世界フィギュア男子-4回転至上主義の流れが変わるかも
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世界フィギュア2008の男子シングルを昨夜リアルタイムで見た。優勝は意外にも(失礼)カナダのジェフリー・バトル(上写真中央)。これは私の中では衝撃でした。なぜなら彼のプログラムには優勝には必須と思われていた4回転ジャンプがなかったから。



今の男子シングルは、数年前にロシアのプルシェンコやフランスのジュベール(写真左側)がバンバン4回転を飛びだしてからは「トップクラスに食い込むためには4回転を飛ばないと話にならない」という雰囲気が生まれていた。しかもここ1~2年はさらに「4回転を複数入れる」という流れになりつつあったのだけれど、バトルは今年の世界一を決める今大会で4回転を入れず3回転と2回転半のみとし、代わりに全てのジャンプの確実性、出来栄えの加点を稼いで完璧に滑り切り、ショートプログラム(SP)とフリースケーティング(FS)両方1位の完全優勝を果たしたのだ。

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バトルはアイドルみたいな童顔と軽やかなスケーティングで日本のファンも多い。しかし彼は25歳、トップグループの中で最年長である。

バトルはトリノ五輪銅メダリストだけれど、私としてはジャンプのミスが多いというか、うまいけど脆い、という印象があった。それは今大会で銅メダリストとなったジョニー・ウィアー(上写真右側)も同じである。しかしバトルは今期からコーチを変えたそうで、軽やかさはそのままに確実性が増して逞しくなった印象を持った。

今の規定ではジャンプの場合、転倒はもちろん踏み切り、着地を細かくチェックされて踏み切りのエッジを間違えたり、回転数が足りないまま着地したりすると減点される。逆に着地がスムーズだったり、高さがあったりすれば基礎点のほかにGOE(出来栄え)として加点をもらえる。なので4回転を飛べば間違いなく高い点数はもらえるけれど、危うい4回転よりもスパッと決まった3回転の方が結果的に高い点がつくことは充分ありうることなのだ。バトルはそれを狙い、そして成功したのだと思う。
荒川静香もトリノ五輪の時、演技中に連続ジャンプを3-3から3-2に落として出来栄えを整え、金メダルを勝ち取った。基本的にそれと同じ考え方を選択したということだ。

ISU フィギュアスケート世界選手権大会 得点一覧(pdf)
ジャッジのスコア一覧。ジャンプやスピンなどの各要素(略語なのでわかりにくいが)について、ジャッジそれぞれがどのように加点・減点したのかがわかる。0点は基礎点のみが得点された場合で、その他のプラスマイナスの数字は出来栄えによって加点・減点されたもの。
バトルには加点が多く、他の選手は失敗したところでの減点が目立つ。ビデオ等でかなり細かい所までチェックされるので、いかに取りこぼしを少なくするかが勝敗を決める。

バトルが優勝したことがわかったとき、この勝利は来期の男子選手のプログラム編成に影響を及ぼすかもしれないな、と思った。
ジュベールみたいに4回転を確実に飛べて自分の強みとしている選手は別だけれど、スイスのステファン・ランビエールみたいに芸術性は飛びぬけて優れているがジャンプの精度が安定しない選手などは、敢えて4回転を回避し、全体の出来栄えを上げることで更に高得点を狙う動きが出てくるかもしれないと思った。
4回転を敢えて外すことを「後退」「消極的」とする声もあるとは思うが、フィギュアスケートはスポーツだけれど芸術性や美しさを競うものでもあるし、誰も彼もが背伸びをしなくてもいいのではないだろうか。4回転飛べる人は飛べばいいし、きちんとものになっていなければ3回転のコンビネーションの組み合わせや芸術性を磨くことで高い点数を得ることもできる。それが各選手の個性ということにもなるし、男子にありがちな「ジャンプ大会」みたいになならず、見る側にもカラフルに、面白く映るのではないかと思う。
来年の各選手の構成が非常に楽しみです。

私としてはランビエールの復活に期待です。
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あと高橋大輔。ミスがなければ間違いなく世界トップを狙えるところに来ています。感情移入できる滑りがいい。
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小塚崇彦も初出場で8位は立派でした。滑りが美しいのでこれからが楽しみです。
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<動画>
Jeffrey Buttle - FS 2008 World Championships

優勝したバトル選手のフリースケーティング。見事です。

Brian Joubert LP - Göteborg 2008 Worlds

銀メダルのジュベール選手のフリースケーティング。4回転も決まり本人も会心の演技でしたが、先のSPで転倒していたためバトルに一歩及びませんでした。

高橋大輔 2008年四大陸選手権 SP

白鳥の湖ヒップホップバージョン。これはフィギュアの競技に(採点のないエキシビジョンやショーを除いて)初めてヒップホップを持ち込んだ歴史に残る名プログラムです。
ヒップホップは上半身の動きが主なので下半身のスケーティングと動きがバラバラになり、見た目よりもずっとこなすのは難しいのだそうです。せっかくなので、ノーミスの四大陸の映像を載せます。



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by toramomo0926 | 2008-03-23 12:29 | フィギュアスケート


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