浅田真央選手が優勝、ファイナル通算4勝目を飾る -2013年グランプリファイナル・女子シングル(その2)
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2013年グランプリファイナル・女子シングル記事の続きです。


ISU Grand Prix of Figure Skating Final 2013

順位と得点詳細。
「Result」でそれぞれの種目の総合順位と総合得点が、
「Entries/Result Details」ではショートプログラム(SP)とフリーそれぞれの得点詳細が、
「Judges Scores」ではSP/フリーで各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。




浅田真央選手はフリーでは約4年ぶりにトリプルアクセル(3A)2回に挑戦しましたが、最初の3Aで大きく転倒、二度目に挑戦するも両足着氷で回転不足となりました。
フリーの最初の3Aは回転が足りていない、という解説が多かったですが、これは認定されています。常に解説とジャッジの判定が逆を行く形に(笑)
SPの回転不足判定は、普段あまり踏み込んだ報道をしないメディアも疑問とする論調のものをいくつか見かけました。それが原因では決してないでしょうが、なんだかSPの分を厳しくとり過ぎた「埋め合わせ」みたいな認定に思えて、やはりあまり気持ちのいいものではありませんでした。必ずしも解説の目視での判断が正しいものではないとは思いますしジャッジの目が完全に節穴とも思いませんが、見る側(専門家や経験者含む)と判定および点数の乖離がこれほど激しいスポーツもなかなかないのではないでしょうか。フィギュアスケートにおける採点の難解さについて「採点競技の難しさ」という言葉でよく語られますが、他の採点競技もこれほど試合ごとに異なり、誰も根拠を説明できないような採点が行われることが頻発する程摩訶不思議なものなのでしょうか。

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閑話休題。
私が気になったのは真央選手のフリーでの3Aについての言葉です。

「(1回目失敗したあとは何を考えた?)もう1回跳べるので挑戦しようと思っていました。1発目降りたらもう1回落ち着いていこうと思っていたんですけど、大きな転倒をしてしまうとやはりなかなか次が難しいんです。シミュレーションができていない状況での挑戦だったのでもう少し練習が必要かなと思っています。」
(2013年12月7日 スポーツナビ記事より抜粋)

グランプリシリーズ後、真央選手と信夫コーチは試合を意識した練習方法にしていく、と話していました。試合と同じように2分50秒、または4分で全力を出し切るという練習の仕方です。私は専門家ではないですが、その言葉をそのまま解釈すると、恐らく「曲かけ」の回数を増やすと言うやり方が考えられます(信夫先生は、練習時間そのものも短くする事も話していらっしゃいましたが)。
そして真央選手は今大会だけでなく、今季に入ってからは「(3Aは)練習でも跳べているし、他のジャンプと同じような感覚で跳べている」と繰り返し話しています。
その状況で、「シュミレーションが出来ていなかった」と話したということは、練習では曲かけをしても、3Aで転倒することは殆どなくなっている、という事なのではないでしょうか。
荒川静香さんも、いつだったか忘れましたが真央選手がエキシビション?で転倒した時「珍しいですね、もう練習では殆ど転ぶことはないんですが」という話をされていたことがありました。
このインタビューを読んだとき、真央選手が目指す「最高の演技」はすぐそこまで迫っているのだ、と鳥肌が立つ思いでした。是非、是非最高の舞台でそれを手にしてほしいと願っています。
シニアデビューしてから約10年の間これだけ努力し、一挙手一投足が注目される中で結果を出し続け、競技の発展や人気に大きく貢献してきた彼女には充分にその資格がある。

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転倒の後、多少体力が奪われた影響でバランスを崩しかけるところはあったものの、最後までスピードや体のキレを落とさず力強く滑りきった真央選手。この「ラフマオ」は本当に見応えがあって、見ているとこちらの体も動くくらい見入ってしまいます。
そして凄いなと思うのが、このファイナルを真央選手と信夫先生は「試す」場所として考えていたということですね。優勝がどうとかよりも、五輪を見据えて3A2回をやったらどうなるか、ということをトライする場として考えていた。
もし順位や得点を狙うのなら2度目は跳ばない方法を選んだでしょう。最初の3Aを転んだ時点で、以前話していた「プランB」(3A2回の構成で入る→冒頭の3Aでミスをした場合、二度目の3Aを跳ばずに3フリップ-3ループ(3F-3Lo)を入れてリカバリーする)に切り替える事も出来た。しかし一瞬の迷いもなく2回目に挑んだところからもそれは窺えます。
五輪出場の為にはファイナルでも内容と順位は求められるところですが、3A以外のところは何があってもある程度のレベル以上の滑りは出来る=順位は取れるという自信、確信が選手とコーチの間にあったのだと思います。今季の真央選手は本当に内側から放たれる風格というのをひしひしと感じますが、自分たちの取り組みへの自信、積み上げてきたという自信があるからこそ出来たことなのだろうと思います。

今大会また腰痛を再発させた中での演技だったとのことですが、真央選手が今気をつけないといけないのは怪我だけですね。くれぐれもそこは気を付けて、全日本と五輪の舞台で、また今大会のSPのような笑顔を見ることが出来ますように。
おめでとうございます。あなたの夢が、願いが叶う事を心から祈ってます。

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Mao Asada 2013 GPF FS -Piano Concerto No. 2 in C minor




2位はユリア・リプニツカヤ選手!シニア2年目でファイナル銀メダリストです!
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彼女は昨季シニアデビューした時、印象としてはジャンプも跳べるしスピンの柔軟性も凄いけど、演技としてはジュニアジュニアしていて、シニアの滑りに慣れてくるのは少し時間がかかるかなと思ったのですが、今季その辺りを大きく成長させてきましたね。びっくりです。グランプリシリーズ2勝、このファイナルで銀メダル。間違いなくソチ五輪の優勝を含めたメダル候補にがっちり食い込んだ感があります。
スケーティングについてはまだ幼さみたいなものは感じるのですが、その他の部分はかなりシニアにアジャストした演技が出来るようになってきました。正直ここまでのスピードで来るとはという感じ。見た目通りの賢い、熱心なスケーターなんでしょうね。

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彼女についても、SPの採点は腑に落ちない点があります。あれだけ良い演技をして4位?と思った方は少なくないのではないでしょうか。まあ確かに上位3選手も素晴らしい演技をしたので、この中で誰かは4位にならないといけないし、演技構成点(PCS)はまだどうしても点が出にくいところなので仕方ないんですかね。でもちょっと意外な感じがしました。
今季の彼女のプログラムはSP、フリーともにとても良い選曲だと思います。今の彼女の年齢(15歳)というものを凄く意識して選んでいると思いますが、「幼さ」が「拙さ」にならないようにという配慮と、それを更にアピールポイントにするという戦略を感じます。そしてそれはすごくうまく行ってますよね。去年のリプ子ちゃんの滑りならこうはいかなかったと思いますが、彼女の努力が年少者というハンデになりうる要素を強みに変えています。素晴らしい!
ロシア女子も競争が熾烈ですが、彼女は恐らく五輪派遣は固いのではないかと思わせる落ち着いた安定した滑りを見せているので、このまま突っ走って欲しいですね。頑張って下さい!


Julia Lipnitskaia 2013 GPF SP -You Don't Give Up on Love




FS -Schindler's List




3位はアシュリー・ワグナー選手!
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シニアに参戦してきた頃は「マオが同じリンクにいたのでコーフンしちゃったわ!」と瞳をきらきらさせていた美少女だったのに、今やもうすっかり全米女王、揺るぎないアメリカのエースにしてトップスケーターという貫録と風格を漂わせるようになりました。そしてジュニア時代憧れだった真央選手と常に優勝を争うようになりました。感慨深いです。
五輪シーズンということで、どうしても選手の演技を見るとこれまでの彼ら/彼女達の奮闘が頭に浮かんでくるのですが、本当にここ数年のアシュリーの成長は凄い。「あとちょっとの女の子(Almost girl)」と呼ばれ、バンクーバー五輪出場権も「あとちょっと」のところで逃した。そこからキャリアをじりじり後退させる選手も多い中で、彼女は恐らく想像もつかない程の努力をしたんでしょうね。その壁を突き破り、自分を一段高い位置に押し上げました。今やすっかりトップスケーターです。

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今大会の演技について彼女は「パーフェクトではなかった。だがその分課題が見つかったのは良かった」と話していましたね。アメリカも基本的に全米選手権の結果が五輪選考に影響するでしょうから、ファイナルは試合勘の維持と調整という意味もあったのではないかと思います。そもそもファイナルに出場出来ているアメリカ女子は彼女だけなので、それだけでもアドバンテージにはなっていると思いますしね。
私個人的にはSPはスピンのトラベリングが目に付きました。またフリーでは、特に転倒があった後からはジャンプに意識が行きすぎてしまい、振付が気もそぞろになっているような箇所があり、ちょっと観客をひきつける力が落ちてしまったように感じます。全米でそのあたりを更にブラッシュアップしてくるでしょうし、彼女も五輪メダリスト候補であることは変わりません。静かな炎が広がってきているようなムードを感じました。


Ashley Wagner 2013 GPF SP -Shine On You Crazy Diamond



FS -Romeo and Juliet




4位にエレーナ・ラジオノワ選手!
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ラジオちゃんは年齢制限でソチ五輪には出られないので、今の五輪出場枠争いの重圧からは自由でいられる&今季シニアデビューということで、怖いものなしのシーズンを爆走中。今大会も、珍しくジャンプの転倒などはあったものの、伸び伸びと演技していて見ていて気持ちよかったです。本当にこれからが楽しみな選手ですね。体形変化が彼女にどのような影響を及ぼすかはわかりませんが、このまま行ってくれればな、という感じです。

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おまけ:とてもかわいかったのでエキシビションの衣装も。


私が彼女の演技で好きなのは、体全体を使って滑り、振付をしているというところですね。まだ細くて子供の体なので時々スピードに振られてしまっている事はあるのだけれど、しっかり踊りが素養として身についているので、写真もどの瞬間を切り取っても躍動感があって美しい。そういう面では子供らしさはありつつも、粗い感じはそれほどしないんですよね。そしてスピンのポジションのバリエーションが豊かなのもいいです。これはロシアンガールズほぼ全員に言える事なのですが、最近レベルをとる為なのかスピンのポジションが皆さん同じようになってきている中、独創的なポジションが多いのは見ていて楽しい。

彼女はまだシニアの五輪や世界選手権に出られる年齢ではないので、今季ジュニアと掛け持ちのシーズン。これで一応シニアの試合はひと段落なので、ジュニアの試合に戻っていくと思われます。試合数が増えて疲れると思いますが怪我に気を付けて、来季また素晴らしく成長した姿を見せてほしいと思います!


Elena Radionova 2013 GPF SP -Anna Karenina/Two Steps From Hell



FS -Frida




5位にアデリーナ・ソトニコワ選手!
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SPは本当に素晴らしい出来でした。スピードもありましたし、ステップでちょっと詰まった感じは有りましたが総じて最後まで力強くしなやかで美しかった。なのにフリーでは全ての歯車が狂ってしまったようで、見ていて心臓に悪かったです。このようになると最後まで滑りきるのも本当に辛かったろうなと思います。

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ここ数年苦しんできた体型変化も落ち着いてきたけれど、SPとフリーを揃えられないというのが今一番の課題ですね。ポテンシャルは素晴らしいし長い手足を使ったダイナミックな演技が大好きなので、是非ロシア選手権では両方揃えて、ソチ五輪に出てきてほしいと思います。頑張って下さい!!


Adelina Sotnikova 2013 GPF SP -Habanera



FS -Introduction and Rondo Capriccioso in A Minor Op. 28 for Violin and Orchestra




6位はアンナ・ポゴリラヤ選手でした。
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シニアデビューの中国杯でいきなり優勝、次のフランス杯で3位と彗星のように現れた新たなロシアの新星として今季前半のハイライトともなった彼女。ですが今大会はちょっと元気がなかったですね。2Aがコントロールを完全に失っていましたし、他のジャンプもこれまでのような確かな感じがなくなっていました。いきなりうまくいきすぎても考えてしまうのか、シニアはジュニアよりも演技時間が長いので疲れも溜まったりするのかもしれません。

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ですがジャンプ後の流れの美しさや身のこなしのしなやかさは素晴らしいものがあるので、今後が楽しみです。ソチ五輪に出場出来れば更に良い経験となって飛躍すると思います。ああ、ロシア女子も選考どうなるんでしょうね…ここまで良い選手が沢山出てくると、みんな出て欲しくなって困ります…
今回の結果は残念でしょうが、これも経験としてきっと彼女の糧になると思います。頑張って下さい!


Anna Pogoliraya 2013 GPF SP -El Choclo (Kiss of Fire)




FS -Mermaids



ベテランと若手という対比、それぞれの良さと魅力を堪能したファイナルとなりました。
選手の皆様、お疲れ様でした!!

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<参考リンク>
真央「もうちょっと練習が必要かな」 -スポーツナビ 2013年12月7日

<関連コラム>
浅田真央選手が優勝、ファイナル通算4勝目を飾る -2013年グランプリファイナル・女子シングル(その1)
  2013年12月20日

by toramomo0926 | 2013-12-20 18:21 | フィギュアスケート


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