順位に異論はないけど、採点は大いに疑問
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2008スケートアメリカが開催された。待ちに待ったフィギュアスケートのシーズン到来である。
女子シングルの結果はキム・ヨナ選手が二位の中野由加里選手に20点以上の差をつけたぶっちぎり優勝であった。
彼女はショートプログラム(SP)とフリー(LP)で素晴らしい滑りをした。優勝は誰の目にも当然に思えたと思う。
ただ、現在日本のみならずアメリカ等海外のスケートファンにとっての疑問は、ここ数年の彼女に対する点の出方だ。




キム選手は確かに世界トップを争える実力がある。これは間違いなく確かなことである。
ただ、彼女はどんなにジャンプが回転不足でも、エッジの踏み切りが「不正エッジ」とされるものであっても、ジャンプをお手つき&ステップアウトしても、スパイラルがグラグラでも、何故かジャッジやコーラーからその減点を免除され、おまけに加点までされている状態が何年も続いているのだ。彼女に対してだけ加点が過剰な上に、他選手が厳しく取られている減点やエラー認定されるべきところでされていないのである。

それも今年だけのことではなく、シニアデビューした年かその翌年くらいからか、とにかく気づけばここ数年、彼女には「減点およびダウングレードはなるべく適用しない」という申し合わせでもあるかのようなジャッジやコーラー(技のレベル認定をする人)のエラーの見逃しが目立つ。回転やエッジの認定はジャッジが自分の席で、モニターでビデオを巻き戻してスロー再生したりして綿密に行われる。ごまかしができにくい判定方法である。それなのに、技の質が他の選手なら減点される内容でも、減点免除どころか加点までされているというような状況が続いている。

このようなことを恒常的にやられるとスポーツとしてのフィギュアスケートは成立しなくなるし、勝利の価値もなくなってしまう。2003年に不正採点が行われて刷新された新ルールもそういう点で無駄だったのかとさえ思えてくる。そして現在この競技を支えているファンの間に「努力している選手が報われない八百長めいた展開」への諦めムードが蔓延したとき、人気スポーツまたは興行としてのフィギュアスケートは滅びるだろう。それがとても心配だし、悲しく思うところだ。キム選手にも気の毒だと思う。彼女は自身は試合でベストを尽くしていると思うが、ルールを熟知したコアなファンになればなるほど、彼女の得点や勝利は評価されないような傾向にあるのだから。

彼女(の採点)への批判がことさらに高まるきっかけとなったのが、昨年のジャンプルールの厳格化である。
回転不足への減点が厳しくなり、ルッツとフリップの跳び分けが厳しくなったことが世界中の選手を混乱に陥れた。

回転不足については以前よりも厳しく取るようになり、着地の際270度(3/4回転)以上回っていないと1回転とは見なされなくなった。例えば3回転ジャンプで2回転と250度くらいで着地した場合、肉眼では一瞬のことなので回りきっているように見えても「3回転ジャンプの回転不足」と見なされ減点対象となる。

何よりも鍵となるのはジャンプの種類、「ルッツ」と「フリップ」の跳び分け」である。
ルッツ(lutz)とフリップ(flip)は後ろ向きで踏み切って跳ぶジャンプである。ただ踏み切りのエッジが外側(アウト)か内側(イン)かによって種類が変わっているという、パッと見では見分けるのは難しい微妙な違いしかないジャンプなのである。
そのためこれまでエッジの踏み切りが曖昧になっていた選手が殆どで、今までルッツやフリップで加点をもらえていた選手も、昨年から『フルッツ』や『リップ』と認定され正しいジャンプとみなされず翌年から突然減点された、という状況が相次いだ。

★『フルッツ』(flutz=ルッツと申告しているが、踏切がフリップのようにインエッジに傾いているジャンプ。フリップ気味のルッツ)
★『リップ』(lip=フリップと申告しているが、踏切がルッツのようにアウトエッジに傾いているジャンプ。ルッツ気味のフリップ)

これをもともとキチンと跳び分けられていた選手は殆どおらず、皆それぞれのクセがありフルッツ気味だったりリップ気味だったりしていたので、昨シーズンは全体的にかなり減点されることとなった。
まあフランスのブライアン・ジュベールのように「オレのフリップはルッツだ。本当のフリップは飛べない」(!)と開き直るヒトまで出てきて大騒ぎになり、特に僅差の世界トップ争いでは最後までその減点がどう出るかというのが勝敗を分けるポイントになったのは確かである。
女子シングルで言えば、他の選手もそれぞれ癖はあったがキム選手はリップ気味、浅田選手はフルッツ気味であった。同じように減点されてしかるべき状況だが、ここで減点・加点にかなり差が出てきていたのである。

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            「オレのフリップはルッツだ」

例えば、それまで加点のあった浅田選手のルッツが昨年フルッツであると認定され毎試合減点されていたのに、キム選手はリップという本質的に全く同じことをしてもお目こぼしで加点三昧だった。
浅田選手のルッツが毎試合フルッツとされて平均2点くらいマイナスされていたのに対し、キム選手はリップでも平均して毎試合2点くらいの加点を得ていた。
同じ不正エッジでも、1度のジャンプでキム選手と浅田選手で3点~4点の差が出てしまう状態が去年1年間続いたのだ。
浅田選手がグランプリファイナルでSP失敗後、フリーで驚異の追い上げを見せたものの銀メダルとなったが、この4点のアドバンテージはキム選手にとって実質的にも、精神的にも大きかったのではないかと思う。昨年は全ての選手がエッジエラーの不安を抱えて臨んでいたが、キム選手にはその心配は全く必要なかったのだから。

今年浅田選手はまだ試合に出ていないので今年の傾向はわからないが、逆にここ数年、浅田選手には他選手と比べても厳しすぎるくらいに減点やダウングレードを取る傾向があった。
昨シーズン中も浅田選手が試合後の記者会見で、海外の記者に「マオは点数がおかしいと思わないか?(必要以上に減点されている)」と正面から聞かれたこともあったほどである。

浅田選手自身は、昨年のルール変更後は自分のルッツはエッジがフルッツ気味であったと認め、今季完璧に治してきたと聞いているが、今季スケートアメリカのキム選手のリップは昨年よりむしろ悪化したようにさえ見えた。それなのに全く指摘されていないのである。
勿論他の選手もフルッツやリップであれば減点されていたし回転不足もしっかり取られていた。だが一方で、何故かキム選手だけにはそのルールは「適用外」といってもいい状態だったのである。そのため、日本のTVや新聞では全く報道されていないが、ファンの間ではキム選手の実際の演技とかけ離れた加点ぶり、お目こぼしぶりは「賄賂疑惑」的な話が継続的に持ち上がるほどで、この件について知らないフィギュアファンはいないという異常事態になっている。

私としては賄賂云々はちょっと半信半疑ではあるが、現在ISU(国際スケート連盟)のナンバー2(だったと思う)が韓国人であること(フィギュアの歴史で世界トップグループの韓国選手はキム選手しかいない中で、韓国の方がこのような高いポジションにいるというのはちょっと不思議には思う。今年グランプリファイナルが韓国で行われるのも彼のプッシュの賜物と言われている)、何よりもうお金が動いてると思わないと納得のしようがないような、彼女限定のエラー見逃しと加点の嵐状況が続いていることが、この話に信憑性を持たせている原因になっているのだ。

今季のルール改正はキム選手に多少不利ではないかと言われており、その中で今季の彼女の点の出方、認定のされ方がファンの間で注目されていたが、ふたを開けてみると今季のスケートアメリカでも状況は同じだった。
今大会で、キム選手は、ジャンプの跳び分けがどうしてもわからなかった私でも気づいたくらいのリップを跳んだにも拘らず減点は勿論、エラー認定等はゼロ。他の回転不足についても甘い判定だったようである。今回リップになっている足元のスロー映像が世界中で流れた為にアメリカや他の海外のスケートファンの掲示板でもかなり騒がれているようだ。Youtubeでも彼女のwrong edgeを指摘する動画がいくつか上がっている。

また、昨年キム選手陣営が「ヨナのジャンプは教科書のように正確だ」というキャンペーンじみた活動をしていたのも今季の批判を強めている要因である。Youtubeでもやたら「Textbook」という言葉がファン(正確に跳んでいると主張)と批判派(Textbook lipだという皮肉)の間で引き合いに出されている。
昨季、他のジャンプに影響が出るのを恐れてフルッツを直さないままシーズンインした浅田選手のジャンプに対し、キム選手のファンが「Cheat(インチキ)ジャンプ」と散々批判していたが、彼女は減点を覚悟でそのような選択をしたのだし、現に厳しく減点されていたので、そういう意味で浅田選手の戦いはフェアなはずである。
その当時は、加熱する騒ぎに「ヨナちゃんファンよ、落ち着け」と思っていたが、現在は昨季浅田選手を批判したことが今季ブーメランのようにキム選手と彼女のファンにふりかかっている状態と言えます。ただ、それがファンの間のことに留まり、ジャッジ等は勿論マスコミもそのことについて触れようとしないのが歯がゆいところ。

昨季は安藤美姫選手や、他にも短い期間でエッジの修正を試み、結果全てのジャンプの正確性を欠いてしまった選手は沢山いた。子供の頃からのジャンプのクセを直すのは、歩き方を直すのと同じくらい大変なことなのだろう。

キム選手は減点されるところを全部きっちり取られたとしても、今回のようなすごい点差はつかなくても文句なく今回優勝できたと思う。それが一番私にはもどかしいところだ。
彼女は確かに出場選手の中で間違いなく一番素晴らしい滑りをした。だがあの点は出すぎ。今大会の彼女への点の出方を批判する声はネットには沢山上がっているけれど、彼女がトップになったことに疑問を感じているファンは少ないのである。
ファンは彼女が優勝したことではなく、彼女の採点、減点されるべきところで加点されているという不公平感に怒っているのだ。
シーズンをを棒に振るかもしれない覚悟でエッジを直してきた他の選手に報いる採点をして欲しいと、当たり前のことを望んでいるだけである。

例え今大会で公平に採点がなされたとしても2位との間の点差はある程度開いたとは思うが、これがグランプリファイナルや世界選手権など、コンマ1単位での点数を争う戦いになった場合には加点・減点の度合いはかなり重要になってくる。
今回のような不公平な採点を数年にわたって行っていればフギュアスケートの大会自体も、優勝というステイタスも、ジャッジの威厳も地に落ちるし、例えキム選手が今年ファイナルで3連覇しても、真のスケートファンからは祝福されないだろう。
キム選手にとっても「紙の上の女王」などと日本のみならず海外等で揶揄されるのは不本意なことと思う。

オリンピックも近いし、ISUとジャッジ、コーラーには公平な採点、評価を切に望む。
私は浅田選手のファンだがキム選手は素晴らしい実力の持ち主だと思う。正直言うと彼女は好きなタイプの選手ではないのだけれど(彼女は表現力が売りといわれているが、私にはあまりよくわからない。スケートが上手いとは思うのだけれど)、それでもすごく実力があるのはよくわかる。
せっかくの実力も、今の状況ではコアなフィギュアファンにとってそれを素直に認められない気持ちにさせられているのは事実。私自身このような状態が続くていてフラストレーションが溜まっているので、キム選手の素晴らしさは認められても、彼女の勝利を素直に祝福できない気持ちになってしまう。

キム選手も他の選手も必死で練習し、トップを目指してきている。政治的な、または金銭的ことで彼女らの努力を踏みにじらないで欲しいと思う。



★最後に言っておきたいのは、私は韓国に対して特別に悪い感情も、偏見等も持っていないということです。また私は浅田真央選手のファンだけれど、そのことは今回のキム選手への記述に影響を受けていません。それを踏まえた上で読んで頂きたいと思います。
キム選手のファンには読んでいて気持ちのいい文章ではないでしょうが、浅田選手より上に来るのが許せないとか(たまにそういうヒトを見かけるが)そういう腹いせ的な気持ちで書いたものでないことはわかって頂きたいと思います。


参考までに
ISU 2008 Skate America 女子ショートプログラム採点表
http://www.isufs.org/results/gpusa08/gpusa08_Ladies_SP_Scores.pdf
0点の場合が基礎点のみ、1とか-1とかついているのが加点・減点です。キム選手には不自然なほどに0が殆どありません。下の選手達と比べると一目瞭然です。
要素1番目、エッジエラーをした3Fー3T(トリプルフリップ(リップ気味)ートリプルトウループ)のコンビネーションにも最高3点まで許される加点で2点の加点をつけているジャッジが多い。
2A(ダブルアクセル)は転倒したので減点されています。転倒は無条件で減点されますが、一人減点していない(0点)ジャッジがいますね。それもヘンです。

Excite エキサイト : スポーツニュース
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★参考動画 その1


ショートプログラムのキム選手の3F-3Tコンビネーションのスロー画面。エッジ(というか足首から)がアウトに傾いているのがはっきりわかります。着氷も回転不足を取られるかどうか微妙な感じです。


これは演技直前の6分間練習の映像ですが、アウトに傾くクセが治っていないのがわかります。


これはフリーの演技でのフリップ-トウループ。アウトエッジですね。


★参考動画 その2

ルッツ特集動画

昨シーズン終了直後から浅田選手はフルッツの修正を試み、「修正」というよりは「新しいジャンプを覚える」といえるような形でリアルルッツをものにしたと言われています。
開始3分前後のところで、苦手といわれていた3回転サルコウもきれいに決めています。


ロシアでの練習風景。新コーチのタチアナ・タラソワ氏もルッツの修正やスケーティングの成長を絶賛しています。
来月のフランス大会が浅田選手の今季初の試合となります。今から演技をフルで見るのが楽しみですね。
by toramomo0926 | 2008-10-30 11:21 | フィギュアスケート


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