J-Sportsの神解説 -今季世界選手権を例に
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ここで何度も話している通り、スカパー!をはじめとする有料チャンネルで視聴できるJ-Sportsのフィギュア番組は、全選手をノーカット放送&生放送(今回の世界選手権は震災の影響で日程変更となったため一部録画となりましたが、基本的に全選手ノーカットと生放送の方針を貫いてくれています)というファンにとってはとてもありがたい番組構成を毎回組んでくれているのですが、同じくらい素晴らしいのが実況・解説の的確さと冷静さ、何より公平かつ公正なところです。
今回この素晴らしさを表す例として、今季世界選手権の演技について言及した部分を動画にして下さっている方がいましたのでご紹介します。
また、動画はいつ消されるか分からない点がありますので、聞き取れる限り文字でも起こしておきます。




一つ目は、世界選手権のエキシビジョンでのフィナーレの放映の際の発言です。
解説は2009/10シーズンまでISU(国際スケート連盟)ジャッジ、同アイスダンスレフェリーを務め、ISUの判定役員評定委員でもある藤森美恵子さん、そして98年長野五輪代表で本田武史コーチと日本男子の一時代を築いたプロスケーター、田村岳斗(やまと)さん。

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藤森:女子の真央ちゃんの活躍楽しみですね、来シーズンは。

アナ:(世界)チャンピオンでしたしね。では浅田真央選手について伺いましょうか。田村さん、あの、まだ復活の途中だったということですか?(このあたりちょっと聞こえづらいので、多少違っているかもしれません)

田村:僕はもう、(浅田選手の演技構成は)2014年を見てのプログラム構成だったんじゃないかと思うんです。
ほとんどの選手が苦手なジャンプをプログラムから外してフリーを滑っていたんですけど、浅田選手は、彼女の中で比較的苦手なルッツだったりサルコウジャンプだったりを入れているというので、6種類バランスよく(ジャンプを演技構成に)入れているんですよね。
それは、またどんなルールに変更になったとしてもいいように、全てを出来るようにしておこうという・・・まあ今回の目先の勝利と言うよりは、ほんとに2014年を目指したプログラム構成だったんじゃないかと思います。

藤森:まさにその通りだと思います。

アナ:心配する必要はないということですね。

田村:そうですね、オリンピック終わって(まだ)1年目ですから。

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結果だけを見て不調、スランプと叩くのではなく、きちんと競技とそのルールを知っている、またスポーツを理解しているからこそ出る言葉ですよね。こういう解説や報道がなぜ、いつまで経っても地上波放送や報道でできないのかが非常に疑問です。
見た目だけで失敗ということなら素人でもできるのに、今の地上波放映(民放)は見てわかることしか言わない。それなら黙っていてくれても同じなので、そうしてくれていた方が有り難いくらいです。


また、J-Sportsはキムヨナ選手に関してもかなり踏み込んだ批評をしています。見ててびっくりししました。
地上波で彼女についてこのような評価は全くなく、すべからく褒めちぎるというのがお決まり(掟、にさえ思える)になっていますが、やはりジャッジ経験者の目からしてもそう思うんだなあ、と安心しました。彼女の演技についてはなるべく客観的な目でみるようにはしていますが、どうしても巷で言われているほど「すごい演技」とは自分には思えなかったので・・・。


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田村:技術はやっぱりしっかりしてるんですけど、今日は元気がないですね。曲・・・。曲はすごい明るい曲なんですけど、はい。

藤森:伝わってこないですね。

田村:そうですね。

藤森:この曲でせっかくいろんな振りはしているんですけど・・・
昨日のフリーのアリランも、わりに哀愁のある曲の表現のところで、ちょっと、やっぱり男性的な滑りを彼女してたんですよね。
それからジゼルもやはりこう、・・・本当にクラシックバレエを知ってる方だったら、ジゼルのインタープリテーション(音楽の解釈についての得点)はあんまり出したくなーい、っていう雰囲気・・・。
それがやはり、こう、GOE、まあ、ジャンプの評価で非常に高い点取っちゃうってところがね、
ちょっと、ちょっとかな?って(苦笑)思います。
やっぱりこう、テクニカルをつけるジャッジパネルと、コンポーネンツ(演技構成点)をつけるジャッジパネルを分けた方が、より正確な判定ができるような気もするんですけど。



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動画再生後、広告が下の方に出ますが、広告部分の右上の×印をクリックすると消えて字幕を読むことが出来るようになります。2:45秒あたりから上に書いた解説(字幕)が始まります。
この発言は他のフィギュアファンの方のブログでも多く取り上げられているようです。


誰が滑っているかということとは無関係に、藤森さんの言っていることは正論ですよね。
曲調や曲のテーマ、物語に合わない滑りや演技をしている選手に高いPCS(演技構成点/プログラムコンポーネンツスコア)がつくのはおかしい訳で、国際ジャッジをつとめてきた目で根拠のある批評をしている。
地上波では彼女の演技については褒めちぎらないといけないようですが、長年フィギュアを見て来た人の目には、それがジャッジであってもファンであっても、このエキシビジョンの演技は物足りないものだし、ショートプログラムやフリーにしても、得点に見合った演技内容をしていないというのは分かるものです。

今回の世界選手権の演技を見て、キムヨナ選手の演技のターゲットはやはりフィギュアスケートファンではなく、フィギュアをよく知らない「世間一般」なんだなというのを改めて痛感しました。
彼女にとってフィギュアをやることで得たいのは名誉とそれに付随して得られるお金(逆かもしれない)であるので、ファンよりも一般人にインパクトを与える事を念頭にプログラムを作っていたように思います。
一瞬のバキューンや流し目で強い、象徴的となるインパクトを与え、「すごい」というイメージや世論みたいなものを作って人気と地位を確立してショーで儲けたり文化的要職に就く、というような。
以前私は「多分彼女は本当の意味でアスリートではない。本当に欲しいのは名誉や多分金銭的なもので、フィギュアスケートはその『手段』に過ぎないのでしょう」と書きましたが、このことについては私の推測は当たったいるだろうと今は確信してます。
彼女は望みのものが手に入れば、フィギュアファンや他の選手にどう思われようが全く構わないと思っているのではないでしょうか。じゃなきゃエキシビジョンとはいえ、あんなスピンとダブルアクセルだけなんていうプログラムやれないですよ、トップスケーターのプライドとして。

それでも彼女は引退を口にしませんでした。来季もグランプリシリーズは休みます、と口にしただけです。このやり方であと何年か生き延びられると思ったようですね。
でも、通常はどこの国でも国内選手権を勝ち抜かなければ世界選手権へは出られないはずなのに、彼女は出場すらせずに(少なくともシニアになってから、韓国の選手権に彼女は出場したことはないのではないでしょうか。それでもなぜか『優勝』というタイトルがついた年もありました)、当然のように世界選手権に出てくる。
そりゃあ、彼女を負かせるほどの選手は今の韓国には存在しないと思いますが、彼女が「出る」と言えば出られる、という状況はスポーツとしては歪んでおり、国内選手のモチベーションを奪います。偉大な先輩と年一度でも同じ試合に出て演技を見て勉強する機会も彼女たちには与えられない。
ちょっとシステムとして健康的ではないと感じます。また、後進の選手は(少なくとも同じレベルで戦える選手は)育たず「ヨナの去った後は草も生えない」という状態にならないかと案じます。
まあ他の国のことなので、私があれこれ言うことじゃないかもしれませんが。


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藤森さんは同じくJ-Sportsで解説をされている元国際ジャッジの杉田秀男さんとともに、真央選手のチャリティ本でインタビューに答えてくれているとの事。どんなことを話しているのか楽しみです。
二人とも厳しいことは言いますが、とても信頼できる解説者だと思っています。これからもその姿勢を変えることなく、是非公平で自由闊達なご意見を解説で述べてもらえるように願っています。

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<参考リンク>
J Sports -フィギュアスケート・オフィシャルサイト


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by toramomo0926 | 2011-05-17 08:59 | フィギュアスケート


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