今回については個人的な好みの話になるので、かなり主観的な内容になります。異論のある方もいらっしゃると思いますが「筆者はこう感じているのだ」という気持ちでお読み頂ければと思います。
私は音楽が好きだ。クラッシックからハードロック、ハワイアンまで結構いろいろなジャンルを聴くけれど、どのアーティストやバンドの曲が好きになるかというのには何となく自分なりの基準があるように思う。それは「余人に代え難いもの」があるかどうかということ。 この「余人に代え難い」というのは主に声についてだけれど、サウンド、曲調、歌詞の世界などにもオリジナリティのある「ここにしかない」と思えるものに惹かれるし、長く聴き続ける曲には(自分なりにだけれど)明確にそういうものを感じられる曲が多い。別に「美しい」声でなくてもいいけれど(美しくてもいいけど)、魅力的な声。全く知らない曲でも、聴けば「あ、これはあの人」とはっきりわかるものということである。 また、聞き手にそう思わせるためには歌手として、またはミュージシャンとしての地力というのも必然的に求められると思う。 地力というのは歌でも演奏でもただ上手ければいいという訳ではないし、どういうものかというのはなかなか表現しづらいけれど、例えば、殆どの曲でよく使用される「Oh, Year」とか「Wow wow」をどういう風に歌っているかというのに注目してみると面白い。 注意して聞いてみると、このコモンワードをどれだけ自分で消化し、心の叫びとして(というのも大げさだけれど)曲に乗せることができているかというので、その人の歌い手としての地力がはっきり見えてくる。 逆に何か物足りないと感じる歌い手さんの「Oh, Year」や「Wow wow」には楽譜が透けて見える。書いてあるものをそのまま歌っている、というか「ここはオウイエーと(またはウォウウォウと)書いてあるからそう歌っている」という感じがしてしまうのだ。全ての曲はある程度そういうものだろうと思うけれど、それをいかに感じさせずに表現できるかというところが腕の見せどころのひとつなのではないかと私は感じている。 また、自分が普段聴いている歌手でなくても、ワンアンドオンリーのある歌手には私は尊敬の念を持っている。例えば松崎しげるしかり、チータ(水前寺清子)しかりである。 彼らには、彼らにしか歌えない歌というのが確実に存在する。松崎しげるの代表曲「愛のメモリー」は他の歌手がカバーしたものの彼を超えられた人はいまのところないし、マニアックな話になるがプロ野球の西武ライオンズのチームソング(?)を彼は歌っているが、あの曲を歌えるのは彼以外にはいないだろう。 チータにしてもあのパンチは歌が上手ければ出せるものではない。清涼飲料水「C.C.Lemon」のCMソングが一度彼女から別の歌手に代わったものの、暫くして彼女の声に戻されたのを見ても彼女の声の力というのを感じることができると思う。このように「彼らにしかないもの」をコアなファン以外にも思わせるというのは、歌手としては最終的なゴールのひとつと言っていいのではないだろうか。 自分の年齢的なこともあるかも知れないけど、邦楽・洋楽ともに最近はそういうパワーのあるミュージシャンが減ってきたように感じる。 私は80年代夢中になって洋楽を聴いていた時期があるのだが、当時のアメリカ・イギリスのヒットチャートというのは本当にカラフルだった。声質やサウンドに明確な個性があり、時代も明るさがあったし自分が子供だったということもあるが、向こうから届けられる曲を通じてアメリカやイギリスという国に対しても純粋に憧れを持てるものだったように思う。そのカラフルさゆえに人々の耳に残るので、現在も80年代の曲はCM等で採用されることが増えているのではないかと思う。 私が音楽がそういう個性、色を失ってきたとはっきりと感じたのは80年代後半あたりからヒップホップ、ラップというものがものすごい力でチャートに伸してきた頃からである。Run DMCの「Walk This Way」があっという間にチャートを駆け上がってきたのは、私にとってはいろいろな意味で衝撃だった。 こう書くと私はヒップホップが嫌いなようであるが、そんなことはない。「Walk This Way」は今聞いてもかっこいいと思うし、最近の曲でも好きなものも勿論あるが、先に述べてきたような理由で特定の好きなミュージシャンはいない。これは最近の洋楽チャートにもいえることであるが、どうしてもリズムが均一化されがちで声も似通ったものが多く、没個性的に思えて魅力をあまり感じない。私にとってのキーワードである「余人に代え難い」というものの対極に思えることが多いのである。 それは日米問わず、最近チャートを賑わす曲も同じである。特に洋楽や日本のディーヴァ系(っていうんでしょうか)などは映像がないと、知らない曲では誰の歌かが分かりづらい。どれも殆ど同じ声、似たようなサウンドに聞こえてしまうのだ。 ただ、それは昔私が洋楽を聴いていたころのような熱量を持って今ヒットチャートを追いかけていない、ということもあるのかもしれないけれど、サウンドに個性がなくなってきたというのははっきりといえることだと思う。 私が魅力を感じる声や楽曲を出しているミュージシャンはいろいろあるけれど、先に述べたような「余人に代え難い」というものをいろいろな意味で持っているのはウルフルズのトータス松本である。 彼の声はいつどこで聴いても力がある。歌いたい、伝えたいというパワーに溢れている。 パワフルというよりもっと根本的な、人間の内部にある原始的なエネルギーがとめどなく溢れ出ているような感じ。彼の声にはに堂々と「トータス松本」がはみだし気味といえるほどに、暑苦しいほどに息づいている。また、彼の生み出す歌詞のストレートさ、開き直りともいえるような(笑)前向きさはすごく励まされるものがあるし、また一方ですごく繊細な歌詞の曲も多く生み出しており、心を打つ。 世の中には「人生の応援歌」「泣ける曲」などという能書きとともに売り出されている楽曲が沢山ある。私はどうもそういう曲は理屈っぽさと押し付けがましさを感じてしまい素直に聞くことが出来ないのだが、ウルフルズの音楽、トータス松本の歌には「今の自分も状況も認めて、そこから頑張っていこう」というあたたかく、でも押し付けがましくないポジティブさが感じられるので、私には向いているようだ。ありとあらゆる美辞麗句で励ましてもらうよりも、無言でも1回抱きしめてもらった時の体温の方が心が休まるといったような感じだろうか。 またウルフルズのサウンド自体も、ストレートながらリズムなどに洒落っ気や工夫がそこかしこにあってかっこいい。抜けるような青空を見たときのような爽快感がある。 実は個人的にはスピッツの方が聴く頻度としては高いのだけれど、ウルフルズは時々すごく聴きたくなる。そして今、私的に何度目かの「ウルフルズ強化月間」を迎えている最中である。 彼らの曲でお気に入りを挙げると多すぎるので、最近特に好きな曲を3つ。 ええねん これを最初に聞いたのは、彼らがNHKの「トップランナー」という番組に出ているのを偶然見たとき。ライブ映像だったのだけれど、彼らの演奏のエネルギーと、これ以上ないほどシンプルな歌詞の持つパワーにしびれました。関西弁というのも大きいですね。「いいんだよ」ではなくて「ええねん」。同じ意味でも言葉の持つ包容力が格段に違います。ウルフルズの真骨頂ですね。 *PVやライブ動画は削除されてしまっていました。 暴れだす こういう葛藤って、誰でも持っているのではないでしょうか。だんだん音が積みあがっていくアレンジもすごく合っています。「ああ 胸が 胸が 暴れだす」というところの叫びはまさに「地力」全開です。 サムライソウル ウルフルズらしい、無骨なラブソング。素朴だけれどストレートな言葉が余計にしみじみといいですね。 「そしておまえが好き めちゃめちゃおまえが好き そやって笑って見ててくれたら 俺は誰にも負ける気がせぇへんわ」という歌詞は、関西弁を抜きにしてもなかなかすんなりと歌える人はいないのではないでしょうか。 明星 トータス松本 現在PEPSI NEXのCMソングになっているこの曲。トータス松本のソロ名義で出ています。 彼のポジティブな爆発力が遺憾なく発揮されていますね。 「何もかも間違いじゃない 何もかもムダじゃない たったひとつの輝きになれ 人はみな一度だけ生きる」 という歌詞はまっすぐに伝わるものがあります。 「生きる。それも全力で楽しんで生きる」という彼のメッセージが眩しい。心の底からそう思っていないと出せないパワーがそこにはあります。その輝きにすごく惹かれるんですよね。 あと、私が「余人に代え難い」と感じるミュージシャンの曲を。 スピッツ 草野マサムネの声と歌詞の結びつきというのはすごいと思う。あの声がなければあの詩(彼の場合は詞というより詩だと思う)の世界は完成しないという気がします。 砂漠の花 スピッツ 好きな曲が多すぎて選ぶのに大変苦労しましたが、あえて最新アルバム「さざなみCD」より、シングルになっていない「砂漠の花」をチョイスしました。 彼の言葉の使い方は独特で、サラッと聴いているとスルーしがちですが、「終わりと思ってた壁も新しい扉だった」など、噛み締めると結構深いものがあります。 演奏も素晴らしいし、草野マサムネさんの声も同じような声がいるようでいないんですよね。貼りつけた動画はライブですが、すごいです。これを実際生で聞いたら感動するでしょうね。 彼らのすごいところは、シングルカットされてない曲でもシングルカットできるくらいのクオリティを常に保っているところですね。常にベスト版のようなアルバムを出してくれるところはすごく信頼していて、アルバムが出ると無条件に買ってしまいます。 若葉 スピッツ 初めて聴いた時、メロディの美しさと詩の切なさに不覚にも涙が出ました。卒業式でこの曲を歌ったら、きっと泣きます。スピッツはこういう曲をしれっと出しますよね。憎いです。 「静かにきちんと仕事をしている人のことはあまりニュースにはならない」と言いますが、彼らはもうちょっと騒がれてもいいと思うほど、コンスタントに良い仕事をしていると思います。 この曲は「櫻の園」という映画の主題歌としてシングルになっています。 田中拡邦 (MAMALAID RAG) 彼の声はなんというか独特のけだるさというか、暖かいレイジーさがありますね。 声そのものはちょっと大滝詠一さんを彷彿とさせますが、彼はもう少しライトで文学系の匂いがします。 アタタカイ雨 冨田ラボ feat.田中拡邦 これは「冨田ラボ」という企画に参加した時の曲。 彼のバンドであるMAMALAID RAGも数年ぶりに本格的な活動を再開したということで、アルバムが楽しみです。 あの頃へ 玉置浩二(安全地帯) 今は音楽以外のところでいろいろ取りざたされることの多い彼だけれど、間違いなくワンアンドオンリーの声を持っていました。この動画は偶然Youtubeで見つけたのですが、この頃の彼の声は神がかっていましたね。最近彼が歌っている姿を見ていないし、膵臓を悪くされているということなので、早く良くなるといいですね。 あと、井上陽水さんの声もすごくすごく好きです。ただ、陽水さんの曲は結構好き嫌いがあるかも(笑)
by toramomo0926
| 2009-06-06 09:23
| エンタメ
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