浅田真央選手の著書、発売中止に
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2月8日にポプラ社より発売予定だった浅田真央選手の著書「大丈夫、きっと明日はできる」が発売中止になったと発表がありました。
(著者名には佐藤雅美さんという方の名前もあるので、実際は真央選手の発言をこの方がまとめたと思われます)


発売中止の理由は、下記のポプラ社からの発表の通り「一部宣伝方法に著者ご本人の意にそぐわない部分がございましたので」ということしか公には明らかになっていません。
よってその「宣伝方法」が何を指すかについては、今のところあくまで推測の域を出ません。
恐らく真央選手サイドは、これ以上の情報は今後も出さないだろうと思います。


従って、これからこの件について現在知りうる情報をもとに私個人の考えや感じたことを以下に書きますが、そのすべては上記の前提があった上でのものである(これが真相と決まったわけではない)ことをご承知の上、お読みいただければ幸いです。
不確かな前提に立った文章、個人的な感想が中心になりますので、そういう状況であれこれ論じることをご不快に感じられる場合もあると思います。そのような懸念が少しでもある場合にはこれ以上お読みにならず、スルー頂けますようお願い致します。





ポプラ社からの発表は以下の通り。

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真央選手のコメント。
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「理由」としてこの本につけられた「帯」の内容があるのではないかという意見がネット上にありました。
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「ママ、ほんとうにありがとう。」「何度、ありがとうと言っても足りません。」という文言があります。
「何度~」は、真央選手がお母様である浅田匡子さんの葬儀後に発表されたコメントからの抜粋と思われます。また、予約開始当時にはなかった「ママからの言葉(メッセージ)」というような副題がつけられています。
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真央選手の誕生日は9月25日ですが、10月25日生まれとなっています。


これを見たら、この本は真央選手とお母様の親子関係やこれまでの母子の歩みや、母の話した言葉などを中心に書かれた本かと思う方が多いでしょう。
ですが、予約開始時に公開されていた目次の項目を見ると、全く違うことがわかります。
これは母子の感動的な物語ではなく、真央選手がアスリートとしてどういう風に自らを律し、厳しい世界の戦いを乗り切ってきているかというメソッドを重点的に取り上げた内容で、アスリート以外にも自己啓発本として応用できるような内容のものだというのがわかります。
母親への感謝というものもありますが、それは真央選手が競技活動をする上で多大な支えになっている存在に対しての自然なものであり、殊更にそれを取り上げたものではなさそうです。

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バンクーバーの涙からまる2年。あの悔し涙から浅田真央はどのように成長したのか?
数々の世界大会、オリンピックを経験したからこそ得ることができた、プレッシャーの克服、家族の絆、マスコミ・コーチ・仲間との接し方、精神力の鍛え方、母親への感謝などを中心に語りおろす。「受け入れて乗り越える」「後ろ向きな言葉は使わない」を実践する自己啓発書としても必読の書。

【目次】
第1章 自分の心に嘘をつかない憧れの存在を見つける 好きなことを、好きなだけ 好きを極める

第2章 頑張り続ける理由悔しいから頑張れた 自分より上の人を目標にする 仲間を見つけて楽しむ喜んでもらいたい人が見つかると、人は強くなれる 悔しい気持ちをバネにする みんなの笑顔で元気になれる精一杯楽しむ

第3章 日々の生活において大切なこと後ろ向きな言葉は使わない 長所を伸ばす 自分という軸を持つ 環境を言い訳にしない

第4章 目標設定について一年の目標を持つひと試合ごとに目標を立てる 毎日のサイクルをつくる 毎日の目標をもつ 休まない よく食べ、よく眠り、よく忘れる 一日の終わりは、必ず気持ちよく締める

第5章 オリンピックイヤーから学んだこと努力を記録する 昨日の自分は、決して今日の自分を裏切らない 練習は嘘をつかない いま、やるべきことに集中する「いつもどおり」を通す無心の境地 がんばれば絶対できる やるっきゃない 自分らしくがんばれば、それでいい 日進月歩 変わる勇気をもつ 大丈夫、きっと明日はできる! 母への感謝

楽天ブックスより

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新刊の売り上げには、表紙は勿論ですがこの「帯」が非常に重要な役割を果たすと聞いたことがあります。
その本の「売り」とするところをキャッチコピー的に大きく載せ、一人でも多くの人に本を手に取らせ興味を持たせる努力をする。
自分に照らして考えても、本を手に取ろうとするときに帯の内容はその本の内容を瞬時に理解するのには非常に重要なものだという気持ちがあります。
ですがこの本の帯には、本の内容とはズレたことが書いてある。しかも母親の死を餌にするような印象すら与えかねない内容です。

重ねて言いますが、真央選手やご家族に発売中止を決断させたのがこの帯とポスターの内容だったかは分かりません。
しかし、もし真央選手やご家族へ事前に承諾を得ずにポプラ社がこのような帯を「『タイムリー』で人の目を引く=売上アップにつながる」という理由(自分にはこの内容の本でこの文言を帯に据える理由は他に考え付かない)で作成し、真央選手やご家族が出来上がった帯を見て、書店にこのようなポスターが既に出回り貼られているという事実を知ったとしたら、出版社に対しての信頼を無くして全て引き上げるという気持ちになるのは充分理解できます。

全日本であれだけ気丈に振る舞い、誇り高い態度と演技を見せていた真央選手が、このポスターや帯を目にした時にどんなにショックを受け、落胆したかということを思うだけで本当に辛く、うんざりします。
あの時の真央選手の強くて気高い志と、固い決意のもとに滑り切った演技を一気に安っぽく、下世話なものに引き下ろされたようで本当に腹が立ちます。
これ以上今の真央選手に余計なことで心労をかけないでほしい。真央選手のご家族にも。

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真央選手は人に対して嫌な顔をしたり不満そうな態度をしたことはこれまでただの一度もなく、基本的に全て「許して」来ました。
本当は腹立たしく思ったり傷ついたりすることは沢山あったでしょうが、表立っては何も言いません。
2008年に17歳で世界女王になった時、招かれたフジテレビのスタジオに自分が転倒した姿のパネルがスタジオ中央に、画面の横幅を埋めるくらいに引き伸ばされたものが据えられ、その後ろでインタビューを受けるという世界一になったとは思えない酷い扱いを受けた時にも、顔色一つ変えず淡々と受け答えをしていました。
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それほど忍耐強く、人に気を遣う彼女が、何が原因であったにしろ今回発売直前の書籍を発売延期ではなく中止にしたことは、余程の事だと思っていいでしょう。既に10万部以上の予約があるものを (既に製本も殆ど終わっているものを) 全て白紙にすることの影響を考えない筈がないからです。
(*製本についてはまだ印刷に入っていないという話が複数出ているので、そのあたりはセーフだったのかもしれません。本当にギリギリの判断だったのでしょう)
ですが彼女はそれを押しても、どうしても許せなかったんだと思います。

もしこれが自分に関してのことならば、もしかしたら彼女は今回も「許した」かもしれません。
ですが、彼女の大切な母親をダシにして自分の本を売るというようなやり方は到底容認できなかったのではないかと推察されます。



「浅田真央ブランド」は売れますから、ポプラ社も予約時点で10万部を越したときにはホクホクしたことでしょう。そして母親の死を乗り越えて真央選手が全日本で優勝したことで、本の発売にはこれ以上ないタイミングだと思ったのでしょう。
12月の真央選手の一挙手一投足に日本中が注目し、真央選手の振る舞いと試合での戦いぶりは高く賞賛されました。
そこで、みんなが覚えている「何度、ありがとうと言っても足りません」という言葉を帯に据えることで、帯を作った時には「あの時の感動、熱狂をもう一度」という浅はかな商売っ気しかなかったんだろうと思います。酷いことを書いているようですが、間違っていないのではないでしょうか。そうでなければあんな無神経なことが出来るとは思えません。

ですが人が死ぬということはそういうことじゃない、母親を亡くすということは「感動」じゃない。そんな風に母の死を消費してほしくないしさせたくない、という真央選手(やご家族)の強い意志が今回の判断に感じられます。
真央選手のこの決定は、彼女自身の人としての誇り高さを示したと思いますが、一方で真央選手はこの重大な決定を下すことでポプラ社に、そして世間に人の尊厳みたいなものについて問うたようにも見えました。


目次を見た限りすごく興味深い内容で楽しみにしていたので発売中止は非常に残念ですが、真央選手の判断を支持したいと思います。彼女が不本意に思うものを見たいとは思わないし、影響はあるでしょうがそれは真央選手のせいではない。彼女の判断は正しかったと思います。


この件でポプラ社はじめ、全てのメディア、報道機関がその「伝え方」について考えてくれることを願います。

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真央「私の思いと異なる」初エッセー予約10万部超も発売中止
 フィギュアスケート女子・浅田真央(21)=中京大=の自身初だったエッセー「大丈夫、きっと明日はできる」の出版元・ポプラ社は12日、同書の発売を中止したと発表した。2月8日発売予定ながら、昨年暮れまでに10万部を超える予約が殺到。話題となっていたが、本の宣伝・告知が昨年12月に亡くなった真央の母・匡子さん(享年48歳)を前面に出すなど真央本人の意向に反したため、出荷直前で異例の中止となった。真央はこの日、自身のホームぺージで「私の思いと異なる」とコメントした。

 予約だけで10万部を超え、ミリオンセラー必至と注目された話題の本が、発売目前で「お蔵入り」となった。出版元のポプラ社はこの日、発売27日前に同社ホームページ上で発売中止を発表。「一部宣伝方法に、著書ご本人の意にそぐわない部分がございました」と説明し、関係各所への謝罪文を掲載した。真央本人もオフィシャルホームページを通じて「本の宣伝、告知について、私の思いと異なるもので進められたところがあり、出版を中止させていただくことになりました。大変申し訳ないですが、ご理解のほどよろしくお願いいたします」と、異例のコメントを出した。

 真央自身にとって初めて語り下ろしとなる予定だった同書は、2010年バンクーバー五輪で銀メダル獲得後、この2年間の日常生活で気をつかっていることや、目標設定をどう定めるか、日頃から考えている人生訓などを紹介。また、母・匡子さんへの感謝の気持ちなどさまざまなメッセージがつづられており、209ページ、税込み1365円の値段設定で、1年以上かけて制作が進められてきた。

 ところが、2月8日の発売日を前に宣伝・告知で問題が発生。全国書店などに配る予定だった販促用ポスターに「ママ、ほんとうにありがとう」などの文言が強調して使用され、浅田サイドの意に反した。本の制作も最終段階で店頭に並ぶ寸前だったが、中止にした。

 ポプラ社の担当者は「本の内容自体に虚偽はないが、亡くなられたお母様が、あたかも商売の道具にするかのように見えてしまう宣伝・告知をしたことが問題だった。大変、ご迷惑をおかけした。まずは関係各所におわびをしたい」と説明した。

 真央のマネジメント会社担当者は「ポプラ社に対しては不信感がある。発売中止になった本が今後、改めて同社から出版される予定はない」と話した。何よりも真央のメッセージを読みたかったファンにとっては残念な結果となってしまった。

 ◆「大丈夫、きっと明日はできる」 事前紹介では209ページ、5章で構成されているものだった。第1章の「自分の心に嘘をつかない」「憧れの存在を見つける」などから始まり、第5章ではバンクーバー五輪で学んだことを中心に語っている。「昨日の自分は、決して今日の自分を裏切らない」と力強い言葉が載っていた。

 ◆ポプラ社 1947年設立(資本金2400万円)。本社は東京・新宿。那須正幹「ズッコケ三人組」、原ゆたか「きかんしゃトーマス」シリーズなど児童書の出版を手がけ、近年は成人を対象にした書籍も発行。10年11月には、俳優の水嶋ヒロが、「齋藤智」のペンネームで応募した処女作「KAGEROU」が「第5回ポプラ社小説大賞」の大賞を受賞するなど話題にもなった。

2012年1月13日 スポーツ報知

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<参考リンク>
<お詫び>『大丈夫、きっと明日はできる』を発売中止にさせていただきます -ポプラ社
『大丈夫、きっと明日はできる』発売中止のお知らせ -浅田舞・真央 オフィシャルウェブサイト 2012年1月12日


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by toramomo0926 | 2012-01-12 15:34 | フィギュアスケート


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