お詫び -2013年世界選手権の記事について
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2013年世界選手権の記事について、男子ショートプログラムの記事をアップしたままずっと放置状態になっており申し訳なく思っております。

いつもいつも遅い更新にも拘わらず読んで下さっている方々にはまことに申し訳ございませんが、今回世界選手権の記事はアップしないという決断をしました。
実際は女子ショートプログラムの途中(ほぼ終盤)までは書いていたのですが、それ以上どうしても書き進めることが出来ませんでした。



今回の結果 -特に女子シングルにおいての結果において自分にとって非常にショックが大きく、今日まで何度か試みましたが、記事を書く気力がどうしても生まれてきません。
こんなことは初めてなのですが、採点・判定においてちょっと本当に「心が折れた」という状態です。

こんな小さく個人的なブログであっても試合での各選手の演技を見て、選手たちの姿から感じたことにぴったり沿う言葉を探しながら書くという作業は、自分なりにかなり神経と頭をフル回転して行う作業となります。そのため時間もかかるし消耗もしますが(仕事でもないのにアホみたいですが)、自分自身いろんな気持ちが交錯することがあっても基本的に楽しんで、選手を応援したいという気持ちを持って書いてきました。
ですが今回はどうしても書き進める気力が生まれてきませんでした。
自分の中で気力が復活するのを待ったのですが、国別対抗もすぐに迫っていますし、これ以上遅らせても状況が変わる確信が自分の中で持てませんでした。なので非常に中途半端な状態のまま尻切れになってしまい申し訳ありませんが、今年の世界選手権においては記事の更新は断念することにしました。



私がこれほどまでに失望したのは、ISU(国際スケート連盟)が選手の努力を全否定したように感じたからです。
バンクーバー五輪以前から、特に採点については疑問に思う所がありました。ジャッジが匿名になっていることでその採点に誰も責任をとらない状況の中、ジャッジの気持ち一つで回転不足認定やGOE(技の出来栄え加点)、PCS(演技構成点)の出し方が選手によって、また試合によって大きく変わり、時に「勝たせたい選手を勝たせる」という「意思」にも似たような点の出し方をするのを見てきました。
見ているファンとしてはもどかしかったり悔しかったりということはあるものの、一番不満や理不尽さを時に感じているだろう選手が口をつぐんで一心に自分の目標を超えるべく練習し、試合にその成果をぶつける様子を見て自分が励まされたり、その美しく気高い姿に感動したりしてきました。勝敗よりも、そういう姿を見たくてフィギュアを見ているかもしれません。


バンクーバー五輪が終わってから、顔ぶれは変わってきたものの戦い続ける選手たちを見てきました。
浅田真央選手はジャンプをはじめとするスケート技術の総合的なオーバーホールという、世界トップスケーターとしては前例のない挑戦に取り組みました。ソチ五輪までの4年間というロングスパンの作業となりうまくいかないこともありましたが、今季努力が実を結び、描いた理想の滑りが形にできるという確信を得ました。
アリッサ・シズニー選手やカロリーナ・コストナー選手はフリーで崩れやすい部分を徹底的に鍛え、アリッサは全米女王に、カロリーナは3-3も取り戻して世界女王になりました。
鈴木明子選手は一旦燃え尽きた心を再び奮い立たせて27歳にして3-3を習得、演技には更に安定感と表現力、力強さを増しましたし、アシュリー・ワグナー選手はバンクーバー五輪選考に漏れたとは今では信じられないほどの強さと安定感を見せています。
フィギュアスケートをずっと見てきたファンならば、彼女達、またここに名前を挙げられなかったたくさんの選手たちがどのような課題に取り組み、格闘の末にそれを乗り越えてきたかということはすぐにお分かりになると思います。

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また一方で、バンクーバー五輪後にシニアに参入した若い選手達の台頭もあります。
村上佳菜子選手は怖いものなしのデビューを経て、その後シニアでどう戦い、トップグループに残っていくかを自分の技術や演技を通してまっすぐ向き合った結果、今季後半からは特に素晴らしい演技を重ねています。
また最年少は14歳からという若さの驚くべき才能と高い技術を持つロシアンガールズ-ソトニコワ選手、トゥクタミシェワ選手、リプニツカヤ選手などの登場には新時代到来というムードを感じワクワクさせられました。アメリカのグレイシー・ゴールド選手、カナダのケイトリン・オスモンド選手、中国のジジュン・リー選手というソチ五輪以降中心となるであろう選手たちの台頭もあり、ベテランと若手のガチンコの戦いというスポーツとしては理想的な展開を予感させていました。

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ですが今回の女子の採点は、そういうここ3年の選手達の積み重ねを全て無意味にするものでした。
精神論的に努力すれば自動的に点が伸びる訳ではないことは分かっていますが、彼女たちは努力の末少しずつ得点を高め、少しずつジャッジの評価を上げてきていたのです。五輪に向けてひとつひとつ繊細にスケーターとしての評価や信頼を積み上げてきていた。
そこへ2年のブランクをもった選手が一人参入しただけで、その均衡が一気に崩れ去るように感じました。

彼女は確かに昔からジャッジの評価は高かったし、2年のブランクがあった割には非常に良い演技だったと思います。
ジャンプは(構成は全盛期のものではなかったにせよ)安定していました。予想したより悪くはなかったと思います。20代になった女性アスリートが、2年競技から離れていきなり世界選手権で演技するということは並大抵のことではありません。試合勘もなかなか取り戻しにくい状況であそこまでの演技が出来たということは、彼女は相当努力してきたのだろうと思います。そこは素直に賞賛したいと思います。

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ですが、彼女はSPの後、1位を取りながらも自分の点数が「思ったより低かった」ことに不満を表明しました。エッジエラーをとられたことにも不満を述べた。
そうしたら翌々日のフリーでは、びっくりするほど点が上がったのです。評価を上げるのに時間がかかるはずのPCSも跳ね上がり、各要素には2A-2T-2Loの3連続ジャンプを除く全てで1点以上のGOEがつき、最終的に2位に20点差をつけて優勝。
驚きました。フリーのプロトコル(得点詳細)を見て、ジャッジがヤケクソの逆ギレのように(すみません)振り切った点数を付けたのを見て笑ってしまいました。

彼女への採点はこういう事が多い。
彼女は現役選手の中で、得点についてはっきり不満を述べる数少ない選手の一人ですが(男子ではたまに見るけど、女子ではあまり思い浮かばない)、彼女が得点や採点、認定について不満を述べると、次の演技では必ずそれが修正され、彼女の意に沿う形で評価がなされるのです。これが非常に個人的にひっかかります。
選手が採点について口にすることは賛否両論ありますが、自分が口に出せばその通りに点が変わるのなら、それは口に出したくもなるだろうな、とさえ思ってしまいました。


今回彼女は努力しベストを尽くしたことは否定しませんし、拍手を送りたいと思います。
ですが彼女への評価については、どうしてもフェアとは思えませんでした。
彼女は演技の難度を落とし、それゆえ余裕のある完璧な演技をしました。そしてジャッジはそれに対して他の選手と比べて破格と言える評価を下したのです。
これではバンクーバー前のあの理不尽なルールと全く変わりません。



男子は四回転をバンバン跳び、挑戦を奨励する採点傾向になっているのに、女子は難易度に関係なく無難にミスなく滑れば点が出てしまう。同じ競技、同じルールなのにこれだけ評価が分かれるのは異常です。

また、キム選手の「印象」をうまく使うやり方にも正直苛立ちを覚えました。
これはキム選手にというよりもむしろ、マスコミの報じ方についてですが。
難易度を落としてミスなく滑れば、ルールや詳細に詳しくないマスコミは「完璧な演技」と書き立てる。
今回浅田真央選手は女子で唯一、伊藤みどりさん以来となる全6種類のトリプルジャンプ(トリプルアクセル、ルッツ、フリップ、ループ、サルコウ、トウループ)をフリー演技の中に入れました。女子がトリプルアクセルを跳ぶことは非常に難しいので、女子がトリプル6種というのは非常に高難度の、この先達成する選手が出るかどうかという快挙であるにも拘わらず、そのことを取り上げるメディアは殆どありませんでした。
真央選手の構成とキム選手の構成では、ジャンプ以外にも難易度に差があるにも拘わらず、「ミスがあったかなかったか」だけが対外的な評価の基準になる。その報じ方を読んだ一般の方々は、まるで二人が全く同じプログラムを滑っての結果、得点のような「印象」を持ち、世間一般は「浅田よりキムの方がすごい」という評価を下すことになる。
そういう意味で、ジャッジだけでなく大衆における「印象」の重要性というものも、キム選手はよく知ったうえで競技をしているようにも感じ、その点にもフラストレーションを覚えました。
それは真実ではないから。


キム選手の演技構成は特に現在の女子の中で突出しているという訳ではありません。
3ルッツ-3トウループは確かに難易度の高い大技ですが、そのジャンプを試合で入れられるのはもはや彼女一人ではありません。ソトニコワ選手も、ゴールド選手も入れられますし、それほど珍しいものではなくなっています。
それ以外の彼女の演技は、きれいなのだけれど私には芯がない、弱いものにも見えました。滑りもエッジワークが甘く、力強さがなかった。
だけれども6種類すべての3回転ジャンプを入れ、ステップも最高難度でトータルで今季一番難易度が高いプログラムを完璧に滑っても届くかどうかという点が出てしまう。
逆にキム選手の行った演技を、他の選手が全く同じ出来栄えで完璧に行ったとしても、あれほどの点が出たでしょうか?これは賭けてもいいですが、絶対に出なかったはずです。
また、今大会フリーでの浅田真央選手のルッツは、「正しいエッジで跳んでいる」と他国の実況で話されていた
にもかかわらず、エッジエラーとなり0.7点も引かれています。今季ルッツの修正は評価を得つつあり、エラーがついてはいたものの減点はかなり小さいものになっていた印象があったのですが、今回更にきれいに決まったはずのルッツがそれ以上に減点されている。

もう、ジャッジの評価体系が完全に崩壊していると感じたのです。
ジャッジシステムは絶対評価だといっておきながら、もう事実上「何をどう行ったか」ではなく「誰が演技したか」でしか点をつけていない。また個別の絶対評価な筈なのに、出場選手の顔ぶれによって加点・減点の幅が変化している(これは今大会に限った事ではありません)。

分かってはいたけれど、ルールは毎年のように重箱の隅をつつくように変え、なくさなくていいものをなくしていびつにしてきたのに、結局彼らのやっていることは4年前と全く変わっていないということを思い知らされた気がしたのです。
キム選手への点の出し方は、2009年のフランス杯やバンクーバー五輪と同じです。「あなたたちがどんなに頑張っても、優勝する選手は決まってます」と言ったのも同じです。
ソチ五輪の女子金メダリストも、もう決まっているのでしょうか。

キム選手はIOC委員になる資格を得るために二度目の五輪出場を決めたと聞きました。ですがこれは彼女には非常にリスクを伴う決断なので、私は彼女が復帰したことが不思議でした。
なぜなら彼女は、母国韓国において絶対的な「フィギュアクイーン」であり、「世界最高得点保持者」であり、「五輪金メダリスト」だからです。そしてそのステイタスが、今の彼女の韓国におけるセレブリティとしての生活を保障しているからです。
もし復帰して演技がうまくいかず表彰台落ちしたり、韓国の国民が期待するような成績を残せなかった場合、今の彼女の生活を支えている彼女の社会的イメージ、価値は半減してしまいます。そのリスクを負っても、少なくともバンクーバー五輪まではスケートをそれほど好きでやっているようには見えなかった彼女が復帰するものだろうかと。
ですがもし、万一、そのあたりについて「話がついている」状態ならそのリスクは完全に取り払われ、どんなにブランクがあろうとも「練習だと思って気楽に」試合に臨むことができます。そうなるとSP後の不平についても「事前に聞いていた点より低い(もしくは2位との点差がない)」というニュアンスにも取れます。取ろうと思えば。

ここまで来ると自分でも疑心暗鬼が過ぎるかもとも思いますが、あのバンクーバー五輪を経験してからは、もう何があっても不思議じゃないという気持ちが捨てきれません。ジャッジの良心にはもう期待はできない。
ソチ五輪ではちゃんとしたスポーツが見られるかも、と少し期待していただけに、今回の結果には打ちのめされました。
選手のモチベーションが下がらなければいいが、ということも心配です。



ISU World Figure Skating Championships 2013
順位と得点詳細。
「Result」でそれぞれの種目の総合順位と総合得点が、
「Entries/Result Details」ではショートプログラム(SP)とフリーそれぞれの得点詳細が、
「Judges Scores」ではSP/フリーで各選手の全ての要素の内容と、それにジャッジがどのように得点をつけたかを見ることができます。
by toramomo0926 | 2013-03-21 18:38 | フィギュアスケート


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