないようにして調整をさせる。振り返ってみると、ジャンプや体調を、先生がすごいコントロールしてくれているんだなって思う」
「信夫先生はほぼ毎日、久美子先生も週の半分は見てくれる。そしてタカ(小塚)ちゃんという、自分より何十倍もレベルの高い男子選手と練習できる。すべてにおいてよい環境だと思う」
「久美子先生はさっぱり、サバサバしていて男っぽい先生です。信夫先生は優しく、柔らかそうに見えますが、昔、全日本を10連覇したすごい強い、男性の芯の強さを感じる。厳しい時もある」

-いつも練習熱心なので、コーチに怒られることはないのでは。

「調子が悪く、ちょっと焦ってしまって、先生が話している最中にジャンプを跳びに行こうとしたことがあった。『まだ話、終わってない!』ってしかられちゃいました」

-五輪後、雰囲気が変わり、余裕があるように見える。

「五輪は、緊張感も嬉しさも悔しさも、すべて含めて楽しかった。あの大舞台で、あの時の全力は出し切れたと思うから。そういうすごい大きい舞台を経験したので、ほかの試合も『五輪も経験したから大丈夫』って思える。それにもう20歳ですから」
「バンクーバーまでは、『やらなきゃいけない』『やって当たり前』って自分を思ってた。ストイックだったと思う。今は週1回休むし、落ち着いて、練習も試合もすごい楽しいって思える」

-東京での世界選手権には、バンクーバー五輪金メダリストの金妍児(キム・ヨナ、韓国)が1年ぶりに試合に出る。

出場するという話は聞くけど、気にならない。出たら、また大会の注目度が上がるなって思うけれど」

-4年前の東京大会では、世界選手権で初めてのメダルとなる銀メダルを獲得した。今回は連覇もかかる。

「再び東京でも特別な思いはないし、2連覇も意識しない。1つのシーズンの一番大きな試合という感じ。今やっと精神的にも技術的にも安定期に入った。減点をもらわず、すべての要素をこなし、最高の演技をすることだけ考えています


2011年3月10日 日本経済新聞

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読んでいて、本当にうれしかったです。本当に今、楽しんでスケートが出来ているんだな、充実しているんだなと。
五輪までの真央選手はストイックという言葉が本当にぴったりの、求道者みたいな雰囲気が出ていました。勿論インタビューや会見などでは柔らかい話しぶりでしたが、スケートへ向かう姿は悲壮感というものすら感じるほどの壮絶さがにじみ出ていました。
それはやはり、殆どをコーチ不在の中で一人で全てを計画し、判断し、練習していかなければならないという負担が大いに影響を及ぼしていたと思います。
時に長久保コーチや小塚嗣彦コーチなどに助言をもらったりすることはあったけれど、他の選手がコーチからもらうサポートからすれば雀の涙のような割合でしかありません。しかもそれすら通常はありえないことで、師事していないコーチからの助言は、教え子以外の選手には口を出さないというフィギュアスケートにおける「お作法」に反しても、一人で途方に暮れている彼女を助けたいという彼らの温情からのものでした。
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トレーナーやアシスタントコーチのサポートは勿論大いにありましたが、ジャンプへの技術的な助言は2年以上まともに受けられない状況だった彼女は、実質一人で五輪銀メダルをとり、世界選手権に2度優勝したようなものです。他の選手なら、とっくに潰れて第一線から消えていてもおかしくない厳しい状況の中で彼女はそれを成し遂げたのです。
彼女の努力は確かに素晴らしいことではありましたが、通常ならする必要のない苦労をしての栄光という要素が含まれていたことは否定はできません。
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しかし今季から安定した指導を国内で受けられることになった。しかも基礎の基礎から基本に忠実な美しいスケーティングと、そのスケーティングに基いた正しいジャンプを教えてくれる世界有数の指導者につきっきりで教えてもらえる環境ができ、更に世界トップクラスの正確な技術を持つ、しかも体力的にもより強い男子選手と一緒に練習できる。真央選手にとってこれ以上の環境はないでしょうね。
しかもその練習パートナーの小塚崇彦選手は幼少時からよく知っている間柄ですから、警戒心が強く人見知りをしてしまう彼女にとっては、新しい環境とはいえ彼の存在はモチベーションにもなるでしょうし安心材料にもなったのではないかと思います。

「納得がいくまで練習させてくれる。でも試合前になると、あまり追い込まないようにして調整をさせる。振り返ってみると、ジャンプや体調を、先生がすごいコントロールしてくれているだなって思う」「信夫先生はほぼ毎日、久美子先生も週の半分は見てくれる。そしてタカ(小塚)ちゃんという、自分より何十倍もレベルの高い男子選手と練習できる。すべてにおいてよい環境だと思う」という言葉が、そういう負担から解放され、選手としてのことに全力を傾けられるようになった真央選手の精神的余裕と充実感、そしてコーチと練習パートナーへの信頼というもの全てを表しているように思いました。

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真央選手が佐藤信夫コーチに叱られたというエピソードも興味深かったです。
信夫コーチにしてみれば、勿論話が終わらないうちに滑りだすという気もそぞろな態度もその材料にはなったでしょうが、そういう焦った感情のまま跳んでも「実」にはならないし、むしろ怪我の危険すらあることを思っての叱咤だったんだろうと思います。
真央選手の言う通り、選手の体調やコンディション、精神状態もきちんとコントロールしていく力量、手腕が必要になるし、選手もコーチに全幅の信頼を置けなければ指導は受けられない。
やはりフィギュアにとってコーチという存在は本当に、私たちが考えるよりもずっとずっと重要なんだろうなと感じました。
信夫コーチのことを芯が強いって言ってましたが、信夫コーチも真央選手のことをそう評してましたよね。そして小塚選手も真央選手について「芯のある」みたいなことを言ってたように思います。チーム佐藤で「芯」が流行っているんでしょうか(笑)
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恐らく、そもそもは信夫コーチの言葉だったのでしょうね。それを聞いた教え子が影響されて使っているように見えます。
でも皆さん一流というか、精神性はプロフェッショナルの極みみたいな方々ですから、そりゃあしっかりとした「芯」は持ってますよね。

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これから彼女は世界選手権までの間、キムヨナ選手についての質問が嫌になるくらい浴びせられることになるでしょうね。
でも、彼女はもとから「気にならない」というスタンスですよね。「浅田真央、更なる高みへ」のブログにもありましたが、彼女が戦っているのは自分自身とフィギュアスケートそのものに対してだけです。先方は常に彼女を意識しているように見えますが、真央選手はそういう意味でキム選手も、他のどの選手も「意識」はしていないのが見ていてよくわかります。

五輪までの狂乱的な報道合戦でもさんざん「ライバル」と煽られましたが、「他の選手は気にならない。自分のベストを尽くすだけ」というその姿勢は全くブレることがありませんでした。あの精神の強さは感嘆させられますが、このインタビューで真央選手が話している通り、最高の演技をすることだけを考えて臨んでほしいと思います。

とりあえず真央選手がすごく良い状態で練習できていることが分かって嬉しい。「安定期に入った」という言葉が読んでいてファンとしてはすごく心強いものでした。
信頼できるコーチと練習パートナーとともに、全員が笑顔で終われる世界選手権になりますように。

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<参考リンク>
【特集】浅田真央 さらなる高みへ「メイキング・ブログ」  学研教育出版「広報ブログ」


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by toramomo0926 | 2011-03-10 15:23 | フィギュアスケート


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