彼は彼を愛する人にとって文字通り「神」だった。音楽にそれほど興味のない人でも、彼を知らない人はいないだろう。
小さい頃から人前で歌い続け、賞賛され、神格化されることによって、直接彼に触れる人、触れられる人は少なくなる。「畏れ多さ」が先に立ち、彼を遠巻きに見つめるようになる。そしてセキュリティ上の理由からも彼に近づく人は前もって選別され、むやみに近づけない状況にもなっていく。 彼にまっすぐ近づき、ためらいなく、何の取引もなく、まっさらな心で抱きしめることのできた人は一体何人いたのだろうか。 人気が出れば出るほど、不特定多数から愛されれば愛されるほど、自分自身が直接的な愛情を受けられなくなるというようなパラドキシカルな状況に彼は幼少時からずっとさらされてきた。一体彼はどのようにしてこの孤独を乗り越えていたのだろうか。 マイケル・ジャクソンの死を受けて、今夜のSMAP×SMAPでは2006年に彼が収録現場をサプライズで訪れた際の映像を流していた。 マイケルをものすごく尊敬しているというSMAPのメンバーは突然のマイケルの登場に目が点になり、完全に固まっていた。 あまりに非現実的な状況に「本物なのか、そっくりさんなのか」という逡巡があったことは容易に想像できるが、「本物」とわかってからも、「うわあ・・・」という感じで、あまりの畏れ多さにためらいがちに接する、という感じだった。 ファン心理とすれば当然な、自然な態度だと思う。ずっと憧れ続けていたその人が突然目の前に現れたら、動けなくなってしまうだろう。感情の表現は人それぞれだが、好きになればなるほど、尊敬すればするほどその人への態度はぎこちなくなり、「普通に接する」ことができなくなる。 言葉が通じないという問題を抜きにしても、そういう意味で彼らは最後まで微妙にかみ合わないというか、少しずつ、礼儀正しくすれ違っているような感じがした。 SMAPが悪いわけではない。彼らの振る舞いは「ファン」としてとても自然な、彼への尊敬の念をあらわすものだったと思う。しかしマイケルの気持ちを思うとき、私は複雑な気持ちになる。ハグやキスが重要な愛情表現のひとつとされる国で生まれ育った彼が、会う人会う人全てが自分を見たとたんに動きがぎこちなくなり、自分への愛情や尊敬の念からのものとわかっていても、誰も彼もが近寄るのをためらう素振りを見せられたらどんな気持ちがするだろう。世界中どこにいってもこういう風な「歓迎」を受けていたとしたら、ものすごく寂しくなる時がきっとあったのではないか、と思ったのである。 海外の多くの有名人がその無遠慮さに腹を立て、時に暴力沙汰の原因にもなるパパラッチにも、彼は車の窓をわざわざ開けて対応するなど、比較的友好的な関係を築いていたという。普通の人には耐え難いレベルで土足で踏み込んでくるような彼らの「無遠慮」も、彼にはとても新鮮で、もしかしたら嬉しいものだったのかもしれないとふと思った。ある意味あのように「普通に」自分に声を掛けてくる存在など他にはないだろうから。 彼は動物と、幼い子供が好きだった。少年への性的虐待疑惑に関しては無罪が確定したが、真相は正直わからない。ただ、彼が本当に心を開いて接することができて、また、彼を必要以上に神様扱いせずにそのままの彼と正面から向き合って接してもらえたのは動物と子供だけだったのだろう、だからこそマイケルは彼らを愛したのだろうというのは非常によく理解できる。 私は80年代に洋楽をよく聴いていたので彼の「Thriller」のPVが日本で初めて公開されたときリアルタイムで見た。ノーカットで流れた10分以上にも及ぶ映像に釘付けになった。 彼の「ミュージックビデオ」という売り出し方の確立(見応えあるものや面白いものを作ることによってオンエア数を増やし、認知や売り上げにつなげる)や、またダンスと音楽を融合した「見る音楽」の普及への貢献は計り知れないものがある。 私は特に彼のファンという訳ではなかったが、「ABC」や「I want you back」の幼い声が彼だと言うのを知った時は驚いたし、「Billie Jean」の渋いリズム感も好きだった。「Black or White」のメッセージ性のあるPVはワクワクしたし、「Heal the world」「You are not alone」などのバラードにハッとさせられたりした。 彼の音楽性は、彼のイメージよりはかなり多彩だったように思う。 そして彼の音楽はマドンナのコメントの通り、永遠に生き続けるはずである。 Rest In Peace. 心よりご冥福をお祈りいたします。 I want you back (Jackson 5) 「ABC」や「Ben」も名曲。 Billie Jean アルバム「Thriller」からは沢山のヒット曲が出ましたが、私はこの曲の抑え目なリズムとメロディが今もすごくかっこいいと思っています。歌詞はとんでもないけど(笑) Thriller (Full Version - 1/2) 短編映画といってもおかしくない内容、特殊メイク、印象的なダンス等、当時あらゆる意味で斬新かつ画期的でした。前置きだけで4分以上というすごいものです。 Thriller (Full Version - 2/2) こちらでやっと音楽が出てきます。小学高学年~中学1年くらいの子供だった私には、結構本気でコワいものがありました(笑)。特に最後が衝撃的で・・・。 Black or White ↑5:25あたりからの人の顔がどんどん変わっていくCGには驚きました。「肌の色は関係ない」という曲のテーマにすごくマッチしています。 ちなみに、2番目に出てくる女性はスーパーモデルのタイラ・バンクス。友情出演ですかね。 Heal the world あえて歌詞が見えるものにしました。
by toramomo0926
| 2009-06-29 23:26
| エンタメ
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