パトリック・チャン選手、アクシデントがありながらも首位を守る -2011グランプリファイナル
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グランプリファイナル(GPF)男子シングル・ショートプログラム(SP)も行われました。
男子も17歳になったばかりの羽生結弦選手から26歳のジェレミー・アボット選手まで幅広い年齢層で、アジア(日本)2人、北米2人、欧州2人といろんな意味でバランスのいいメンツが揃っての戦いとなりました。


ISU Grand Prix Figure Skating Final 2011
順位と得点詳細。
「Result」でそれぞれの種目の総合順位と総合得点が、
「Entries/Result Details」ではショートプログラム(SP)とフリーそれぞれの得点詳細が、
「Judges Scores」ではSP/フリーで各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。




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羽生が4位、高橋は5位 チャンがトップ=フィギュアGPファイナル・男子SP
 フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ上位6名が出場するGPファイナルは9日(日本時間10日)、カナダのケベックシティで男子シングルのショートプログラム(SP)が行われ、日本の羽生結弦(東北高)は79.33点で4位、高橋大輔(関大大学院)は76.49点で5位発進となった。トップは世界チャンピオンのパトリック・チャン(カナダ)、2位にジェレミー・アボット(米国)がつけた。

 男子はアボットを除く5選手がSPから4回転を入れる構成で臨んだ。羽生は4回転でミスがあったが、残り2つのジャンプは確実に決めた。シーズンベストには及ばなかったが、3位とは僅差の4位につけた。高橋は冒頭、これまで長らくSPに入れていなかった4回転トゥループにチャレンジしたが両足着氷で回転不足判定。トリプルアクセルは決めたが、トリプルルッツの着氷が乱れてコンビネーションジャンプにならず、技術点で大きく後れを取った。

 男子シングルのフリースケーティングは10日(日本時間11日)に行われる。

<結果>
1位:パトリック・チャン(カナダ)86.63
2位:ジェレミー・アボット(米国)82.66
3位:ハビエル・フェルナンデス(スペイン)81.26
4位:羽生結弦(日本)79.33
5位:高橋大輔(日本)76.49
6位:ミハル・ブレジナ(チェコ)75.26

2011年12月10日 スポーツナビ

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1位はパトリック・チャン選手!
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チャン、フェンス激突しても首位「調子いい」
 チャンが驚きのミスを犯しながら好発進した。

 最初に跳んだ高難度の4回転―3回転の連続ジャンプは決まったが、3回転の着氷後に近づきすぎたフェンスに激突。演技後は頭を抱えて苦笑いした。「調子はいい」との言葉通り、2連覇へ大きく前進。大会前はカナダへの不満を漏らしたインタビュー記事が波紋を広げたが、地元ファンの温かい声援を追い風に演技を楽しんでいる。

2011年12月10日 スポニチアネックス

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冒頭で素晴らしく美しい4回転トウループ(4T)を跳んだのですが、このジャンプを4-3のコンビネーションジャンプにしようと試み、しかし最初のジャンプが既にリンクの端に近づきすぎていたためセカンドジャンプを着氷した途端にフェンスに体がぶつかり転倒してしまいました。本当にびっくりしました。
その後は表情も特につらそうにすることなく最後まできちんと滑り切り、演技終了後も普通にしていたので、恐らく怪我はなかったようです。安心しました。

ですがやっぱりチャン選手の得点は総じて高い、というかミスをしても減点されないんですよね・・・
その問題の4-3ですが、回転は足りていたのかもしれませんがフェンスにぶつかってしりもちをついて転んでいるのです。転倒は無条件でマイナス1点になり、更にそのジャンプの基礎点からGOE(出来栄えの良し悪しによってジャッジが+3~-3点までの間で加点・減点を与える)の減点として総じて-3となるのがふつうです。お手付きでも-2にされる場合もあります。
ですが、チャン選手のGOEでは、あれだけの転倒でありながら-1しかつけていないジャッジがいるのです。
浅田真央選手などは一見ミスに見えないような軽い両足着氷(つま先がちょっとついたくらい)のジャンプでもGOEで-3を付けるジャッジがいたりするのに(これも不当だと思う)、明らかな転倒なのに-1しかつけない人がいる。
彼の採点ではこういうことが非常に多いのです。ステップで転ぼうが複数ジャンプをミスろうが全く痛くもかゆくもないという点の付き方になる事が。
彼が本当に優れた選手だというのは疑いありませんが、こういうことをされると(昔のキムヨナ選手と同じように)彼が努力して勝ち取ったはずの得点や順位(評価)、ひいては演技そのものまでをも素直に素晴らしいと思えなくなってきそうな気がするのがすごく嫌です。

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パトリック・チャン選手の得点表(クリックで多少拡大します)。
赤い枠で囲ってあるのが転倒のあった4-3のコンビネーションジャンプ。-1をつけているジャッジが2人います。-2の人もいて、原則通り-3を付けているジャッジは9人中4人しかいません。
GOEはジャッジが個別につけた平均値になるので、結局彼の減点は2.29で済んでいます。


一方、4回転サルコウで転倒したミハル・ブレジナ選手の得点表を見ると、
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ジャッジは全員きれいに原則通り-3を付けています。当然最終的な減点も-3.00となり、チャン選手より多い(というかチャン選手が減点が少ない)状態になっています。

こういうことをされるのが一番腹が立ちます。
チャン選手はこんな保険をかけなくても充分優勝する実力のある選手です。選手にも失礼だと思いますしファンや、フィギュアスケートという競技そのものをバカにしていると感じるので本当に嫌です。
カナダ開催なので彼には「地の利」(これもどうかと思うが)が働くだろうなということは思っていましたが、こういう基本原則の運用を選手によって変えるというのだけはやってはいけないことです。それは競技への信頼を失わせ、競技を殺すのと同じです。偏見は持ちたくないけれど、北米は特にそういう傾向が強い気がします。
せっかく本当に実力ある選手が揃っているのだからこんな興ざめな、見え透いたことはしないで、選手を信頼して公平な採点・評価をしてほしいと思います。

今日のフリーではきっときれいな4-3を決めてくれると思います。このまま優勝なるか?というのが注目ですね。
頑張って下さい!

ところで、チャン選手は一体何を言ったんでしょうか・・・・・・


Patrick Chan 2011 Grand Prix Final SP -Take 5



2位はジェレミー・アボット選手!!
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昨日ご紹介した、彼のコーチをしている佐藤有香さんとジェイソン・ダンジェンさんのインタビューで「彼の今シーズンのゴールは、実力を出した滑りをちゃんと見せること」とダンジェンさんが話していたのですが、今季の彼はまさにそういう戦い方をしていますね。無理にSPから4回転を入れることをせず、全体的に質の高い演技でまとめ、彼の持ち味である美しく伸びのあるスケーティング技術を強くアピールする。そして曲や振付にコミカルな色をつけて、端正な滑りをする選手がおちいりがちな「凄いけど淡々としすぎる」というムードを払拭しています。
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フリーでは4回転を入れてくるでしょうか?手堅く優勝を狙って回避するか?どうなるかわかりませんが、前述の通り何をやっても減点の影響が殆どない(笑)チャン選手が上にいるとなれば、思い切って4回転を跳んできてほしいなと思いますね。頑張って下さい!


Jeremy Abbott 2011 Grand Prix Final SP -Bei mir bist du schoen/Swing Kids



3位はハビエル・フェルナンデス選手!大活躍です!!
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彼は4回転を3回転みたいに簡単に跳びますね~。うっかりしてると見逃しちゃいそうになりますね。素晴らしいです。落ち着き払って決めています。GOEで1.43もの高得点がついています。
ですが次の3ルッツ(3Lz)からのコンビネーションで軸が外れたようになってしまい、両方のジャンプでオーバーターンのようになってしまいました。分からないものですね~。
ですがその他は大きなミスなくまとめあげて表彰台や優勝も狙える位置にきっちりつけました。彼は今季本当に別人のような躍進を見せていますね。
フリーでもこの落ち着きを持って望めれば、少なくとも表彰台はかなり確実なものになるでしょう。ファイナルに進出したスペイン人は彼が初めて。是非初表彰台も狙ってほしいですね。
頑張って下さい!!


Javier Fernandez 2011 Grand Prix Final SP -I Love Paris/Petit Fleur



羽生結弦選手は4位スタート!
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<フィギュア>17歳羽生、成長の跡 SP4位健闘
 初のGPファイナル進出を果たした羽生が、SPで日本男子最上位の4位と健闘した。「ここにいられるだけで光栄だが、そこで自分の演技をするのがもっと大事」。そう語っていた羽生だが、実戦を一度こなし、さらなる上昇への手応えもつかんだ一戦になった。

 冒頭の4回転-3回転は、前半の着氷で左手を突いてしまい、コンビネーションにならなかった。「直前の公式練習の時から会場の歓声に驚いてしまい、4回転の感覚が合わなかった」。だが、最後に跳んだ3回転ルッツの後に3回転トーループを付け加えて、最低限の得点は確保した。「これまで4回転のコンビが決まっていないので、GPシリーズで学習した」と謙遜したが、立派な成長の跡だろう。

 「歓声自体はうれしい。フリーでは、自分に向けられたつもりで味方に付けたい」。17歳の新星は大舞台にも物おじすることなく、フリーに向け、気合を入れ直した。【芳賀竜也】

2011年12月10日 毎日新聞

羽生「びっくりした」大歓声に動揺…4回転ミス
 4位と出遅れた羽生の表情はさえなかった。公式練習で決まっていた冒頭の4回転トーループで着氷が大きく乱れるミス。GP初優勝を飾った11月のロシア杯と同じ失敗に「かなり悔しい」と肩を落とした。

 原因は直前の6分間練習にあった。4回転を跳ぼうとした瞬間に大歓声が耳に入り「びっくりした」。動揺を引きずって1回も成功することなく本番を迎え「感覚が悪いな」との不安は的中した。ただ、ほかのジャンプやスピンで着実に得点したのは成長の証だろう。

 浅田の母親の訃報を受けて迎えた大会。仙台市内の自宅が被災した東日本大震災後のつらい記憶が重なった。それでも7日に17歳になったばかりの成長株は踏ん張った。首位のチャンとは7・30点の大差で日本男子初の優勝は厳しくなったが、2位アボットとは3・33点差。メダルのチャンスは十分ある。

2011年12月10日 スポニチアネックス

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6分間練習の歓声に驚いたって凄いですね。地元のチャン選手への声援は確かにすごかったけど客席自体はそれほど多くなさそうだったし、空席も結構目立ったんですが、きっと数というより熱量がすごかったんでしょうね(笑)。

4回転はさきのロシア杯の時と同じように着氷の直前で軸が外れかかるような回転の仕方になってしまったけれど、今回はステップアウトにはなったものの転倒しなかったのは大きかったと思います。
その後美しいトリプルアクセル(3A)を決めて、4回転につける予定だったコンビネーションを最後のジャンプにつけるというロシア杯と全く同じ流れをしっかりやりきりました。
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今回少しスピンのスピードがなかったような気もしますが、毎回全力を出し切りエネルギッシュかつ情熱的に、でもどこか醒めた感じで演じ切る彼のスタイルは毎回見入ってしまいます。
フリーのロミオとジュリエットは本当に好きなので、今回クリーンな演技が見られるといいと楽しみにしています。
まだまだ表彰台は充分狙える位置です。是非頑張ってメダルを手にしてほしいです!頑張って下さい!!


Yuzuru Hanyu 2011 Grand Prix Final SP -Etude in D Sharp Minor



優勝候補の高橋大輔選手はまさかの5位スタートです。悲しい。
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高橋大輔、4回転決められず/フィギュア
日刊スポーツ 12月10日(土)13時11分配信
<フィギュアスケート:グランプリファイナル>◇9日◇カナダ・ケベック
 ショートプログラム(SP)から果敢に挑んだ4回転ジャンプだったが、両足着氷で決めることはできなかった。その影響もあって、珍しく3-3回転の連続ジャンプでも失敗。得点が伸びず、高橋大輔(25=関大大学院)は「見ての通り。良くなかった」と首をひねった。
 ただ、成功こそしなかったものの「ここで経験できたことは次につながる」と、SPで4回転に挑んだことを前向きにとらえた。順位は6人中5番目だが「ここから落ちてもそんなに変わらない。気持ちの面で思い切りやりたい」と、開き直ってフリーに臨む。

2011年12月10日 日刊スポーツ

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SPから4回転は入れてくるかどうかと思っていたら、トウループを入れてきましたね。
今回優勝したいということを何度も言っていたので、SPは3-3で確実に行くかな、と思ったんですが挑戦しました。
それは成功しても失敗してもという「折り込み済み」のものなのでどちらでもいいと思っていたのですが、3回転ルッツにコンビネーションをつけられず、SPの演技要素を満たせなかったのは痛かった・・・。4回転も回転不足で2点以上GOEで減点されてしまっています。
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大抵の選手はSPにおいて、コンビネーションジャンプは冒頭に組み込みます。
最初に跳んでおけば、万一コンビネーションがつけられなくても(今回の羽生選手のように)アクセル以外のジャンプに再度組み込み減点を最小限に抑えるチャンスが残されるからです。
ですが高橋選手は4回転を構成に入れました。彼はまだ4回転にコンビネーションジャンプを試合でつけられるほどにはジャンプが戻ってきていません。そして4回転は体力を消耗するので冒頭に入れたいということになると、とうしても4回転の単発ジャンプを冒頭に跳ぶことになり、コンビネーションジャンプは失敗すると今回のように取り返しのつかないことになります。
これは選手がこの試合のハードルをどこに設定するかということにかかってくるので今回の選択についてどうこう言うつもりはないのですが、彼にとって何を一番のプライオリティとして今回のファイナルに臨んだのかな、ということはちょっと考えました。
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彼はまだグランプリファイナルで優勝していないので(日本男子で優勝した選手はまだいない)、このタイトルは是非取りたいと話していました。なので安全策を取ってSPは4回転を入れないという選択も充分ありえました。
ですが彼は4回転についても並々ならぬ思い入れを持っています。回転不足による減点を恐れて一時4回転を跳ぶ男子が激減した時期にも、「自分の理想の演技には4回転は必ず入る」と言って跳び続けました。

今回の演技構成を見て、彼のフィギュア道的な信念を感じました。
タイトルだけを取ろうと思えば今の状態でSPから4回転を入れるのは無謀という声もあるかもしれませんが、彼はやはり4回転を跳んだ上でタイトルを取りたいということなんでしょうね。グランプリファイナルというタイトルにおいては自分の出来ることを全部やった上で取りたいという気持ちでの決断だったのでしょう。
演技後のインタビューで「もうあまり下がることもないので(笑)フリーも攻める気持ちでやる」と話していた高橋選手。ギラギラするような、一方で内に秘めたような魅惑的なブルースを演じきって、カナダのお客さんを熱狂させてほしいと思います。
頑張って下さい!!


Daisuke Takahashi 2011 Grand Prix Final SP -In the garden of souls



ミハル・ブレジナ選手は6位でした。
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先日のロシア杯よりは体の動きは随分いいように思ったんですが、点が伸びませんでしたね。
3Aはいつものように素晴らしくきれいに決まったんですが、コンビネーションジャンプの最初のジャンプでオーバーターンしてしまい、最後のジャンプで4Sを試みるも転倒してしまいました。ですが回転不足は取られず、回り切ってから転倒しているということで4回転としては認定されています。とはいえばっちり-3点となってますが(上の採点表参照)。
4回転を最後のジャンプに入れてきたというのは度胸がありますね。
フリーでは4回転に挑戦してくると思いますが、彼の高くて着氷の美しいジャンプで是非巻き返してほしいと思います。
なんかまだ本調子ではなさそうな気もするんですが、怪我とか体調悪いとかあるんでしょうかね?無理しないようにしてほしいですが、今のベストを尽くせますように。


ということで、改めて見てみると、1位から3位までは北米の選手&カナダのコーチについている選手になったのは偶然だとは思うのですが(汗)上位陣はそれほど大きな点の開きはないですし、いくらでも順位は変わっていきそうですよね。フリーでは是非ガチンコの、筋の通らない採点など無しの熱い戦いを見たいと思います。
皆さん頑張って下さい!!

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浅田真央選手のお母様がお亡くなりになったのを受けて、日本選手はジャージに喪章をつけて試合に臨みました。


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by toramomo0926 | 2011-12-10 22:10 | フィギュアスケート


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