先輩が格を見せた女子SP -グランプリシリーズ中国杯
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グランプリシリーズ(GPS)中国杯、女子ショートプログラム(SP)も終了。
第一戦のスケートアメリカから安定感を見せているカロリーナ・コストナー選手が貫録の滑りでトップ、2位に先週のスケートカナダからしっかり気持ちを切り替えた長洲未来選手。3位には今季世界ジュニアの女王であり、スケートカナダで優勝デビューを飾ったトゥクタミシェワ選手同様今季の台風の目と噂されるアデリーナ・ソトニコワ選手が入りました。村上佳菜子選手は新しい表現と難度を上げたジャンプに取り組み4位に食い込んでいます。

ISU Grand Prix Cup of China 2011
順位と得点詳細。
「Result」でそれぞれの種目の総合順位と総合得点が、
「Entries/Result Details」ではショートプログラム(SP)とフリーそれぞれの得点詳細が、
「Judges Scores」ではSP/フリーで各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。




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村上佳菜子は4位発進、コストナーがトップ=フィギュア中国杯・女子SP
 フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第3戦、中国杯が4日に上海で開幕し、女子ショートプログラム(SP)で、日本の村上佳菜子(中京大中京高)は53.09点で4位発進となった。スケートアメリカ2位のカロリーナ・コストナー(イタリア)が61.88点でトップに立ち、長洲未来(米国)が60.96点で2位につけた。世界ジュニア女王のアデリナ・ソトニコワ(ロシア)は53.74点で3位。

 村上は今季から新たに取り入れたトリプルフリップ-トリプルトゥループに挑戦するも回転不足の判定。続くトリプルループでもミスが出て、僅差で4位となった。GP2戦目となるコストナーは単独ジャンプでミスが出たが、トリプルトゥループ-トリプルトゥループを決め、高い演技構成点でスケートアメリカを上回る得点をマーク。先週のスケートカナダから連戦となる長洲もミスのない演技で60点台に乗せた。注目の15歳、ソトニコワは冒頭の連続ジャンプで転倒し、2位と7点差の3位となった。
 女子シングルのフリースケーティングは5日に行われる。

<主な順位>
1位:カロリーナ・コストナー(イタリア)61.88
2位:長洲未来(米国)60.96
3位:アデリナ・ソトニコワ(ロシア)53.74
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4位:村上佳菜子(日本)53.09

2011年11月5日 スポーツナビ

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1位はカロリーナ・コストナー選手!
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今季のカロリーナはいつになく(笑)安心して見られますね。今回はトリプルループ(3Lo)で手をついてしまいましたが、あとは全く危なげなくのびやかに滑り切りました。
荒川静香さんがループでのミスの際、「手をついただけならそれほど大きな減点にはならないが、ついた手が『支え』となったと見なされた場合には転倒扱いになり大幅に減点されることがある」と話していました。結局彼女は両手をついていることもあり1.4点減点されていますが、荒川さんは最近解説でこのようにルールや採点について詳しく話してくれるようになり、聞いていて興味深いです。男子の解説を担当する本田武史さんや田村岳斗さんは前からそういう感じでしたが、荒川さんも本当に「解説」って感じになってきてますね。

最初のトリプルトウループのコンビネーション(3T-3T)は素晴らしかったですね!ジャッジもGOE(出来栄えに対する加点・減点)を多く出しています。でもジャッジごとの採点では2点を出したジャッジが9人中6人(残りは全て1点)でも、結果的に加点は1.2点のみなんですね・・・。
ループの他はミスなく伸びやかに、余裕たっぷりともいえる滑りでした。長身の長い手足を存分に伸ばした大きな動き、あと彼女は背中の動きが非常に美しい。ちゃんと踊りの素養を身に着けているという感じで、どの瞬間も指先まできちんと美しいポジションを保っています。スケーティングも以前から定評がありますが相変わらずよく滑りますし、見ていて気持ち良かったです。
スケートアメリカではアリッサ・シズニー選手に僅差で敗れているだけに、今回は絶対優勝したいと思っていると思います。前回2位でしたから、ここで優勝すればファイナル進出は1番に決まります。その意気込みがプレッシャーにならないといいのですが、今季彼女は非常に落ち着いて見えるので、きっと良い演技をしてくれると思っています。頑張ってください!

Carolina Kostner 2011 CoC SP -Allegretto from Trio No. 2

地上波の実況で彼女はGPSに3試合エントリーしていると話していましたが、本当に3試合出ますかね?ここでファイナルを決めたら、ひょっとしたらスキップするかもしれないですね。


2位に長洲未来選手!
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先週のスケートカナダでは不本意な演技となってしまいましたが、今回きっちりと修正しパーフェクトに決めました!すごい!!
最初の3ループ(3Lo)もレイバックイナバウアーからの入り、しかも彼女のレイバックは非常に深いですからすごく見栄えがしますね。
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ルッツにはエッジエラーがついてしまっていますが、0.5点の減点で済んでいます。
スピンは全てレベル4認定、しかもレイバックスピンはレベル4の上に加点が1点もついてます。彼女のスピンは回転も速く軸も細くブレがないのが強み。もうすっかり彼女のセールスポイントになってますね。個人的にはミライちゃんがレイバックすると「待ってました!」という感じになります。
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試合から試合までの間が1週間しかなく、しかも初戦がうまくいかなかった場合、気持ちの切り替えや修正は大変だと思います。加えて時差の調整も行わねばなりません。相当頑張って練習したんでしょうね。
ちょっと夏よりも体ががっちりしている気もするんですが、ミライちゃんて去年もそんなだったような気もしますし、シーズンが深まれば自然と絞れてくると思います。

表情もすごく明るくなっていますし、このままの勢いでフリーを乗り切ってほしいものです。是非優勝を狙って思い切り行ってもらいたいです。頑張れミライちゃん!

Mirai Nagasu 2011 CoC SP -Danzarin by Tango Lorca



3位にはこれがシニアデビューの今季ジュニア世界女王、アデリーナ・ソトニコワ選手です!
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いい写真がない・・・(涙)

彼女の最大の武器は3ルッツ-3ループ(3Lz-3Lo)という女子ではまだ数人しか跳んでいないというジャンプ構成を持っていること。しかし彼女はその3Lzの着氷で転倒してしまいます。
しかもその武器のはずのルッツにエッジエラーがついていて、なんと2.1点も引かれているのです。これはびっくりしました。
今後彼女はエッジ矯正に取り組まない事には後々苦しむことになるんじゃないかと心配したのですが、ここまで大きく減点されるほどのエラーだとしたら、フリップで申請したら認定されるんじゃないか・・・?と素人は考えてしまいます(笑)。キムヨナ選手も最初フリップ-トウループのコンビネーションでエラーを付けられて、ルッツに変えたようなきがするんですけど(うろ覚えですが)。

情報によれば怪我の治りたて?ということで、自分自身ちょっと不安があったのかもしれませんね。また、世界ジュニアチャンピオンという看板、同年代で今年一緒にデビューしたトゥクタミシェワ選手の活躍の後に注目を一身に集めてのデビューとなり、なかなか精神的に大変だったのかもしれません。
しかしやっぱり大物の片鱗というのはそこかしこに見えました。
まず体の使い方が大きくダイナミックです。足を振り上げると何とも言えない存在感がグッと湧き出てくる。そして母国ロシアのバレエをきっちり教え込まれたであろう体の隅々まで神経の行きわたった演技。体を止める時もピタッとポジションが決まります。
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練習の時の写真らしいですが、足長っ!!ポジションも軸足がまっすぐでとてもきれいです

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スピンも素晴らしかった。ドーナツスピンは、ポジションを取ってから加速するという凄い技を持っています。またこの写真のようにキャッチフットの体勢で下を向くなど、個性的なポジションも見ていて面白い。
ビールマンスピンでは、浅田真央選手と同様ワンハンドも成功させていました。

これは凄い人が出てきたという感じ。既に貫録すら感じます。ジャンプのミスは大きかったですがそれでも3位にいますし、フリーでジャンプを成功させて完璧に滑れば、優勝も充分あり得ます。
順位よりも凄みのほうを感じてしまいました。シニアデビューで「ボレロ」を選ぶという度胸にも。

ボレロって演じる人を選ぶというか、曲が演者に一定以上の能力を求める曲だと思うんです。中途半端な演技では曲負けしてしまうし単調で退屈にすら感じられてしまう曲です。それを(重厚さが緩和されるピアノアレンジとはいえ)選んでくるという度胸と自信(コーチ含む)というのをはっきりと感じとりました。
やはり今年の女子フィギュアは、昨年のような小康状態(安藤選手は素晴らしかったけど)という感じにはならなそうですね。楽しみです。

Adelina Sotnikova 2011 CoC SP -Bolero



村上佳菜子選手は4位スタートです。
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佳菜子SP4位 新調した靴に違和感…フィギュア
 ◆フィギュアスケート GPシリーズ第3戦中国杯(4日・上海) 男子ショートプログラム(SP)を行い、GP初優勝を狙う羽生結弦(ゆづる、16)=東北高=が4回転ジャンプを決め、自己ベストを更新する81・37点で2位につけた。昨季GPファイナル2位の織田信成(24)=関大大学院=は77・65点で4位となり、昨季世界選手権3位のアルツール・ガチンスキー(18)=ロシア=が81・64点で首位。女子SPは16歳の村上佳菜子(中京大中京高)が53・09点で4位だった。

 試練のシーズンは涙の幕開けだった。あえて苦手な技で構成したSPは序盤でジャンプのミスが響き、首位とは8.79点の大差がついた。「プログラムが難しいので、すごく不安で演技するのが怖かった」とリンクを降りると涙をこぼした。

 冒頭の2連続3回転は昨季から難度を上げ、成功率の低い3回転フリップ―3回転トーループに挑戦。トーループで回転不足を取られ、苦手の3回転ループは2回転の判定に。9月に替えたスケート靴に違和感もあり、「ジャンプは全部よくなかった」と肩を落とした。

 昨季のSPは軽快なリズムで踊ったが、今季はバイオリンの調べに乗せて悲哀や苦しみを表現。山田満知子コーチは「将来も考え、逃げずに勝負する。悪い時も覚悟の上」と高いハードルを課す。大人の女性を演じるフリーで逆転の表彰台にかける。

2011年11月5日 スポーツ報知
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佳菜子ちゃんも今季は新しい方向性を模索していますね。下から強力な新人が2人も参入してきて、早くもシニア経験者としての演技を見せなければならない立場に立たされています。去年は毎回弾けるような笑顔を振りまいていた彼女が、今回演技前と演技後にそれぞれ泣きそうになっていたのが痛々しかったです。

ただ、真央選手の時にも思ったんですが、無理に「大人の演技」をしようとせずともいいと思うんですよね。
今季バイオリンの哀愁あるメロディの曲に挑戦していて、それは勿論今後の糧になり表現の幅も広がると思いますので頑張ってほしいですが、無理に自分を「大人っぽく、大人っぽく」と精神的に駆り立てるようなことはしてほしくないな、という気持ちです。
それは周りで「色気がなければ表現力無し」とでも言わんばかりに「妖艶さ」「大人の演技(と言いつつ求めるのは結局お色気)」を要求するマスコミ(日本)の非常に悪いところでもあるんですが。
真央選手も最初はインタビューでの言動も含めて「もっと大人に」と思っていた時期があったそうですが、無理があると却って不自然になるとのことで、ある時から無理に大人になろうとするのを辞めたそうです。ですが今の真央選手はとても自然に女性らしい立ち居振る舞いと演技ができるようになっています。
佳菜子ちゃんも自分の個性を封じ込めることなく、あまり思いつめないでほしいなと思うところです。佳菜子ちゃんのあの明るさは他の選手にはないものですし。
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ですが今回のSPは「難しい」と話していますが、見たところこなしきれないほどではないというか、完成形が見えるものをきちんと出してきていますよね。3フリップー3トウループ(3F-3T)の挑戦はありましたが正直かなり早くに作り上げてきたなという感じですし、今回回転不足は取られましたがこれから試合で跳んで行って磨き上げていくしかなく、時間はかかります。そこは腹を決めて長期戦としてやっていくしかないです。
ただし、トウループに戻すようなことはしないでほしいと思います。試合で跳び続けてこそ跳べるようになるので、失敗してもあきらめないことが肝心です。彼女もそれはよく分かっているのでしょう、今季のテーマは「諦めない」だそうなので、きっと感覚をしっかりつかんでくれると思います。
フリーも頑張ってください!

Kanako Murakami 2011 CoC SP -Violin Muse



6位に地元中国のビンワ・ゲン選手が入りました。
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日本の放送では漢字名を音読みした「コウ・ヒョウワ」と呼ばれているのですが、これは英語の呼び方に統一してもらえないですかね・・・ここまで全く違う音になってしまうと全く分からず、去年など同一人物とわかるまでに若干タイムラグがありましたし。しかも中国語でも「コウ・ヒョウワ」とは発音しませんからね。こういうのは困ります。

ところでビンワちゃん、去年よりいくらか背が伸びたのかスタイルがすっきりして、美人さんになってました!
そして前から滑りやジャンプはきれいだったですが今季更に洗練されて、演技中には笑顔も出て、素晴らしかったです。
スピンもとてもきれいでしたし、レイバックイナバウアーからのダブルアクセル(2A)の幅が凄かった。良いジャンプを跳んでます。
レイバックスピンも体の柔らかさが充分アピールされていて、すごくいい演技だったと思います。
中国女子もいい選手が増えてますね。ソチ五輪前くらいにはかなりいい選手がそろってるかもしれません。ソチ後の平昌五輪の頃には、結構強い選手が生まれてそうな感じですね。
フリーも頑張ってください!

Bingwa Geng 2011 CoC SP -The Umbrellas of Cherbourg



8位にクリスティーナ・ガオ選手!
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彼女も今後が楽しみな17歳。佳菜子ちゃんと同年代ですね。
コーチがブライアン・オーサーで振り付けがデイヴィッド・ウィルソンというまさにチーム・ヨナ的なメンツですね。彼女自身キム選手と同じような長身で手足が長く東洋系の顔立ち。ジャンプの跳び方などそっくりです。
ですが彼女はまだ発展途上な感じですね。これから更にこの二人に磨かれていったらよい選手になりそう。衣装も素敵です。フィギュア選手としてスタイルの良さは大きな武器になりますし、これからスピンなどをもっと磨いていったら、チームアメリカの強力な戦力になる可能性充分です。頑張ってください!

Christina Gao 2011 CoC SP -To Love You More

2Aでの転倒が本当に惜しい。アクセルは苦手なのだそうですが、SP、フリーともに絶対に入れなければならないジャンプなので、是非頑張って克服してください!!


クセニア・マカロワ選手は9位。
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彼女が今季このようなスタートになると誰が予想したでしょうか。私にとってすごく驚きでした。彼女は若いですがもう体の成長のヤマは超えているように見えましたし、今季も彼女は強気に、ジャッジとファンを魅惑すると思っていたからです。彼女の本格的なブレイクは今年だろうと思っていたので驚いています。ケガでもしているのでしょうか。
スケートアメリカに続いて彼女はコンビネーションジャンプを成功させることが出来ませんでした。そして次のループジャンプでもタイミングを取ってくるっと回るしぐさが壁に近づきすぎたのか途切れてしまい、結局2回転に抜けてしまいます。
それでもスピンやステップではレベル3やレベル4を取るなどさすがというところを見せましたが、PCSは6点台が目立つなど低めに抑えられてしまいました。
彼女に何が起こっているのでしょう?怪我があるならきちんと直して心身ともにリフレッシュする時間が必要だと思います。彼女もソチ五輪でメダル候補となる選手なのです。不安があるところはクリアにして、大切にキャリアを積んでいって欲しいと思います。
正直ファイナルはもう難しいと思いますが、フリーで良い演技ができれば、国内選手権や欧州選手権に向けての足掛かりになりますし自信にもなると思います。是非フリーでは小悪魔的なモンローを演じきってほしいと思います。頑張ってください!

Ksenia Makarova 2011 CoC SP -Maria And The Violin's String


男子も女子もフリーでの勝負が非常に楽しみになってきました。どちらもミスしたら負けるというガチンコの戦いになりそうです。やっぱりスポーツはこうでなくちゃいけません。
今夜のフリーが楽しみです。なるべく選手を多く流してほしいけど、煽りVTRとかスタジオトークとかでだいぶ削られてしまうんだろうなあ・・・男女合わせて2時間というのがすでに無理がありますし。
GPSもJ-Sportsで放映してもらえないでしょうかね…(涙)


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by toramomo0926 | 2011-11-05 12:50 | フィギュアスケート


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