日経新聞の記事 -浅田真央選手・衰えぬ人気の秘密
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毎回内容の濃いコラムを載せてくださる日経新聞の「フィギュアの世界」。今回は真央選手のスポンサー契約についてです。

現在フィギュアスケートは大人気ですが競技人口としてはマイナーであり、広く一般に競技用の道具が売れるわけでもなく、コスチュームに企業ロゴを付けられるわけでもない(キス&クライで着るジャンパーにはついてますが)。
フィギュア以外でも、五輪後スポンサーがついても1年後をめどに減少するスポーツ選手も多い中、真央選手は今年も新たにスポンサーがつきました。
企業は真央選手にどのような魅力を感じているのかを中心に書かれています。文章はいつも通り原真子さん。


「浅田真央にまた新スポンサー 衰えぬ人気の秘密」 -日本経済新聞
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真央選手がブランドアンバサダー(というらしい。要するに選手はCMに出演&企業は選手をサポートという契約のことですね)に就任が決定したウィーヴァジャパン(真央選手だけでなくサッカー日本代表など、多くのアスリートから人気を集めている高反発マットレス「エアウィーブ」を販売)の社長は、当日の会見で250席用意した記者席が満席になり非常に満足していたとのこと。
そして真央選手効果で、昨年の業績の3倍(!)の10億円を狙うそうです。
(追記:結局、2011年は12億近くまで行ったとTVで報じているのを見ました。)


会見の様子



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 これだけではない。浅田がホスト役を務め、今年で5回目となるアイスショー「THE ICE」。今回、オリンパスが冠スポンサーを降りたが、すぐにかねてより浅田のスポンサーだったロッテがアイスショーの冠スポンサーにもなった。

(中略)

 ウィーヴァジャパン、ロッテのほか、06年からの伊藤ハム、王子ネピア、07年からのオムロンヘルスケア、08年からの森永製菓「ウイダー」、10年からの佐藤製薬。加えて、09年度からは日本オリンピック委員会(JOC)のシンボルアスリートにもなっている。

 競泳の北島康介(日本コカ・コーラ)など、高額スポンサーが集まるトップ選手には使い勝手が悪く、断ることも多い制度だが、浅田は懇願されてシンボルアスリートになった経緯がある。

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■企業側からアプローチ
 何社か入れ替わりはあるものの、基本的に一度つくと長い。「15歳の浅田の笑顔に(当時の)社長がKOされた」(伊藤ハム)、「健康的なイメージで、幅広い年代に好感が持たれる」(オムロンヘルスケア)……。このように企業側からのアプローチが圧倒的に多い。

 そして企業側の期待にたがわず、CMに登場した製品の売り上げアップに貢献している。

(以上本文より抜粋)

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五輪で好成績を残した直後はスポンサーがつくものの、一般的には1年も経過すると数が徐々に減っていくケースが多く、資金不足が競技生活に支障をきたす事態となる選手も少なくないそうです。
このため、2009年からJOC(日本オリンピック委員会)が選手に企業を紹介する「アスナビ」という事業を始めて、選手のサポートをしているそうです。
しかし真央選手は五輪を終えても、また昨季よりジャンプ技術を一から積み上げ直す数年がかりの大規模オーバーホールに入ったため成績がこれまでより残せなかったが、それでも新たなスポンサーが付いた。
彼女のアスリート、フィギュアスケーターとしての人気は勿論、スポーツを見ない層を含めた「国民的」といっていい人気は揺らぐことはありませんでした。


*****

(女性アスリートの方が比較的スポンサーがつきやすいと言われるが)浅田は別次元の存在だ。彗星(すいせい)のごとく現れてから6年目。話す内容や雰囲気は大人になってきたものの、親しみやすく、みんなが「真央ちゃん」と呼びかけて応援したくなる個性は色あせない。(後略)

(以上本文より抜粋)

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真央選手は確かにCM的には申し分ない存在でしょうね。
全世代から認知度と好感度、親しみを持たれていますし、アスリートという訴求力のある存在であり、常に挑戦する強い姿勢を見せつつも、いつも笑顔(で天然)のイメージ。
どんな時でも決して不機嫌そうな様子やムッとした顔を見せず、記者の無礼な質問にも鼻白むことなく、とっさの質問にも揚げ足を取られることのない受け答えができる。
ふわっとした印象の陰に隠れていますが、実は非常に頭の切れる、聡明な人物だと思います。ちょっと浮世離れしているほどにストイックにスケートに打ち込むクリーンなイメージは、不祥事から一番遠い人物の一人。
難癖をつける要素がゼロという存在ですから、企業は自社製品のイメージキャラクターとして使いたいでしょうし、一度使ったら長く契約したがるのはよくわかる気がします。
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一方で、真央選手としては企業からのサポートは非常にありがたいことでしょう。
どんなスポーツも世界トップレベルでやれば相当お金はかかるでしょうが、フィギュアはその中でもかなり出費が激しいというイメージがあります。
フィギュアのトップ選手は、競技を1シーズン行うためには最低1千万くらいは必要とされている状況です。

第一に、プロではなくアマチュアですから基本的に試合出場のための渡航費や滞在費は、連盟からの補助はあるものの、競技をすることでの収入は試合で表彰台に乗らなければゼロであるにもかかわらず自腹。コーチの渡航費も選手が支払います。その賞金も世界選手権(五輪を除いた最重要大会)で優勝しても500万円なので、そのシーズンの世界チャンピオンになっても採算が合わないケースは当たり前に存在します。
加えて毎年のプログラムの振り付けは有名な(=高得点を狙えて、かつ内容的にも充実したプログラムを作れる)振付師に頼めば1曲100万単位で、毎年ショートプログラム、フリー、エキシビジョンと3曲作ることが普通です。それだけでも勝てなければ既に赤字となります。
リンク使用料やコーチへの謝礼、靴も一足数万~十数万のものを年に何足も履き替えます。衣装もそれこそ十万単位以上での出費が必要になる。

その中でCMに出演する代わりに資金援助や、ウィーヴァジャパン(高性能マットレス)やウィダー(栄養管理とトレーニング)、ユナイテッド航空(2006年から契約・航空券の無償提供)など直接競技活動をサポートするものもあり、選手にとって何の心配もなく競技に打ち込める環境を作ってもらえるのは最高のサポートになるはずです。真央選手も 「たくさんのスポンサーのサポートを受けられて、とても感謝しています。ますます頑張らないといけないという思いが強いです」とコメントしています。





よくアスリートに対して「CMにばっかり出てないで・・・」という論調で批判する方がいますが、アマチュア選手にとってはこれも非常に重要な選手活動の一環なのです。
現実に、お金がなければ選手は試合はおろか練習も立ち行かなくなりますし、よりよい環境でベストの練習をして試合に備える為には、(余程アスリートにそぐわない商品・業種なら別ですが)契約してもらえるならした方が絶対いい。CM撮影は数時間~長くても1日の短時間で済みますし、企業もあまり負担をかけないように「オフシーズンに撮影をする」ことは勿論、「選手の拘束時間を×時間で終わらせる」と決めるなど、配慮してくれるといいます。

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昨シーズン大活躍した小塚崇彦選手も、真央選手に続き今年2月にユナイテッド航空と契約しました。このように企業との契約は活躍の証でもあります。


ですが、契約社数が多ければ多いほど、援助してもらうからには結果をださなければいけないというプレッシャーは選手の両肩にのしかかってきます。
勿論不祥事(ドーピングや私生活などでも)を起こさないよう、自分を律する必要もある。
CM出演に「かまけている」=チャラチャラしてる、という批判は私は本当にお門違いだと思っています。契約を勝ち取ることはアマチュア選手には非常に重要なことですし、一方で責任も生じる。成績が悪くても、自分だけの問題ではなくなってくるのです。活躍できなければ、自分を信じて契約してくれた企業のイメージアップに貢献できず、逆に迷惑をかけることもありえる。そういうこととも対峙せざるを得なくなります。
そして世間から「CMばっかり出てないで・・」と言われることも甘んじて受け止めなければなりません。成績次第では援助を打ち切られる可能性もあり、何の保証もないのです。
毎年プラチナチケット化する大人気のアイスショー「The ICE」にしても、昨年までスポンサーだったオリンパスとの契約が終了しましたが、この後ロッテが名乗りでなければ、もしかしたら毎回満席になるショーでも昨年で終了になっていたかもしれません。

日本は他の国に比べて国からのアスリートへの援助は多くなく、それでも五輪や世界選手権などの大きな試合では国中の期待を背負って戦うことになります。アスリートがCMに出ることやその多さを批判するなら、まず国の援助体制から考えてほしいと思いますね。


しかし真央選手はそういう重圧、重責も全てあの笑顔に隠して、毎日スケートに打ち込んでいます。勿論それはすべてのスケーター、アスリートも同じです。
このコラムは「浅田真央の契約数はすごい」という感じになっていますが、私はアスリートのCMやサポート契約のことが話に出るたびに、その裏でいろんな重みを背負って戦う選手たちの姿を思い浮かべてしまいます。

全ての選手が思い切り自分の目指す目標に打ち込める日が早く来ればいいと思います。そして人気アスリートの存在は、確実にそこへの一助になっていると考えます。それだけ世間一般の関心を集められるということは、日本のスポーツの振興や発展に必ず良い影響を与えるはずですから。

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***おまけ***

オムロンのサイト、バンクーバー五輪時。
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真央選手は2009年からシンボルアスリートになったため、五輪期間中は公式スポンサー以外の企業のコマーシャル等には契約中であっても出ることができませんでした。
なので大会期間中は、愛犬のエアロがお務めを果たしました。


<参考リンク>
「浅田真央にまた新スポンサー 衰えぬ人気の秘密」 -日本経済新聞
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エアウィーヴ会長「浅田真央さんをCMに起用した理由」 ーNewsポストセブン 2020年6月16日

JOC(日本オリンピック委員会)


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*エアウィーブの会見の模様があります。

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by toramomo0926 | 2011-07-09 10:19 | フィギュアスケート


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