アシュリー・ワグナー選手が初の全米女王に -2012全米選手権
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2012年全米選手権。
なんだかんだ言ってアメリカは男子も女子も層が厚いんですが、今回20歳のアシュリー・ワグナー選手が初の全米選手権優勝の栄冠を手にしました!2位には佐藤有香さん&ジェイソン・ダンジェンさんの指導のもと安定した実力を発揮するアリッサ・シズニー選手、3位にはこれまた若い17歳、シニア2年目のアグネス・ザワツキー選手が入り初の表彰台です!
そしてそして、ここ数年苦しんでいたキャロライン・ジャン選手が復活を予感させる演技で4位となりました!
おめでとうございます!!

2012 Prudential U.S. Figure Skating Championships
順位と得点詳細。
それぞれの種目の「Final」で総合順位と総合得点、およびショートプログラム(SP)とフリーそれぞれの得点と順位が見られます。
また、「Final」を開いた後、各選手の「Total Score」の右側にある「+」を開くと、SP/フリーで各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。



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ワグナー優勝、長洲は7位=全米フィギュア女子
 【ニューヨーク時事】フィギュアスケートの全米選手権は28日、カリフォルニア州サンノゼで女子フリーが行われ、アシュリー・ワグナーが123.96点をマークしてショートプログラム(SP)3位から逆転、合計187.02点で初優勝を遂げた。昨年覇者のアリサ・シズニーが180.00点で2位。SP5位の長洲未来は7位に終わった。

2012年1月29日 時事通信

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優勝はアシュリー・ワグナー選手!
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彼女の優勝は本当に、本当に嬉しい。
2007-2008シーズンに、あの澄んだグリーンの瞳をキラキラさせてシニアデビューしてきた美少女のアシュリーは、実力があるのにSPとフリーの演技をそろえることに非常に苦しむシーズンを重ねました。
特にフリー後半で一度ジャンプミスすると雪崩のようにミスを重ねてしまう、いわゆる「自爆癖」というものがありました。
SPが素晴らしくてもフリーをうまくまとめることができず、バンクーバー五輪も長洲未来選手、レイチェル・フラット選手、キャロライン・ジャン選手らとしのぎを削ったあげくにギリギリで切符を得ることが出来ず、その後も悔しい内容の試合が続いていました。

今大会、SPの際にアメリカで放映された小さな特集を見ました(こういうものをFluffと言うようです。日本のフィギュア放映で言うところの『煽りVTR』にあたりますが、アメリカの方が比べ物にならないほど質は高い)。
このインタビューで、彼女はこう話しています。
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「私はここ数シーズン、自分が『あとちょっとで…の女の子(the "almost" girl)』であるように感じていて、それにうんざりしたの。
あとちょっとで・・・ばっかり。あとちょっとで全米チャンピオン、あとちょっとでトップ2(出場枠の2枠、ってことでしょうか)、あとちょっとでナショナルチーム、あとちょっとで五輪出場・・・あとちょっと、あとちょっと。本当に近いところに来ているのに」


私もアシュリーには五輪に出てほしかったし(アメリカも3枠か4枠くらい欲しかったですよね)、彼女はもっと活躍できるはずなのにと残念に思うことが多かった。
なのでアシュリーが優勝した瞬間、これまでの彼女の戦いが真っ先に心に浮かびました。今季ものすごく安定して素晴らしい演技を見せてくれることが本当に嬉しかったし、いつも真面目に練習に取り組み、とても素直で温かい人柄の彼女が、全米チャンピオンというフィギュアスケーターのキャリアにおいて非常に重要なタイトルを取れたことを物凄く嬉しく思いました。
五輪後には体つきもびっくりするくらい引き締まり、すごくストイックにトレーニングしているんだろうなと思っていました。今季はピーク時よりも少し体型はしっかりしましたが、体重を戻したというよりもきっちりトレーニングして筋肉を付けたという感じでした。きっと彼女の今季の活躍は、そういう地道な努力があってこそのものなのでしょう。
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SPもとても素敵なのですが、今季のフリー「ブラック・スワン」は彼女の代表作になる事を確信する名プログラムですね。スパイラルの羽を広げるような振り付けはとても印象的ですし、音にぴったり合ったキレのあるドラマチックな内容は何度見ても飽きません。
彼女の努力が報われたことが本当に嬉しいです。
おめでとうアシュリー!世界選手権も頑張って下さい!!
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Ashley Wagner 2012 US Championship SP -Pollock


Ashley Wagner 2012 US Championship FS -Black Swan



2位にアリッサ・シズニー選手!
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グランプリファイナル(GPF)は怪我を押して出場していて、本人は何も口に出しませんがやはり辛そうで、そして悔しそうでした。
見ていてこちらも辛かったのですが、今回は怪我の影響は殆ど感じませんでしたね。
ですがやはり滑り込みが足りないという気持ちがあったのか、ちょっと緊張が強かったように思います。ディフェンディングチャンピオンとして出場するということでいろいろ考えることもあったのだろうと思います。この試合の結果で世界選手権への出場が決まりますし。
彼女も安藤美姫選手と同じように気持ちに余裕がないとお化粧が濃くなってしまうタイプなのでしょうか、今回もファイナルの時同様にチークの紅がちょっと強すぎて、彼女の健康的で清潔な美しさや清楚で品のある衣装にはちょっとそぐわないように感じました。ジャンプもちょっとこわごわ跳んでるというか、以前のような跳ぶのを怖がるような雰囲気がありました。すごく優美なプログラムなのですが、少し演技そのもののムードにも緊張感が生まれてしまっていました。
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とはいえ美しいスケーティングと文句なく世界一と言えるスピンの速さと軸のブレなさは鉄板です。ジャンプは調子の良し悪しがありますが、こういうしっかりした基本練習の賜物はきちんと選手を守ってくれますね。だからこそ彼女は多少ジャンプが悪くても成績をそこまで極端に落とすことはないんですよね。素晴らしいです。
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彼女とアシュリーが世界選手権に派遣されることが決定しました。まだひと月以上時間はありますのでこの後しっかり有香さんやダンジェンさんと調整を重ねて、世界選手権にはまた試合ということを忘れるような、うっとりする滑りを見せてくれることを楽しみにしています。
おめでとうございます!!

Ashley Wanger 2012 US Championship SP -La Vie en Rose



3位にはアグネス・ザワツキー選手!シニア2年目で全米ベスト3の快挙です!
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SPはまさに神演技でした。大きなキレのあるジャンプ、良く滑るスケーティング、スピードある演技。グランプリシリーズ(GPS)では精彩を欠き、うなだれていた彼女とは別人のようでした。プログラムも、曲は同じなんだけど同じプログラムとは思えないくらい出来に差がありました。
やはりGPSはシーズン初戦に近い感じですから、それを見て選手についてどうこう言えない感じなんだなあと改めて思いました。彼女は17歳ということで、GPSを見た時は昨季の金髪がブルネットになり(どちらが本当の髪の色なのだろう…)、身長もグッと伸びて体も随分がっちりしていたので、体形変化への対応で大変なのかもしれないなと思っていたのですが、思ったよりずっと早く彼女は自分のスケートを取り戻してきましたね。
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表彰式でアシュリーと抱き合ってお互いを祝福。

フリーは優勝が目の前にあるプレッシャーや最終滑走という難しさもありミスが出てしまいましたが、昨季4位、今季3位ととても良い結果を出し続けています。彼女も来季あたりからかなり強くなってきそうな予感!
来月の四大陸選手権にも出場しますし、今後の彼女には注目ですね。
おめでとうございます!!

Agnes Zawadzki 2012 US Championship SP -Harlem Nocturne/Whatever Lola Wants



4位はキャロライン・ジャン選手!!見事な復活を果たしました!
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ジャンプの矯正と成長による体形変化への対応に苦しみ、暫くキャリアが停滞していた彼女ですが、今大会では随分体が絞れていましたね。昔のジャン選手の顔に戻りつつあるように思いますし、表情も明るかったです。パールスピンも復活し、ジャンプも随分安定してきたようです。
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コーチは昨年1月からミシェル・クワンさんのお姉様についているのだそうです。ということは隣にいる男性はクワンさんの義兄=昨季キムヨナ選手を教えたピーター・オペガードコーチでしょうか。キム選手はオペガード氏とも今季は契約せず、今はコーチ無しということを少し前に聞いたのですけれど・・・練習はしているのでしょうか。まあこれはジャン選手には関係ないことですが(笑)。


諦めずにずっと頑張り続けた彼女の努力が報われようとしています。18歳になったということで、体の変化も落ち着いてくるでしょうし、ジャンプが軌道に乗ったらしっかりカムバックしてくれると信じています。
とにかく、彼女の笑顔が見られてよかった。おめでとうございます!!


Caroline Zhang 2012 US Championship FS -Allegro from Cello Concerto in B Minor



5位はクリスティーナ・ガオ選手!
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ブライアン・オーサーコーチが育てている17歳。まだジュニアの試合に出ていて、全米選手権は2年前から出場しています。
(元)コーチも同じで体つきも長身で似ているということで、(太田由希奈さんも話していましたが)キムヨナ選手とすごくダブることがありますね。でもガオ選手の方が今や背が高いのだそうで、2年前と比べて10cmくらい伸びているのだとか。手足が長くて羨ましいです(笑)。
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でも、ちょっとまだその長さを持て余し気味というか、せっかく大きく使える手足があるのにうまく使いきれていない感じがしますね。これからダンスやバレエのレッスンをもっと受けて、指先まで神経の行き届いた演技が出来るようになると、ソトニコワ選手のようなすごく動きが映える演技になると思います。
ジャンプはすごく軸がきれいなものを跳ぶので、これからが楽しみですね。頑張って下さい!


Christina Gao 2012 US Championship FS -Libertango

由希奈さんに「表情も評価の対象になるので、曲に合わせた強い表情を出来るようになるといいですね」と言われていました。確かに。でもジャンプが決まって嬉しかったんですよね。


6位はレイチェル・フラット選手!
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名門スタンフォード大学で学びつつ、トップレベルのアスリートも続けるという非常にタフな生活を続けている彼女。ですが非常に充実しているようですね。
昨季の中盤から使い始めたSPの「エデンの東」と、今季のフリー「火の鳥」の壮大な美しい音楽は、レイチェルの体全体を一杯に使ったダイナミックな演技スタイルに非常に良く合っています。
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今回彼女の演技を見ていて、演技そのものも良かったのですが、観客がものすごく盛り上がっていたのが非常に印象に残りました。彼女は非常にアメリカ市民に人気が高いんですね。文武両道の才媛として「若者のあるべき姿」を体現する彼女ですし、日本にはあまり入ってきませんが、インタビュー等での彼女の人柄が非常に魅力的なのかもしれません。すごく愛されてるなあ、という印象がすごく強いです。

6位という成績は彼女にしてみればちょっと不本意なのかもしれませんが、屈託ない笑顔を見せるレイチェルを見て、こちらまで嬉しくなりました。
お疲れ様でした!大変だと思いますが是非このままスケートを続けてほしいです。

Rachael Flatt 2012 US Championship FS -The Firebird



7位に長洲未来選手。
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今大会、ミライちゃんは全く元気がなかったですね。解説の太田由希奈さんも「調子が悪そうではないんですが・・・」みたいな感じで、ちょっとわからないという感じでしたね。
でもいつものミライちゃんのキレの良さとか、演技中にこぼれる笑顔とか、何よりミライちゃんから醸し出される「スケートが好き」という気持ち、モチベーションというものがあまり感じられず、なんとなく彼女と私たちの間に目に見えない幕のようなものがあるように見えました。何かあったのでしょうか?
キス&クライでもキャロルコーチの方を殆ど見ることなく、会話も殆どなかったように見えたので気になっています。友人は「スケートを楽しんでないように見える」と話し、心配していました。
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フリーの良い写真がない・・・


一応これで、ミライちゃんの今シーズンは(四大陸と世界選手権の補欠にはなっていますが)終了ということになってしまいました。非常に残念です。
彼女が今どういう状況で、何を考えているのかわかりませんが、よくご両親やコーチと話し合って自分でもよく考えて、少しでも良い方向に物事が向かうようにと願っています。集中できずに怪我をするという事のないようにだけは気を付けて、またあの弾けるような笑顔を演技で取り戻してほしいと思っています。


Mirai Nagasu 2012 US Championship FS -Adagio of Spartacus and Phrygia



アメリカ選手だけでもかなりドラマチックな大会となりました。見応えありましたね~。
若い選手も中堅もベテランも、こうやってみると実力ある選手が沢山いますよね。アメリカ選手に絶対的エースがいなくなったと(これはまあ男子を指すのかもしれないですが)言われていますが、アメリカは男女ともにやっぱり才能あふれる選手は多いなあと思います。
選手の皆様、お疲れ様でした!!

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by toramomo0926 | 2012-01-30 20:23 | フィギュアスケート


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