ジェレミー・アボット選手が2年ぶりに全米王者に -2012全米選手権
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全米選手権が終了。
男子シングルはジェレミー・アボット選手が別格という貫録を見せつける滑りで完全優勝、2年ぶりに全米チャンピオンに返り咲きました。
2位には今季より佐藤有香さん&ジェイソン・ダンジェンさんに師事し美しい滑りを取り戻したアダム・リッポン選手が大躍進、3位にはシニアデビュー以来2年連続の表彰台を勝ち取ったロス・マイナー選手!!そして、4位にはやはりコーチを変えて新しい環境のもと頑張っているアーミン・マーバヌーザデー選手が入りました!
皆さんおめでとうございます!!

2012 Prudential U.S. Figure Skating Championships
順位と得点詳細。
それぞれの種目の「Final」で総合順位と総合得点、およびショートプログラム(SP)とフリーそれぞれの得点と順位が見られます。
また、「Final」を開いた後、各選手の「Total Score」の右側にある「+」を開くと、SP/フリーで各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。




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アボットが優勝 全米選手権
 フィギュアスケートの全米選手権は29日、カリフォルニア州サンノゼで行われ、男子はショートプログラム1位のジェレミー・アボットがフリーもトップとなり、合計273・58点で2季ぶり3度目の優勝を果たした。

 アボットは2位のアダム・リッポンとともに3月の世界選手権(ニース=フランス)の代表に決まった。

2012年1月30日 共同通信

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優勝はジェレミー・アボット選手!
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今季の彼には自信を感じますね。成績を取りたいとかそういうこと以前に自分の滑りと演技に自信を持ってリンクに立っているように見えます。今大会でも、アメリカ選手としては世界選手権と同じくらいのステイタスを持つ重要な試合であるにも拘わらず、彼は一番リンクの上で心身ともに自由でいるように見えました。
そして今季の彼は、スケートを楽しんでいるという雰囲気がすごく出ているんですよね。彼のスケート愛が全身から放出されていて、多少のミスや転倒があってもあまり気になりません。彼がすごく楽しんでいるのがわかるから、痛々しい感じにならないのだと思います。今季の彼はそこまで大きな失敗はしないですけどね。
ショートプログラム(SP)のスウィングの曲調にも完全に入り込んで一体化していて、その軽やかさには「演技している、やって見せている」という空虚さがありません。本当に彼はスウィングしながら滑っている。そしてフリーのピアノシンフォニーは雄大かつ繊細な曲ですがそれにもぴったりと自分の体と心、振り付けを同化させていて、ジャンプ前に選手が必ず抱くであろう緊張感のようなものを一切出しません。
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また、彼の体の動き、身のこなしの美しさがプログラムを更に見栄えのよいものにさせ、演技そのものを大きく見せてジャッジや観客にアピールできるのも大きな強みです。
昨季のSPでフラメンコをやったときに、舞踊家で振付師のアントニオ・ナハーロさんにみっちり指導を受けたということで、特にフリーでは一つ一つの姿勢や指先までの動きが非常に美しく洗練されていて、文字通りどの瞬間を切り取っても美しいポジションを見せてくれています。
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そしてJSportsの解説の杉田秀男先生は、彼の滑りには氷を削ったりトウが引っかかったりするような雑音が一切なく、本当にしっかり氷を捉えた質の高いスケーティングだと絶賛されていました。そもそも彼は滑りの美しい選手でしたが、佐藤信夫・久美子コーチの愛娘である佐藤有香さんの基礎をしっかり押さえた指導が生きているとのこと。杉田先生は佐藤ファミリーの指導法について、派手なものに流されずしっかりきっちり基礎を教える素晴らしさというものを力説していらっしゃいました。確かに僅差で争った時に、そういう地力があると強い気がします。
でも本当に、フィギュアを知れば知るほど派手なジャンプとかよりも(それもすごく大事ですけど)「滑り」そのもので本当にうまい選手って分かってきますよね。初めて生で選手の滑りを(アイスショーでしたが)見た時も感じましたが、滑っているのを見ると誰が「本当に」うまいのかというのがわかるし、この選手がどうしていつも成績がいいのかというのが凄く納得できました。
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優勝が決まり、喜ぶ3人。有香さんの笑顔は本当にいいですね。佐藤家は皆さん本当に笑顔が素敵で見ていて和みます。


彼は昨季4位から見事返り咲きました。同時に、スケーターとしてものすごい成長ぶりを見せてくれたなという感じです。
以前の彼は今のアリッサ・シズニー選手のように跳ぶ前にちょっと緊張感が走るみたいな感じがありましたが、今は完全に流れの中で跳べていますよね。きっとアリッサももうすぐこういう風になるんだろうなと思います。同門ですしね。
本当におめでとうございます!世界選手権頑張って下さい!!!
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Jeremy Abbott 2012 US Championship SP -Bei mir bist du schoen/Swing Kids




このフリーは本当に、本当に好きです。そして彼の演技を見るたびに、「ああ、やっぱり彼の滑りが本当に好きだ」と毎回思います。
サーキュラーステップはレベル4、さらにジャッジ全員がGOE+3を出すという満点の評価を得ました。


2位はアダム・リッポン選手!
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昨シーズン終了後からブライアン・オーサーコーチを離れて有香さん&ダンジェンさんご夫妻に師事した彼は彼自身の滑りを取り戻し、やっと本来の力を出せるようになったという感じがします。
モロゾフコーチからオーサーコーチのもとに移ったのは勿論理由はあったのでしょうが、結果としてこの移籍?はうまくいかなかったように見えます。対して同じようにモロゾフからオーサーに移ったゲデ子ちゃんは今季大ブレイクしてますから、コーチの手腕というよりは、やっぱり指導における相性なんでしょうね。
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私としては、オーサーコーチの最大の失敗はリッポン君に「巻き毛脱却」をさせようとしたことだと思います(嘘)。
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これは2011年の四大陸選手権での彼。

やっぱりふわふわの巻き毛じゃないリッポン君なんてリッポン君じゃないというか、天使から翼を奪うようなものだというか、彼はあの巻き毛があってこその彼という気がすごくするんですよ。これは冗談抜きで。
似合うとかそういうレベル以前に、あれがないと彼は何かのバランスを崩すのではないかさえ思えるような(笑)半分冗談ですが、半分くらい本気でそう感じています(笑)。
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またスケーティングにおいても、彼はジュニアの頃からすごく伸びやかなスケーティングをして、高いジャンプや美しいトリプルアクセル(3A)などを軽々と跳ぶというイメージがあったのですが、オーサーコーチに変わってからそのあたりがちょっと変わってしまい、やたらと強くガシガシと漕いで漕いで跳ぶ、というような、ちょっとキムヨナ選手みたいな力強いジャンプに変わりつつあるように思えたのが気になっていたのです。
それは彼のスタイルではないし、せっかく彼が持っていた伸びのある滑りを殺してしまうものだと思いました。また、漕ぐにしてもあんなにガシガシという無粋な音をさせるような選手ではなかったのに、と残念に思っていました。
しかし有香さんのところで他の選手と一緒に基礎練習をブラッシュアップしたのか、今大会の彼は(アメリカの放映は氷の近くにマイクを置いたりしてエッジの音を良く拾う傾向にありますが)エッジの音は殆ど気になりませんでした。彼の良い時の滑りとジャンプが戻ってきたのは本当に嬉しい。
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喜びすぎ(笑)

それにしても、今年世界選手権に出場する男女4名のうち、3名が有香さん&ダンジェンさんの教え子!本当に凄いですね。コーチとしてのキャリアは短いけど、もうすっかりアメリカを代表する名コーチです。
世界選手権ではそういう意味で同門選手が多いし、お互い励まし合ってよい戦いが出来るでしょうね(コーチは大変でしょうが…(笑)

おめでとうございます!頑張って下さい!


Adam Rippon 2012 US Championship SP -Korobushko

神演技!得点が出た後、ちょっと泣いてるように見えますね。おめでとう!


3位にはロス・マイナー選手!
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こんな、力で跳ぶような感じだったっけ?と思いました。もっとスピード出して流れの中で跳んでるイメージが・・・違いましたっけ?杉田先生も「助走が長く、着氷が硬い(膝や足首が柔らかく使えてない)と仰っていましたが・・・
NHK杯でぐっと日本のファンの心をつかんだ彼。正直派手さはないというかちょっと没個性的にも思える感じですが、しっかり全米の多くの才能の中から上に上ってくる実力の持ち主ですね。SP4位、フリー3位。安定してしっかりこの大舞台で実力を出せるというのも凄い。そしてあの笑顔は本当にいいですね。
フリーでは、途中でスラックスの留め金が外れるというアクシデントがありました。
欧州選手権でのブライアン・ジュベール選手がよぎりましたが、ロスくんはジュベール選手ほど裾がまくれ上がるという感じにはならず、単にスケート靴の底の部分で留めるパッチンボタン(って言うんでしょうか)が外れたという感じで、気なったとは思いますがが肌の露出とか(笑)そういうことにはならずによかったです。
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彼は四大陸選手権への派遣が決まりました。コロラドスプリングスということで母国開催ですから、きっと地元の声援を受けて素晴らしい滑りを見せてくれると思います。
楽しみにしてます!!頑張って下さい!!!
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SPの演技後。ちょっとペンギンのマネしてる?(笑)


Ross Miner 2012 US Championship SP -Para Ti

冒頭の3Aはすごくきれい!フリーよりもジャンプが流れに乗れている感じがしますね。


4位にはアーミン・マーバヌーザデー選手が入りました!!!全米選手権は4位まで表彰してもらえるので、初の全米の表彰台となります!
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昨年末にプリシラ・ヒルコーチのもとを離れ、クリスティ・クラールコーチのいるコロラド・スプリングスに拠点を移した彼。クラールコーチといえば、名前ではピンとこなくてもパトリック・チャン選手やアグネス・ザワツキー選手を教えている「女史」然としたクールな女性の顔を覚えているという方は多いでしょう。
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彼女がクラールコーチ。

今のところ、彼の選択は功を奏しているようですね。フリーでは転倒してしまいましたがついにクワドをプログラムに入れてきました。本人も充実しているようですね。
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彼も大学との両立で大変だと思いますが、着実にステップアップしていますね。全米4位というのはすごく自信になるはずです。フリーでは最終グループに残り台乗りがかかるということで緊張してしまったようですが、SPは神演技と言えるものでした。自然な笑顔も出ていて、すごく楽しそうでした。
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彼は四大陸には派遣されるかなーと思ったのですが、惜しくも補欠ということで漏れてしまいました。残念!
とりあえず彼のシーズンはこれで終了となります。
ですが拠点を移したばかりですし、時間ができれば新しいコーチや環境に慣れるのも早まりそうですし、充実した練習を重ねられるでしょう。
来季彼が更にジャンプアップし、クワドを成功させるようにになってくれることを願っています!
がんばれアーミン君!!
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SP3位となる高得点に大喜び。四大陸選手権は拠点のあるコロラドスプリングスですから、観戦に来るかもしれないですね。


Armin Mahbanoozadeh 2012 US Nationals SP -Kashimir




リチャード・ドーンブッシュ選手は13位だったんですね。驚きです。フリーは5位になりましたが、SPが17位だったので順位を上げきれなかったようです。
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昨シーズンシニアデビューの年を素晴らしい成績を取り、全米選手権で2位になった彼。しかし翌年GPSの中国杯で突然崩れたので驚いたのですが、何かあったのでしょうか。彼はこのまま順調にキャリアを重ねていくかと思っていたので、本当にどうしちゃったんだろうと気になっています。1番滑走のプレッシャーと言っても、ここまで崩れる選手ではない筈なのですが・・・
怪我でもしてるのかなぁ・・・
彼は必ずしも私の好きなタイプの選手ではないのですが、それでもあのスピーディーで滑らかな滑りは次の世代のエースとなりうる存在と思っていたので、心配しています。
彼は四大陸選手権の補欠として名前が挙がりました。期待されているということですから、焦らずしっかりと頑張ってほしいです。


Richard Dornbush 2012 US Championship SP -The Fifth



ということで全米選手権は男女ともに見ごたえのある戦いになりましたね。
これで世界選手権と四大陸選手権のアメリカの派遣選手が決定となりました。

★世界選手権
  ジェレミー・アボット選手
  アダム・リッポン選手
  (補欠:ロス・マイナー選手、アーミン・マーバヌーザデー選手、ダグラス・ラザーノ選手)

★四大陸選手権
  ジェレミー・アボット選手
  ロス・マイナー選手
  アダム・リッポン選手
  (補欠:リチャード・ドーンブッシュ選手、アーミン・マーバヌーザデー選手、ダグラス・ラザーノ選手)

シーズンを終える方も、次の試合に臨む方も、怪我なく充実した練習ができますように。

皆さんお疲れ様でした!!
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*** おまけ ***
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この客席のアメリカ国旗ジャンパーを着た一団の方々、毎年絶対にいますよね(笑)。他の試合も結構来てるような気がする。そしてもう何年も何年もいる(笑)。
カナダにもカナダ国旗のニットだかスウェットだかを着た「カナダおばさん」というべき女性がいつもいらっしゃいますが、この方々はすごいですよね。まさに筋金入り(笑)


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by toramomo0926 | 2012-01-31 08:13 | フィギュアスケート


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