胸のすくような神解説 ー2010世界選手権 浅田真央フリー
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先日、世界選手権の浅田真央選手の演技(ショートプログラム)において、イギリスのBritish Eurosportの素晴らしい解説をご紹介しましたが、フリーではカナダのRadio Canada(フランス語)で素晴らしい解説があったようで、訳つきの動画がアップされていました。

このラジオカナダ版は字幕無しのを見たことはありました。
フランス語は分からないながらも「エクセランポジシオン(=Excellent Position)とか、断片的に耳に入ってくる言葉や語調から、凄く褒めているんだなというのは察していて、どんなことを話しているのかと思っていたら、訳を付けてくださった方がいました!ありがとうございます!

浅田真央 2010 世界フィギュア選手権 FS (ラジオカナダ版) 字幕付




芸術に造詣の深いフランス語圏の方がこんなに評価してくれるのは本当に嬉しいことです。もう日本で何を言われてもいいような気さえしてくる・・・ことはないけど、でも逆よりはずっといい。世界で戦っているのですから、自分の国でだけべた褒めされてスポイルされても仕方ないですし。

確かにこのプログラムは欧州の方が受けはいいかもしれないですね。アメリカなどはもっと明快な、分かりやすいものの方が受け入れられそうな気がします。
ですが、一度その魅力を理解できたなら、その中毒性、反復性(何度も見てしまう、頭の中で音楽が止まらなくなる)はずっと深いものがあります。
最初は「何故こんな曲を?」と殆どの人が思った「鐘」ですが、全日本からバンクーバーとトリノを経て、語り継がれる印象的な、記憶に残る伝説的なプログラムになったと思います。少なくとも私にとってはそうなりました。

この解説者の方は真央選手が目指したもの、表現したいことを残らず理解していました。

*以下に書いた文章は、この動画が貼り付けられた当時の字幕に基づいたものです。同じ解説の動画なのですが私が最初に貼り付けたものは削除されており後に探して貼り直した為か、多少動画の長さや翻訳も変わっているようです。

素晴らしい!トリプルアクセル(3A)を2回も、しかもひとつはコンビネーションで!他にこのジャンプを跳べる女子スケーターはいません!
彼女はマキシマム(最高難度)に挑戦しています。

(スパイラルで)
なんと素晴らしいアラベスク!この柔軟性をご覧下さい!なんて極上のスパイラル!足も高く上がっています。
Sublime. (絶妙・崇高・荘厳)

(3F-2Lo-2Loの前に手を高く上げる振付で)
祈っている!
彼女の祈りが伝わるようです・・・

(ステップ前のスピン)
素晴らしいシット(スピン)の姿勢から、手と共に表現しながら立ち上がる信じられないポジション・・・

(ステップ)
彼女の全ての力を注ぎ込まなければなりません。
神業のようなステップです。考えられる最高の技術を目の前にしています。奇跡のようです。

(演技終了後)
なんと見事なパフォーマンス!
とんでもない!まさに芸術!
これはとてつもない点数がたたき出されるでしょう!
高い順位が期待できるのは間違いないでしょう。
驚異的な得点が出るんじゃないでしょうか。
(←普通はそう思いますよね)
PCS(演技構成点)も並外れているでしょうね。彼女は我々が考えられる最高の演技を完璧に滑りきったのです。(←普通はもちろんそう思いますよね)
彼女はこのプログラムで偉業を成し遂げました。彼女にしか出来ないでしょう。
(スパイラルのリプレイ)
アラベスクのようなスパイラルの素晴らしい柔軟性、そして圧倒的な存在感!

(得点が出て)嘘だろ・・・信じられない・・・。こんなに低いなんて。
この演技をしてキムヨナを超えられないなんて・・・。どうなっているんだ?


「この演技をしてキムヨナを超えられないなんて・・・。どうなっているんだ?」
この言葉は、この瞬間世界中で発せられたと思いますね。

また、意図的なものかアクシデントかは分かりませんが、真央選手のステップの際にリンクのほぼ中央に何かが落ちているのが確認されています。
スローで見る限り「赤い歯ブラシ」のように見えますが、「スタッフが天井から何かを落としてしまった」とされているようです。



これを見たとき、今年1月に韓国で行われた四大陸選手権の際、韓国のネットユーザーが真央選手に対して「リンクにものを投げ入れる」「ジャンプ前に奇声を上げて集中を乱す」などの嫌がらせを扇動する書き込みがあり、現地で彼女にSPがつく事態となったことが頭をよぎりました。
ミスがありながらキム選手が高得点を出し優勝するかどうか、という局面だったために(そうでなくても真央選手が優勝にからむ限り起こりえたのかも知れませんが)このようなことが起きたのであれば非常に憤りを覚えますが、確証はありません。
事故であれ故意であれ、演技中に異物がリンクに存在するということは、非常に危険です。選手が気付かずにそれを踏んでしまったり引っかけた場合、深刻な負傷をする恐れがあります。原因が何であれこのようなことが起きたこと自体許されないことです。今後全ての選手に対し試合が安全に行われるよう、ISUはセキュリティには万全の体制をとってもらいたいと思います。

真央選手は演技終了後、その物体を拾ってリンクの外に出しましたが、この件については一切話をしていません。
この態度には本当に頭が下がります。
自分の今の立場(日本代表のトップスケーター)と、発言の影響についてもよく分かっているのだと思います。
でも一方で愚痴も言いたくなるでしょう。また今回の件にしても「こんなのが落ちてて、びっくりしちゃった!」と明るく話すこともできると思うのですが、絶対にその一線は踏み越えない。
彼女は19歳にして、どのように振る舞うべきかと言うのを自然に理解し、判断しているというのは素晴らしいことだと思います。

ですが一方で、真央選手が絶対に口を開かないということが、むしろ深刻さを浮き彫りにするような気がして辛くなります。
今回は目に見えるものでしたが、実は彼女は私達の知らないところでいろいろ苦労しているのではないかと。
真偽は不明ですが、数年前、試合の際にスケート靴を隠され、クタクタの古い靴で試合に出た、という話を聞いたことがあります(優勝したけど)。
具体的な根拠はないですが、今回のことでその靴の件を思い出し、ちょっと心配になりました。

私達の言葉を代弁してくれる解説者、真にフィギュアスケートという競技を知っている解説者が日本にいないのが悲しい。元選手であってもこのように率直に、正しい見方や知識を教えてくれる解説者というのは殆どゼロといっていいほどいませんね。悲しいことです。
そして一方で、海外の解説をこうやって聞くことが出来る時代でよかったとも思います。

ラジオカナダの方、解説を訳して動画をアップしてくださった方、本当にありがとうございました。


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by toramomo0926 | 2010-04-02 13:26 | フィギュアスケート


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